「ローマ」の発展版をギリシャで試す! 640cvのV8はどう進化した?
羽田からターキッシュ エアラインズの深夜便に乗り、イスタンブールで乗り換え。たどり着いたのはギリシャのアテネ空港でした。実はこの地がメディア向け国際試乗会の舞台として使われるのは、皆無ではありませんが、かなり稀なこと。私(島下泰久)がこの地を訪れたのは、ポルシェ「カイエン」の試乗で訪問した2017年以来のこととなりました。
【画像】超カッコいい! インテリアの仕立ても上質なフェラーリ「アマルフィ スパイダー」を写真で見る(30枚以上)
今回の渡航のお目当ては、フェラーリ「アマルフィ スパイダー」。その国際試乗会を、なぜギリシャで? 広報のアレッサンドロさんに聞くと、こんな答えが返ってきました。
「今の時期、こうしたイベントでポピュラーなスペインやポルトガルは夏休みでとても混んでいますよね? もちろんギリシャも同じなんですが、この国の場合、観光客は“青と白の世界”に向かうんです。要は海沿いですね。なので、山は空いているし、しかも涼しいんです。景色も道の楽しさも、このクルマにぴったりだと思いますよ」
拠点となったのは、アテネ空港から西へ1時間ほど走ったコリンシアにあるリゾートホテルでした。現地には昼頃到着し、夕方よりプレゼンテーション、Q&A、そしてディナー。待望の試乗は翌日の昼過ぎからスタートとなりました。
フェラーリ「アマルフィ スパイダー」は、すでに日本でも2026年春にお披露目が済んでいます。「カリフォルニア」に始まり「ポルトフィーノ」、「ローマ」に続いてFRレイアウトを採用する、フェラーリがいうところの「2+」、要するに2+2のキャビンレイアウトを持ったモデルの最新型は、「ローマ」と同様、クーペとスパイダーふたつのモデルタイプを用意します。私自身は、クーペは未経験、つまり「アマルフィ」自体が初試乗となりました。
フォルムを見れば一目瞭然で、この「アマルフィ」は「ローマ」の大幅発展版というべきモデルとなります。その意味では、かつての「カリフォルニア」→「カリフォルニアT」、「ポルトフィーノ」→「ポルトフィーノM」のように、車名を継承してもよかったはずですが、今回改めて、世界遺産“アマルフィ海岸”にある街「アマルフィ」の名を車名に戴いたのは、要するにそれだけ進化が著しいということでしょう。
ホテルのエントランス前にズラリと並ぶ「アマルフィ スパイダー」。まずそのデザインは、エモーションを前面に出していた「ローマ」に比べると要素が削ぎ落とされていて、印象はミニマルあるいはクールといえます。あえて表情を演出しないのは、「12チリンドリ」以降の最新フェラーリに共通するデザイン哲学です。
一方、試乗車の「アマルフィ スパイダー」専用となる“ロッソ トラモント”と名づけられたボディカラーや、ジーンズを意識したというテイラードブラックのソフトトップは、いかにも情熱的。美しさを引き立てています。
室内に乗り込むと、コックピットまわりは全面的に刷新されています。左右席それぞれが独立したコックピットのように仕立てられていて、センターディスプレイは縦型から横型に。それに伴って、Hパターン状のシフトセレクター、キースロットなどが置かれるアルミ削り出しのセンターブリッジが新設され、コックピット感を一層高めています。
また、ステアリングスイッチがすべて物理スイッチに回帰したのも大きなトピックです。左側の赤いボタンを押し込めば、フロントに積まれる3.9リッターV型8気筒ツインターボの純内燃エンジンが始動します。やっぱり、こうじゃなくては!
