現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > トランプ「戦艦復活」発言が話題→実はすでに“前例アリ” !? 空前絶後の「建艦構想」その経緯とは

ここから本文です

トランプ「戦艦復活」発言が話題→実はすでに“前例アリ” !? 空前絶後の「建艦構想」その経緯とは

掲載 更新 70
トランプ「戦艦復活」発言が話題→実はすでに“前例アリ” !? 空前絶後の「建艦構想」その経緯とは

600隻の艦艇を保有するという壮大な構想

 2025年9月30日、アメリカのドナルド・トランプ大統領は、海軍に“戦艦”を復活させる構想を真剣に検討していることを明らかにし、国内外で大きな話題となりました。トランプ大統領の構想は、どうやら過去の戦艦をそのまま復元するものではないようですが、実はアメリカには、かつて本当に第二次世界大戦中に運用された戦艦を復活させた前例があります。それが、冷戦期の国防戦略のひとつである「600隻艦隊構想」でした。

【なんか違和感が…】これが、ミサイルを発射する戦艦です(画像)

 1970年代、西側陣営(アメリカを中心とする)と東側陣営(ソビエト連邦を中心とする)の対立構造、いわゆる東西冷戦は、比較的安定した時期を迎えていました。

 しかし、その安定を崩したのが、1979年に起こったソ連によるアフガニスタン侵攻と、70年代後半から80年代にかけてのソ連の海軍力増強でした。ソ連は、新型の原子力潜水艦やヘリ空母を配備し始めており、本格的な航空母艦の配備も時間の問題と見られていました。中には、アメリカ海軍を上回る成長を見せているとの見方もあったほどです。

 これに危機感を抱いたアメリカは、1981年に当選したロナルド・レーガン大統領のもとで、いくつかの国防目標を設定。その一環として、アメリカ海軍は「600隻艦隊構想」を打ち出しました。

急な増強無理! じゃあ戦艦を再利用するのは?

 この構想は、15隻の空母を中核とする航空機動部隊と、4個の水上打撃群を常備軍として配備し、合計600隻の艦艇を保有するというものでした。そのために新型空母の建造に加え、原子力潜水艦、巡洋艦、駆逐艦、補給艦などの大幅な増強が計画されました。

 しかし、当時のアメリカ海軍が保有する戦闘艦艇の合計はわずか475隻で、目標の8割にも達していませんでした。

 まず空母については、新造艦の建造が間に合わず、既存艦が次々と退役時期を迎えてしまうため、単純に数を増やすのは非常に困難でした。そこで退役寸前だった空母「ミッドウェイ」を延命させるなど、工夫を凝らして数を確保しましたが、それでも改修や艦齢延命工事の必要があり、実質的な戦力は13隻にとどまったとされています。

 また、仮に航空機動群15個が実現できたとしても、4個の水上打撃群の整備はさらに困難でした。ミサイルを大量に搭載できる新型の巡洋艦や潜水艦を短期間で大量建造することは、現実的には不可能だったのです。

 そこで浮上したのが、すでに退役していた艦艇の再就役プランでした。特に注目されたのが「戦艦」の再活用です。

 このとき再び登場したのが、20年以上前に退役しモスボール(長期保存)されていたアイオワ級戦艦4隻です。これらは近代化改修を施されたうえで現役復帰し、最新のトマホーク巡航ミサイルやハープーン艦対艦ミサイルを搭載。装備面では最新鋭艦にも引けを取らない能力を持つことになりました。

 さらに、第二次世界大戦中に上陸作戦で絶大な火力支援を提供した、主砲である「Mk.7 50口径16インチ(40.6cm)三連装砲」もそのまま健在でした。この巨大な主砲を備えた戦艦の存在は、単なる火力増強にとどまらず、「アメリカの海軍力の象徴」「攻撃力の誇示」といった心理的な効果も狙ったものでした。

 こうした涙ぐましい努力と、100隻近い艦艇の新造により、アメリカ海軍はかつてない強大な海軍力を手にし、1989年には目標であった600隻体制の実現が視野に入るまでになったのです。

しかし冷戦は終了…戦艦はいよいよ不要に

 しかし、その力を実際に発揮する機会は訪れませんでした。なぜなら、1991年にソビエト連邦が崩壊し、冷戦が終結してしまったからです。

 当初から「過剰な戦力増強だ」との批判もあった600隻艦隊構想は、ソ連崩壊後には“無駄な軍拡”として扱われ、すぐに国防予算が削減。維持費の高い大型艦、特に旧式の空母や戦艦は、次々と予備役・退役の対象となっていきました。

 戦艦や空母は、1991年の湾岸戦争で多少の活躍を見せたものの、その戦争の終結とともに引退を余儀なくされました。

 国家の威信をかけて、東側陣営に対抗するために計画された600隻艦隊構想。もしソ連がその後も力を維持し続けていたならば、これらの艦艇もさらなる活躍の機会を得ていたかもしれません。

 現在も、戦艦「アリゾナ」などは記念艦として保存され、アメリカ海軍の歴史を今に伝えています。

文:乗りものニュース 凪破真名(歴史ライター・編集)

関連タグ

【キャンペーン】第2・4金土日は7円/L引き!ガソリン・軽油をお得に給油!(要マイカー登録&特定情報の入力)

