牧野任祐が再び富士で泣いた。しかしそれは、2週間前に流した悔し涙とは違い、嬉し涙であった。
富士スピードウェイで行なわれたスーパーGT第4戦、牧野任祐と山本尚貴がドライブするTEAM KUNIMITSUの100号車STANLEY HRC PRELUDE-GTは、2番グリッドからスタートして見事優勝。序盤のセーフティカーリスタートで狙いすましたオーバーテイクで首位を奪った山本、そして終盤ライバルに接近されながらも逃げ切った牧野、どちらもヒーローと呼ぶに相応しい活躍であった。
■僕らだってホンダのプライドを背負ってる! 太田格之進の予選後コメントで奮起した山本尚貴「プレリュードの初優勝は、自分たちが決めたかった」
トップチェッカーを受けた牧野は、パルクフェルメで号泣。2週間前のスーパーフォーミュラで勝利を逃したこと、そして前日の予選でポール獲得を逃したことで、精神的にも辛かったのだと明かした。
同じく富士で行なわれたスーパーフォーミュラの第6戦で牧野は、優勝争いに絡もうとしていた中で自身のアンダーカット戦略の要求がチームに届かず、不本意な戦いを強いられ3位。これは担当エンジニアが無線で逐次詳細な情報を伝えていたことで、牧野の戦略要求と無線が“被ってしまった”(※無線では双方同時に話した場合は片方の声しか届かない)というコミュニケーションエラーが原因だと考えられている。この時牧野は涙声で感情を爆発させ、マシンを降りた後もしばらくしゃがみ込むなど、勝てる可能性もあったレースを落としたショックを隠しきれないでいた。
この時に流した悔し涙があったからこそ、今回の勝利で再び感情が溢れ出したようだ。
パルクフェルメのインタビューで、牧野はこう語っている。
「レースが再開した時の尚貴さんのリスタート、僕もめちゃくちゃ気合いが入りました。僕はあとはもうやるだけだと」
「スーパーフォーミュラとかでも、今年うまくいかなくて……。昨日の予選も負けて、けっこう本当にキツかったので」
牧野はホンダGT500のエースとして、昨年行なわれたプレリュードのシェイクダウンでも最初の“走り出し”を任されるなど、長らくホンダを引っ張っている先輩・山本の背中を見ながら、陣営の中での存在感をますます大きくしている。そんな中で、ワークス体制構築に向けてHRC(ホンダ・レーシング)のエンジニアが派遣されているTeam HRC ARTA MUGEN(8号車ARTA)の太田格之進にポールを奪われたということは、より一層の悔しさに繋がったのではないだろうか。
牧野は「もちろんそれもある」と話す。
「昨日ポールを獲れなかったのは本当に悔しかったです」
「ただ初優勝は自分たちの手でとりたいという思いがかなりありました。ポールを獲れなかったことで、自分の中でも絶対にやり返したい、このチームで取り返したいという思いは、より一層強くなりました」
「どういう言い方をすればいいか分かりませんが、今はホンダとしてワークスっぽいことを8号車と100号車(※100号車はメンテナンスガレージがHRC)でやっている中で、予選、決勝ともに8号車と100号車がトップ2なのは理想的な形だと思うし、まだ追いかける立場ですが、この2台でチャンピオンシップを盛り上げていけるんじゃないかと思います」
「その中で今回僕たちが勝ったのは非常に大きいと思うし、プレリュードのシェイクダウンからやらせていただいている立場からすれば、初優勝は絶対にとらないといけなかったと思います。予選は個人的にかなり悔しかったので、チームみんなで取り返せてよかったです」
■そして溢れ出した本音
悔し涙を嬉し涙で洗い流す、感動的な勝利を挙げた牧野。パルクフェルメでのインタビューで、感情が最高潮に達した彼は最後にこんなことを口にした。
「こんなこと言っていいのか分かりませんけど……今年も尚貴さんと一緒にやれて、優勝できて、TEAM KUNIMITSUと優勝できて本当に嬉しいです!」
この言葉は、昨年末に浮上していた牧野、山本コンビ解消の噂にさらに真実味を持たせるものになったとも言える。
実は昨年、一部報道では2026年のTEAM KUNIMITSUは牧野と太田のコンビになる可能性があるのではないかとの噂が浮上していた。時を同じくして、2025年のスーパーGT最終戦を終えた山本はmotorsport.comのインタビューに対し、翌年以降について「一旦色々と整理しようかと思っています」と意味深なコメントを残すなどしている。またHRCは同年末の会見にて、陣営内のラインアップについて「色々なパターンの検討」をしたと説明した。
そして今回、パルクフェルメで牧野から“本音”がこぼれたようにも感じた。その後のインタビューで、上記のコメントの意味するところを何かコメントできるかと牧野に尋ねたところ、おもむろに口角を上げ、「……特には」と答えた。
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