「このクルマ、いいはずなのに、あんまり売れてないのか…」と思いたくなるモデル、実はけっこうある。年間数百台ものクルマに試乗する自動車研究家 山本シンヤが、もっと評価されてもいいはずのモデル10台の、「なぜイマイチ売れてないのか?」を考察! 岡本幸一郎氏による新型ステップワゴンへのインプレッションも掲載!
●ラインナップ
・トヨタ スープラ
・ホンダ シビック
・スバル レヴォーグ
・スバル BRZ
・スバル WRX S4
・スバル インプレッサスポーツ
・三菱 エクリプスクロスPHEV
・日産 キックス
・マツダ CX-30
・スズキ スイフト
想定より売れていないの? イマイチウケない国産10台の「なぜ?」を考える
※本稿は2022年6月のものです
文/山本シンヤ、岡本幸一郎、写真/ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2022年7月26日号
■モノはいいのになかなか売れないクルマの理由は4つ
スズキ スイフト…1~5月累計:5761台/納期:約4カ月/値引き:24万円/価格:153万5600~203万7200円/もっと売れてほしい期待度:80
筆者・山本シンヤは年間数百台のニューモデルに試乗します。
クルマのチェック時はハードを中心に評価をしていきますが、それだけではクルマのよし悪しは語れません。
もちろん、ハードのよし悪しが重要なウエイトを占めているのは言わずもがな、コンセプト、キャラクター、ユーザーニーズなどを含めた総合力が揃ったモデルこそが、お客様にとっての真の「いいクルマ」だと考えています。
今回のお題は「想定より売れてないの? イマイチ受けない(?)10台の「なぜ」を探る」になりますが、その理由は大きく分けると4つに分かれます。
ひとつ目は「そのクルマを選びたくなる何かが欠けている」です。クルマは大量生産品のため、オートクチュールでない限り、すべてがユーザーの要望どおりのクルマなど存在しません。
筆者は気になる所を超える魅力を備えるクルマが、「その人にとってのいいクルマ」だと考えています。今回の10台ではCX-30(マツダ)、キックス(日産)、インプレッサスポーツ(スバル)がそれです。
日産 キックス…1~5月累計:1万1436台/納期:約3カ月/値引き:22万円/価格:275万9900~286万9900円/もっと売れてほしい期待度:70
どれもクルマとしての総合力は高いレベルにありますが、逆を言えば「いい人だけど……ね」で終わってしまっています。
要するに健康食品は体にいいけど、うま味が伴わなければ多くの人は積極的には食べたいと思わない……と同じ論理だと考えています。
2つ目は「そもそも実力がシッカリ伝わっていない」ことです。
エクリプスクロスPHEV(三菱)やスイフト(スズキ)などは、開発者が目指したところとCMなどでPRしている部分にズレがある。つまり、本当の実力が伝わっていません。
スイフトはクルマに対して厳しい評価を持つ欧州でガチンコ勝負できる走りの実力がアピールポイントなのに、テレビCMでは「カワイイ」、「お買い得」ばかりをアピール。
一方、エクリプスクロスPHEVは電動化を活用したオンオフ問わず安心して走れる能力を備えることが強みなのに、「電気だから燃料が節約できる」といった安易なPRをしてしまっています。
せっかくのいいモノを持っているのに、それが伝わらないのは悲しいです。
3つ目は「日本市場はオマケ」というイメージが拭えないことでしょう。今回の10台で言えばシビック(ホンダ)が当てはまります。
当然、メインマーケットである北米市場を重要視した商品企画なのも事実ですが、日本市場での「シビックの役割」が古いモデルとは違うことを真摯に伝えてこなかったホンダにも原因があります。
ホンダ シビック…1~5月累計:3208台/納期:約2カ月/値引き:23万円/価格:319万~353万9800円/もっと売れてほしい期待度:95
今でも「あの頃のシビックは」シンドロームから抜け出せない人が絶えないのは、それが理由です。
そして最後は、そもそも「生産が追いついていない」です。
GRスープラ(トヨタ)は日本向けの販売計画が非常に少ないため、そもそも台数をさばくことができないのが最大の原因です。
そして、レヴォーグ/WRX S4/BRZ(スバル)は半導体の影響やリコール問題などが重なってしまい、受注が多いのにも関わらず生産が進まないと聞いています。
ただ、スポーツ系モデルは、打ち上げ花火のような売れ方ではなく、少なくても着実に安定した台数を売ることが大事でしょう。
しかし、これらのことは、本来なら自動車選びのプロである我々がシッカリと伝えなければいけないのですが、それができていなかった……、という反省もあります。
(TEXT/山本シンヤ)
【番外編コラム】新型ステップワゴンは先代以上に評価されていいミニバンになったのか?
6代目となった新型ステップワゴン(ホンダ)は原点回帰をアピール。このAIRとSPADAの2タイプあり、1.5Lターボと2L、e:HEVの2本立て
6代目も見た目の雰囲気がガラリと変わったわけだが、先代のひとクセあるルックスは賛否両論があったことは否めず。
その点、新型はシンプルすぎる気がしなくないものの、目にして嫌悪感を抱く人などいないはずだ。
内容的には先代の改良版とも言える進化を感じ、全方位にわたり大きく洗練されている。
悪くなかったとはいえ全体的に荒削りな感があったことは否めない先代に対し、新型モデルは「欠点は?」と聞かれても即座に答えられないほど完成度が高いように感じている。
一方で、実際に使っている人からは便利と好評だったわくわくゲートのような目を引く「飛び道具」が新型にはないわけだが、実は表立って目に見えにくい、運転しやすさや視界のよさ、乗り心地など“自然になんとなく”感じる部分の仕上がりが極めて秀逸だ。
後席の人が乗り物酔いしにくくなるような配慮まである。そうした行き届いた心配りに大いに感心しているところだ。
そんなわけで、新型は内容的には非常に評価できると思うけど、先代とは違う意味で、見た目の部分の魅力が弱い気がする。
(TEXT/岡本幸一郎)
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みんなのコメント
スイフトはモデル末期でしょうに。
マツダの車は完全にデザイン優先になりましたね。