こんな記事も読まれています

ヒトラーが“沈めた”!? 悲劇の独戦艦「グナイゼナウ」往時の象徴はノルウェーに現存
ヒトラーが“沈めた”!? 悲劇の独戦艦「グナイゼナウ」往時の象徴はノルウェーに現存
乗りものニュース
日本海軍の戦艦では異色の艦歴!? 強大な米海軍の新型戦艦たちに真っ向から挑んだ「古強者」とは
日本海軍の戦艦では異色の艦歴!? 強大な米海軍の新型戦艦たちに真っ向から挑んだ「古強者」とは
乗りものニュース
陸自の戦車も「飛んでくる弾を叩き落す!!」はずが…迷走する「防御の目玉」装備計画 実績あるシステムは“見ないふり?”
陸自の戦車も「飛んでくる弾を叩き落す!!」はずが…迷走する「防御の目玉」装備計画 実績あるシステムは“見ないふり?”
乗りものニュース
日本は全廃なのに… それでもポーランドが「世界最強攻撃ヘリ」を100機買うワケ
日本は全廃なのに… それでもポーランドが「世界最強攻撃ヘリ」を100機買うワケ
乗りものニュース
「ハーキュリーズの後継はハーキュリーズで」とはならない? 空自C-130H輸送機の後継選び “アレコレ叶える”欲張り機体はどれ!?
「ハーキュリーズの後継はハーキュリーズで」とはならない? 空自C-130H輸送機の後継選び “アレコレ叶える”欲張り機体はどれ!?
乗りものニュース
史上初の来日! カナダの最新「巨大哨戒艦」が来日した理由とは? 同志国としての存在感「すでに一仕事してきましたよ」
史上初の来日! カナダの最新「巨大哨戒艦」が来日した理由とは? 同志国としての存在感「すでに一仕事してきましたよ」
乗りものニュース
ミサイルも魚雷も無し!? 初の新ジャンル自衛艦「OPV」とは? “武装貧弱”でも日本に必須なワケ
ミサイルも魚雷も無し!? 初の新ジャンル自衛艦「OPV」とは? “武装貧弱”でも日本に必須なワケ
乗りものニュース
「アジアン装甲車」なぜ台頭? 日欧米の撤退・ブランド消滅は“儲からない”から? ひっくり返りつつある市場
「アジアン装甲車」なぜ台頭? 日欧米の撤退・ブランド消滅は“儲からない”から? ひっくり返りつつある市場
乗りものニュース
タイヤで走る「装輪戦車」アジアで大増殖中! その“今っぽい”理由とは? キャタピラ式は時代遅れに?
タイヤで走る「装輪戦車」アジアで大増殖中! その“今っぽい”理由とは? キャタピラ式は時代遅れに?
乗りものニュース
中国のネット工作は戦闘機輸出市場でも暗躍? 被害を受けたフランスが激怒した巧妙なネガキャン方法とは
中国のネット工作は戦闘機輸出市場でも暗躍? 被害を受けたフランスが激怒した巧妙なネガキャン方法とは
乗りものニュース
ドイツ潜水艦に「神棚」があった!? 日独をつないだ「過酷な作戦」 100年にわたる“水面下の交流”とは
ドイツ潜水艦に「神棚」があった!? 日独をつないだ「過酷な作戦」 100年にわたる“水面下の交流”とは
乗りものニュース
韓国初のオリジナル戦闘機「これ、ステルス機なんですか?」開発元を直撃! 傍らには発展型まで展示
韓国初のオリジナル戦闘機「これ、ステルス機なんですか?」開発元を直撃! 傍らには発展型まで展示
乗りものニュース
「日本は原子力潜水艦を持てるの?」→「激ムズです!」 国際法×自衛隊の専門家が語る“決定的な理由”とは?
「日本は原子力潜水艦を持てるの?」→「激ムズです!」 国際法×自衛隊の専門家が語る“決定的な理由”とは?
乗りものニュース
「乗るだけで職業病確定」「即刻使用禁止レベル」 ヤバすぎる“新型装甲車”問題 なのに大臣は「安全宣言」どう落とし前をつけるのか!? イギリス
「乗るだけで職業病確定」「即刻使用禁止レベル」 ヤバすぎる“新型装甲車”問題 なのに大臣は「安全宣言」どう落とし前をつけるのか!? イギリス
乗りものニュース
陸自の「金曜カレー」はどんな味? 海自と陸自が輸送艦に同乗 文化も合流したらどうなった?
陸自の「金曜カレー」はどんな味? 海自と陸自が輸送艦に同乗 文化も合流したらどうなった?
乗りものニュース
ドイツ×イスラエルでロシアの脅威へ対抗! IAI製「弾道ミサイル迎撃システム」独東部で運用開始「周りの同盟国も守ります!」
ドイツ×イスラエルでロシアの脅威へ対抗! IAI製「弾道ミサイル迎撃システム」独東部で運用開始「周りの同盟国も守ります!」
乗りものニュース
海保「空前の巨大巡視船」建造へ準備着々! “海自ヘリ空母超え”の大きさ 総トン数は既存船の4倍以上に
海保「空前の巨大巡視船」建造へ準備着々! “海自ヘリ空母超え”の大きさ 総トン数は既存船の4倍以上に
乗りものニュース
東京にも寄港した「巨大空母」が長旅終える 8か月の“超なが~い航行ルート”映像で公開
東京にも寄港した「巨大空母」が長旅終える 8か月の“超なが~い航行ルート”映像で公開
乗りものニュース

みんなのコメント

70件
  • bek********
    戦艦アリゾナw
    真珠湾攻撃で沈没してるのにw
    最後の文面でこの記事の適当さに驚愕
  • ami********
    沈没状態のアリゾナを、記念艦として保存していると書くのはさすがに無理がある
    浮いている記念艦ならミズーリなどいくらでも例があるだろうに
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

380 . 0万円 441 . 0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

335 . 0万円 403 . 5万円

中古車を検索
フィアット 600の買取価格・査定相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

380 . 0万円 441 . 0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

335 . 0万円 403 . 5万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村