老朽P-3Cに頼る現実
海上自衛隊は哨戒機(味方の艦隊や領空・領海を警戒・保護するための軍用機)更新を進めている。今まで使用していたプロペラ機P-3Cを、国産ジェット機P-1に置き換えようとしている。
【画像】「マジかぁぁぁぁ!」 これが自衛官の「年収」です! グラフで見る(計9枚)
しかし、P-1は信頼性や能力が不足している。そのため更新はうまくいっていない。海外派遣では従来のP-3Cを重宝するありさまである。
この問題はどのように対処すべきだろうか。
漫然と進めている改修による解決は不適当である。それよりも別機材への置き換え、今なら米国製P-8Aへの置き換えを図るべきである。
「国産なんかしなければよかった」
P-1は成功作なのだろうか。
実務者複数の話をまとめると、欠陥機であり「失敗作」である。
何よりも信頼性がない。すぐにエンジンがハライタを起こして飛行不能になる。エンジンの平均故障間隔は計画段階の半分にも及ばない。しかも壊れるはずのない部品まで壊れる。過酷条件とは無縁な最前段のファンが飛散した話もあるという。
飛行可能な機体は半分にも満たない。P-3Cの場合は、だいたいの機体は飛行可能であった。それがP-1では半分以下、つまり半分かそれ以上が飛行不能である。
なお、防衛ジャーナリストの清谷信一さんは「3割台」としている。その数字をもって記者会見で海幕長に質問し、低稼働率を認めさせた。
機材の不調も情けない内容だという。整備関係者は
「光学センサの不具合は取付位置の失敗」
「センサ云々よりも振動を拾うから使い物にならない」
という。
専門的な話をするとデラミ検査も難しい。鳴り物入りで採用したカーボン繊維複合材は超音波検査が通用しない。筆者(文谷数重、軍事ライター)が「カーボン複合材でも超音波探傷を使うはず」と尋ねると「少なくともP-1の素材では駄目」との由だ。
「国産なんかしなければよかった」との感想もあった。「どこがしか『よかった』ところはあるでしょう」との質問への回答である。
いいところはないということだ。
ちなみに、P-1ファンによる国際競技会での優勝も無理筋である。彼らは「魚雷投下精度で海自P-1が優勝した」という。ただ、それは過剰精度で無価値であることを知らない。今の魚雷は自動追尾なので概略位置におとせばよいからだ。
改修見通しの不透明感
防衛省は、この問題を改修で乗り切ろうとしている。
これは誤った選択である。
第一に、改修が成功するかは怪しい。根幹のエンジン不良を解決できる目処はないからである。
P-1最大の失敗はエンジン選定である。実績ある海外製を選べばよいものを国産F-7エンジンの新規開発、しかもP-1との同時並行開発とした。それがコケた結果が今の体たらくである。
動機も不純であった。防衛産業の利益確保から国内開発の結論を先に決めた。それにあわせて「海外には同等品がない」となるよう仕様を逆算した形である。
技術力からすれば失敗も順当である。日本にはエンジン製造ノウハウはあるが設計ノウハウはない。遡れば実物エンジンが「なぜそのような形状なのか」「なぜその製作法を取るのか」のノウ・ホワイを持っていない。
しかも問題の洗い出しもしてない。F-7は短期間の開発であり、しかも試験運転時間も短い。
F-7は出自も素性が悪いということだ。おそらく二段底もありうる。実際に国内開発したTS-1もF-5エンジンも相当期間を経たあとで大問題が発覚した。
つまり改善の見込みは薄い。技術未熟な日本航空産業には荷が重い。しかも、設計担当者が「米国製より優れている」や「P-8Aを買わせようとする米国の圧力」と失敗を否認するようではP-1の更生は期待できない。
金銭と時間と人員
第二に、コスト面でも改修は不適当である。P-1の改修には相当の金額や時間、人的資源が必要となる。
エンジン改修にはざっと2000億円、10年、飛行隊ひとつが必要となるだろう。金額については1機あたりでざっと40億円、それを50機分である。10年間は計画開始から改修開始までの期間、飛行隊は海自51空がつききりになる分だ。
