2023年IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権第2戦セブリング12時間レースは、残り20分のところで発生したポルシェ963とアキュラARX-06の接触により、ドラマティックな結末を迎えることとなった。
アメリカ・フロリダ州のセブリング・インターナショナル・レースウェイで3月18日に行われた12時間レースの最終盤、ターン1の立ち上がりで、総合トップを走行していた6号車ポルシェ963(ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツ)のマシュー・ジャミネに、10号車アキュラARX-06(ウェイン・テイラー・レーシング・ウィズ・アンドレッティ・オートスポート)のフィリペ・アルバカーキが並びかけた。
残り20分のクラッシュで首位3台が消える。GTP上位完走は2台、AXRキャデラックが優勝/IMSAセブリング12時間
前方にGTクラスの集団がいたためステアリングを左に切ったジャミネとアルバカーキが接触。アルバカーキは左側のグリーン上をコントロールを失いながら滑走すると、ターン3立ち上がりで6号車に再接触。コース上にストップした10号車には後続の7号車ポルシェ963のフェリペ・ナッセが激しくクラッシュし、3台は目前に迫ったチェッカーを受けることができなかった。
■クラッシュ直後の謝罪
当事者となってしまったアルバカーキとジャミネは、この出来事を「タフなレースの一例」と捉えている。
「まず第一に、僕らはこんな形でレースを終わらせたかったわけじゃない」とジャミネは語った。
「この結末について、ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツ・グループとチーム、すべてのポルシェ・ファミリーに本当に申し訳なく思っている。幸いなことに、僕は無事だ。ふたりのフィリペも無事だ。それが一番大事なことだ」
「その次に大事なことは、ハードなレースを展開すること。全員がそこに加わる形でね」
ジャミネは接触直前の状況について、ターン3に向けての走行でリシ・コンペティツィオーネのフェラーリ296 GT3の左に寄ったものの、手遅れになるタイミングまでアルバカーキのアキュラが見えなかった、と振り返る。
「基本的に、10号車は芝生の上で左側に行った」とジャミネ。
「外からの映像で見た限りでは、僕はより左側へと動いた。でも、彼がそこにいることを知らなかったんだ。それで、彼がそこにいることに気づいて、右に移動しようとした」
「だけど彼はグリーンにいて、芝生の上でコントロールを失い、それが事故の原因になってしまった。本当に残念なことだが、10号車には本当に申し訳ないと思っている」
「クルマから降りてすぐ、フィリペ・アルバカーキに謝ったんだ。彼も、グリーンに入ろうとした自分の動きについて謝ってきた」
「本当に残念なレーシング・アクシデントだと思う。両ドライバーとも、もう限界のところに達していたんだ」
■1度目の接触は「まだコントロール可能だった」とアキュラのアルバカーキ
アルバカーキは、最終ピットストップで6号車ポルシェが10号車アキュラに先行した後、トラフィックを絡めてジャミネに襲いかかるチャンスを待っていたという。
ジャミネとアルバカーキはその後、より長い距離を走ったタイヤを履いていた31号車キャデラックVシリーズ.R(アクション・エクスプレス・レーシング)のジャック・エイトケンをオーバーテイク。そして、最後の場面を迎えていた。
「ターン1でアウト側に行こうとしたんだけど、フロントのグリップを失ってしまい、うまくいかなかったんだ」とアルバカーキは振り返る。
「彼が(GTのトラフィックの)左に行かなかったのは、ある意味驚きだった。僕は大きなリスクを背負って、そっちに行ったんだ」
「彼は僕を見ていなかったと思うし、一度僕にぶつかった。僕は少し振られ、芝生の上に左側の車輪が出たけど、そのときはまだコントロールは可能だった。そこでブレーキを踏んでいたんだ。でも、彼は2回目のヒットをしてきた。残酷だった」
「その瞬間に、僕は完全に芝生の上に出た。そこからは、僕はただの乗客だった。ブレーキをかけながら、たくさんの(コース上の)クルマを見て、片目をつぶって……そしていまここにいる、という感じだ」
「誰にぶつかったのか、分からなかった。彼(6号車)にぶつかり、そこでさらに(7号車に)当てられた。2回目はかなりハードだったね。それでまた芝生に押し戻されたんだ」
「でも、このクルマはかなり安全だと思うよ」
■「厳しいレーシング・インシデントだ」とウェイン・テイラー
このアクシデントは、WTRアンドレッティのチームオーナーであるウェイン・テイラーに2017年以来のセブリング12時間レースでの勝利をもたらそうとした10号車アキュラの好走を終わらせることとなった。
「厳しいレーシング・インシデントだった」とテイラーは評している。
「フィリペの走りを誇りに思う。そして、チーム全体がやったことを誇りに思う」
「レースを支配していたのは僕らだし、僕らのレースだったと思っている。でも、セブリングではいろいろなことが起こるもので、今回もそのひとつだった」
「フィリペとは話をした。(アルバカーキは)向こうのドライバーと話したが、彼は基本的にフィリペを見てなかったと言っていた。これはレーシング・インシデントだ」
「簡単そうに見えたかもしれないが、こういったことが起こるとき、これが残酷なスポーツであることを認識しなければならない。そして今夜は、それが我々の身に起きたのだ」
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