まずはソフトトップを閉じたまま。パドルを引いてギアを1速に入れたら、いよいよ試乗開始です。
ターボチャージャーの最高回転数を5000rpm引き上げた17万1000rpmとして、それに伴い、よりきめ細かな制御を可能とするマネージメントシステムを組み合わせることで、最高出力を20cvアップの640cvまで高めたエンジンは、有り余るほどのパワーを発生するだけでなく、全域どこからでも鋭くレスポンスし、しかも、際限なく伸びていくかのようなパワーカーブを実現しています。
しかも8速DCT(デュアルクラッチ式トランスミッション)は、このエンジンに負けず劣らずのレスポンスを示し、欲しいだけのパワーを容易に取り出すことを可能に。日常域ですら、頬を緩ませるこの刺激性の強さはまさにフェラーリの心臓です。
刺激といえばサウンド。昨今厳しさを増す騒音規制に対応するべく、「アマルフィ」の心臓もやはり音量は絞られた印象です。ですが、新しいバイパスバルブの採用など細かなリファインを得て生み出されたサウンドは、炸裂感がひかえめとなった代わりに、音質はよりきめ細やかになった感あり。等長エグゾーストマニフォールドならではの甘美な響きを楽しめて、個人的にはむしろ好印象でした。
オープンでも剛性感に遜色なし! ワインディングで見えた進化の真価
高速道路をしばらく行くとパーキングエリアを発見。ここで一旦、ピットストップしてオープンにします。実際には、走行中でも60km/h以下であれば開閉可能です。
再度走り出すと、車体の剛性感に遜色はまるでなく、ピシッとした走りを堪能させてくれます。ただし、100km/h近辺では室内にそれなりに風が巻き込んでくるので、ウインドディフレクターを展開させます。スイッチを押すと、後席背もたれ部分が前方に起き上がって整流効果を発揮。途端に頭部周辺の風の流れが落ち着いて、快適にドライブすることが可能になります。
そのまま高速道路を降りて北上。ワインディングロードを目指します。実は出発直後から気づいてはいたのですが、舗装の荒れた一般道に入って確信したのは、乗り心地が格段によくなっていることでした。「アマルフィ」のサスペンションは基本的に「ローマ」と共通で、スプリングなどのレートも変わらないそうですが、電子制御は刷新されていて、快適性も、スポーツ性もともに引き伸ばされていると謳われています。
実際、初期のしなやかさは従来以上で、特に「Comfort」モードでの走りは“スポーツカーとしては”という前置詞要らずのしなやかさを実現しています。普段は走りもそれで十分なのですが、キツいコーナーが続くようになったら、やはり「Sport」の出番。スロットルレスポンスが切れ味を増し、乗り心地も引き締まって、クルマとの一体感が俄然高まります。
ドライビングダイナミクスはまさに、ハイパワーFRの教科書という印象。豊かな操舵感のステアリングは情報量に富み、切り込んでいくと素直に向きが変わっていきます。シャープですがシャープ過ぎず、まさに意のままのコントロールが可能です。
アンダーステアとは一切無縁で、前輪のグリップ感が高いので、むしろしっかり切り込むことでグイグイとノーズを引き込めます。そして、クルマが出口を向いたところでアクセルペダルを気持ち多めに踏み込むと、640cvものパワーが伝わったリアタイヤが路面を蹴り上げるようにして猛烈なダッシュが始まります。その瞬間の快感たるや! エンジンは天井知らずの伸びを見せて7600rpmまで吹け上がり、そこを見計らってコラム固定式のシフトパドルを引けば、即座に次のギアに。またも猛烈な加速が始まって……と、無心で繰り返してしまいます。
そんな走りには、新採用のABS Evo.と呼ばれるブレーキシステムも大いに貢献しています。これは要するに電動ブースターを使ったもので、常に一定の、ストローク短く剛性感に富んだブレーキタッチと、4輪を個別制御することによる優れた制動力を発揮してくれるもので、要するに今までにないほど安心して、そのストッピングパワーを引き出すことができるのです。
夢心地のスポーツドライビングでワインディングロードを駆け上がり、撮影がてら一旦、小休止。気づけば外気温時計には39℃という表示があり、全然涼しくないじゃん! と思わず悪態をついてしまいましたが、ホットだったのはきっと気温のせいだけじゃなく、その走りに熱くなってしまったからでしょう。そこからの下りは、クルマと自分のクールダウンということで、ソフトトップを閉じてゆっくり戻ります。
クローズド状態の「アマルフィ スパイダー」はボディの剛性感も静粛性も、まるでクーペそのもの。ゆったりとしたドライビングも、また楽しめるものでした。行きには必要性を感じなかったブルメスターのオーディオがこうなるとうれしくて、好きな音楽を聞きながら拠点となるホテルへと戻り、ざっと200kmのテストドライブを大満足で終えたのでした。
* * *
正直にいうと、乗る前には「ローマ スパイダー」とそう大きく変わらないんじゃないか、という思い、なくはありませんでした。それは「ローマ スパイダー」も素晴らしい仕上がりのクルマだったので、それ以上の進化があり得るのか? という意味でもあったのですが、そこはさすがフェラーリ。車名まで変えてきた意味を、ギリシャでステアリングを握った「アマルフィ スパイダー」は存分に実感させてくれました。それにしてもアツかった!(島下泰久)
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みんなのコメント
デザインの過渡期なのかな。
なんと言われてただろうか?