おそらく新型エンジンへの換装でも大差はない。別エンジンに置き換えれば問題解決は間違いはない。ただ、コスト事情はかわらない。エンジン代、取付部の再製作、飛行試験の負担は免れない。
加えて、機材の改修にも2000億円は見る必要がある。P-1は初飛行から20年近く経過した機体である。10年後のエンジン改修と同時に機材改修も実施しなければならない。技術進歩30年分とすると、ざっと1機あたり50億円だろう。
はたして、この費用支出は妥当であるか。「問題が解決するかどうか」は不明である。そのような改修に4000億円の防衛費と10年間の時間、1ヶ飛行隊を費消する選択は正しいのか。それよりも4000億円で別機材を買った方がよい。
改修投資の無意味化
第三は、改修の価値がないことである。P-1は将来的に使える機材ではない。
はたして今後30年を使える機材だろうか。
それはない。まずは1980年代の作戦所要に合わせた哨戒機である。P-3C哨戒機をジェット化したものでしかない。
将来の作戦環境への対応は厳しい。潜水艦探知では熱尾流、曳き波、水中電場といった新機軸の追加は考えていない。海上作戦対応でも無人機との連接の考慮はない。将来戦争への適応でも敵国攻撃への配慮もない。敵国の大後方攻撃のために必要な空中給油機構の対応はない。
それでいて運用コストは年々上がる。50機前後の生産数で専用機を作ると悪影響が出る。P-8Aのように母体民間機の部品は流用できない。予備部品のプールも貧弱となる。部品不足から壊れるたびに専用部品の再生産といった事態となるからである。
それからすれば改修してまで使う価値はない。リスクやコストを投じるまでもない機体である。
P-1陸攻化
P-1改修は不可である。そういうことだ。
一番いいのは、P-8Aが買えるうちに買うことだ。実務者はだれでもそう考えている。伝聞だが「海幕の担当者もそう言っている」という。
そのためにはどうすればよいか。
P-1を保管機にして始末するのがよい。「対潜戦は無理だが対艦攻撃には使える」「戦時に陸攻として対艦攻撃に使う」として主翼と外し八戸基地や下総基地に保管して誤魔化す。そして少しづつ処分してフェードアウトする選択肢である。
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
愛車管理はマイカーページで!
登録してお得なクーポンを獲得しよう
【CG】日産「新型エルグランド」まもなく公開! 15年ぶり全面刷新で「ツブツブ顔」に!? 高性能ハイブリッド搭載の「アルファード対抗馬」予想CGをデザイナーが作成
もうコリゴリ!?「虎の子」機を喪失したロシア軍 代わりに高性能戦闘機を前線へ「でも明らか力不足」その理由は
「潜水艦貸して…」 実は“超音速機ゼロ”の空軍以上に深刻「金欠の大国」の海軍 政権交代後の進展は? アルゼンチン
「放送をスクランブル化すれば良い」の声も! 各地でNHKの「カーナビ受信料未払」問題多発…なぜ? パトカーや消防車は対象外にするべき? いま何が起きているのか
「やっぱ『グリペン』にする」北欧戦闘機なぜいま選ばれる? コスパだけじゃないその理由
「放送をスクランブル化すれば良い」の声も! 各地でNHKの「カーナビ受信料未払」問題多発…なぜ? パトカーや消防車は対象外にするべき? いま何が起きているのか
「安易な登山」は本当に自己責任なのか? 「救助費用は全額自己負担」は正論? “自己責任論”の裏に潜む国家の資源選別問題とは
青信号になっても動かないクルマに「プッ!」催促してはダメ? 法的にはどうなの「そもそもトラブルの元」
【CG】日産「新型エルグランド」まもなく公開! 15年ぶり全面刷新で「ツブツブ顔」に!? 高性能ハイブリッド搭載の「アルファード対抗馬」予想CGをデザイナーが作成
なぜ警察捕まえない!?「タイヤ剥き出し」「シートベルト未着用」で公道走っても違反にならない意外な理由
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!
みんなのコメント
ムダを惜しんでいては、国防は
できないんだよね。
素人かな?