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旧車のレストアについて考える[part7:フェラーリ365GT4/BBの12気筒エンジンを降ろす]

その連絡は、あまりにも突然の依頼だった。

HCC95のクラブ員でフェラーリ365GT4/BB乗りの黒田さんからの連絡である。

ポルシェ911に搭載されていたエアプレッシャーゲージ「あれはエーモンだ!」

「今度、365BBのエンジン降ろそうと思うんだけど手伝ってくれない?」

さすがに今回は驚いた。

いくら日常茶飯事的にエンジンを降ろしているとは言え、今回のハードルは高そうだ…が?楽しそうなことに間違いはない!

フェラーリ365GT4/BBといえば、言わずとしれたスーパーカーブームの代表格ともいえるクルマだ。ロードカーとしてはフェラーリ初のミッドシップモデルで、筆者も12気筒のフェラーリのなかでダントツに好きなクルマだ。1973年から387台しか生産されておらず、その後1976年から512BBへとシフトしている。

■オーナーの黒田さんは、所有したクルマは自分でオーバーホールするほどのツワモノ

もともと黒田さんは所有するクルマの殆どを自分でレストアする、クラブ員の中でもイカレ指数(?)が頂点に達している「ツワモノ」である。365GT4/BBも、27年前にエンジンをすべてバラしてオーバーホールした経験を持つ。その際にパーツを広げてみたら、10畳の部屋がすべて埋まったそうだ。

ピストンリングやメタル類など、流用可能なパーツはあえて国産車用を使用してオーバーホールしたという逸話を持つ。他にもBMW2002ターボ、ポルシェ911カレラRS2.7など、所有したクルマのほとんどを自分でレストア、あるいはオーバーホールを行ってきた言わば「メンテナンス・ジャンキー」なのである。

そして、うちのクラブでもメンバーの誰かのクルマが壊れてエンジンを降ろすときなど、必ず現れて手伝ってくれる頼れる存在でもある。そういう今までの経歴があってこそ、365GT4/BBのエンジンを自分で降ろすから手伝って欲しいとの話が来たのだ。

「フェラーリの12気筒エンジンを降ろせるなんて、そんなチャンス一生ないぞ!」

こんなオイシイ(?)話を放って置けるわけがない。実は心のなかでは、小躍りしていたかもしれない。すぐに話しは他のクラブ員に伝達され、腕に覚えのあるもの達が招集されたのだった。

この365GT4/BBは乗っていなかった期間も長いのだという。しかしエンジン自体は、たまに掛けていたことも、あり吹け上がりも問題なく、キャブレターなど簡単な部分のオーバーホール時々を行っていたようだ。

今回、これから乗り出すにあたり、タイミングベルトやウォーターポンプ、クラッチ周りなど定期的にメンテナンスが必要で、かつエンジンを降ろさなければできない部分を行うこととなった。

ただし、一つだけ問題があった。

当の本人がエンジンを降ろしたのが27年前のため、どうやって作業したか記憶が曖昧らしい。もちろんマニュアルなんてあろうはずもないから、始める前から前途多難ではある。

■12気筒エンジンを降ろす準備を行う

エンジンを降ろすにあたり、まず場所の確保が必要だ。ウチのような自宅の小さなガレージでは、到底設備が足らないのは目に見えている。リフトは最低限でも必要だ。そこで千葉にあるオートガレージ・キムラさんに場所を提供していただき、そちらに通って作業することとなった。

現地に到着した時点で既に365GT4/BBのリアのエンジンフードが外され、塗装ブースへと移動していた。その他、エアクリーナーも外されてダンドラのウェーバーが剥き出しになっていた。既にエンジンを降ろす準備は万端である。キャブレターは、マニホールドと分離させたのだがリンケージを外したくなかったので降ろす際に邪魔になったら外そうという話になり、いよいよエンジンを降ろす準備を始めた。

まず最初の難関だったのがマフラーの取り外しだ。12気筒エンジンをコンパクトにまとめる必要もあったのかもしれないが、フレームに複雑に絡んでいるため、エキゾーストパイプから分離させるのは至難の業だ。高難易度のな知恵の輪を外すかのように、みんなで悩みながら作業していくのだが、少しでも角度が合わないと抜けそうにないのだ。マフラーを外すだけなのに、こんなにも厄介だとは…。

作業する際の当然のセオリーとして、こういう場合は装着するときのことを考えて外しながらその工程を写真に残すのだが、複雑過ぎて写真で見ても判別できないレベルでなのであった…。

■いよいよエンジンを降ろす

エンジンをベルトで固定してエンジンクレーンで降ろす準備を行う。エンジンクレーンで引き上げる際、ベルトが干渉して、どこかが折れたり変形したら取り返しがつかないことになる。そこで慎重にベルトを掛ける場所を決めていくのだ。

エンジンマウント、ミッションマウントからの分離を終え、いよいよ引き上げるのだが…。

ここで問題が発生。どうやってもリアのサブフレームにクラッチハウジングが微妙に干渉して上げることができないのだ。色々と角度を変えたりしてみたが、無理して引き上げるには危険すぎる。

よって、また振り出しに戻して一旦エンジンを元の位置に戻しクラッチハウジングを外すこととした。文章にすると簡潔に思えるかもしれないが、実際にはこれまた大変な作業だったのだ・・・・・・・。クラッチハウジングが抜けずにエンジンを浮かしながら抜くという大技が必要だった。このあたりが経験のない素人作業だと思い知らされるのである。

■これが水平対向12気筒のエンジンだ!

想像以上に大変であったが、なんとかエンジンを降ろすことができた。それにしても、このリア・サブフレーム…手作り感満載である。

オーナーの黒田さんに「リアカーのフレームみたいだ…」と言わしめるほど、見た目が軟弱そうに見える。エンジンが抜けると重さから開放されて歪が生じるのではないかと心配になるほどであった。

そして降ろした12気筒エンジンは圧倒的な存在感である。アルミブロックとは言え、12気筒エンジンは半端なく重く、移動も一苦労だ。まずはラジエターキャッチタンクなど、降ろしてからの方が外しやすそうなものは、この段階で作業していく。セルモーターやオルタネーターは、問題なく動いて入るが、長く乗るために電気屋へと直行してオーバーホールしてもらうこととなった。ちなみにオーバーホール代は一般的な国産車と変わらない金額だった。

またクラッチ3点(クラッチ板、カバー、レリーズベアリング)もここで交換しておいた。

次にタイミングベルトのカバーを外してみた。タイミングベルトとテンショナー、クランクプーリーの位置関係で水平対向の仕組みの勉強にもなる。やはり現物を見ると、写真で見るそれとは違い、その迫力と造形美に圧倒される。

その後、ウォーターポンプを外していくことにした。この際、タイミングベルトとテンショナーは外しておく必要がある。結構なゴツさのポンプのカバーを外してからポンプをバラしていく。

これはAssy交換ではなくオーバーホールのキットが売ってあるので、そちらを使うことにした。ウォーターポンプのオーバーホール?と最初は思ったが、回転の羽は真鍮のようでまさに芸術品。こんな美しい造形は見たことがない。Assyで買うと高額そうだ。このあたりへのコストの掛け方は、さすがフェラーリと感心させられるばかりだ。

■これが水平対向12気筒のエンジンだ!12気筒は簡単に載らない…

テンショナーも組み終わり、次はエンジンを載せなければいけない…。外した逆のパターンで簡単に載ればいいと思うだろうが、いかんせん、いつものことながら一筋縄では行かない。

どう角度を調整してもエンジンマウントに上手く載らないのだ。おそらくではあるが、やはりサブフレームがエンジンの重りから開放された際に、わずかながら歪が生じたのではないだろうかと推察する。

結局、地面に寝そべって「こっちからエンジン蹴るから、そっちで合わせて!」と、半ば強引に入れて事なきを得たが…。フェラーリの12気筒を蹴るなんて罰が当たりそうだ(汗)。

エンジンが載って安心していたが、ここからまた迷宮入りしてしまう。やっぱりマフラーが知恵の輪すぎるのである!(苦笑)

4人がかりで「あーでもない、こーでもない」を散々繰り返しながら、なんとマフラーの取り付けだけで2時間以上掛かってしまった。次からは映像に撮っておいたほうがよさそうだ。その他の補機類もつけて、なんとか365GT4/BBは仕上がっていった。

エンジンは問題なく掛かり、安定していた。

載せた後、毎回であるが一番感動する部分である。今回は想像以上に大変だったが、通常の作業とは達成感の次元が異なる。

何よりもフェラーリのオーバーホールを手伝った満足感は計り知れない一生の思い出となることだろう。クルマ好きとして普通に生きていても、なかなかこういう機会には巡り会えない。作業の手伝いに呼んでくれた黒田さんに逆に感謝なのである。

■すべての作業を終えていえることは…

こうして一連の作業を振り返ってみていえることは…。

「ホントに楽しかった!」

これ以上もこれ以下でもない。改めて思う。この一言に尽きるのである!

[ライター・撮影/ユダ会長]



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