東京モーターショー2019でワールドプレミアされた、マツダ初の市販型EV「MX-30」が、欧州でプレオーダーを開始している。
イギリスのMAZDAホームページによると、「MX-30 ファーストエディション」のローンチは2021年3月、価格は2万7495ポンド~。日本円に換算すると、約360万円だ(1ポンド=130円で算出)。新型コロナウイルスによる経済混乱で為替が一時的に狂っている影響があるかも知れないが、割と安く感じる。
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本記事では、MX-30とはどういったクルマなのか振り返りつつ、先行する他社EVの違い、そして、マツダの目指すEVの方向性について考察していく。
(※ただ現在、欧州は新型コロナ禍で大混乱中。この先、新型車の発表や生産スケジュールがどうなるか、まったく見通しがたっていない状況ではある。こちらも最新情報が入り次第、お伝えします)
文/吉川賢一
写真/MAZDA、編集部
【画像ギャラリー】欧州でひと足早くプレオーダーが開始された「MX-30」の詳細をチェック!!
■MX-30とはどのようなクルマなのか?
MX-30のデザインテーマは「ヒューマンモダン」。クーペ風のクロスオーバーSUVルックをまとっており、ストレートに近いボンネットラインと、寝かせたCピラーが特徴的だ。エクステリアは妥協なくシンプルにまとめられており、ドアは、「RX-8」を彷彿させるセンターピラーレスのフリースタイルドアを採用している。インテリアは親しみやすくて明るい雰囲気を狙い、ドライバーとパッセンジャーが常にリラックス出来る空間を目指したそうだ。
これまでのマツダSUVとはひと味違うフロントマスクが与えられた「MX-30」。魂動デザインの最新進化モデルだ
観音開きドアは、RX-8でも乗降性のよさが魅力だったが、より開口部の広いSUVのMX-30では使い勝手に大きく貢献しそうだ
参考にCX-30の車両サイズと比較してみた。
MX-30は、CX-30よりも全高が30mm高い程度で、ほぼCX-30のサイズ感といってよい。また、全幅も1800mmを超えておらず、辛うじてコンパクトSUVといえる大きさだ。
バッテリー容量は35.5 kWh。マツダHPには「UKの運転手の1日の平均走行距離は約30マイル(48km)。日々のアクティビティには124マイル(200km)で十分」と記載されており、今後、ロータリーエンジンを発電機としたレンジエクステンダー版の発表があるかもしれないが、ライバルと比べても明らかに少ない。このバッテリー容量に関しては、後章にて詳しく考察する。
モーターのトルクは、本来持っている性能を絞って導入されるそうだ。マツダによると、「内燃エンジンを搭載したクルマとの違いをなくす」ことが理由だという。EVが持つ、スカッとする加速フィーリングを捨てて、あえて内燃機関のフィーリングを目指す、この判断は、「奥深い走り」のマツダ3、そして「割とおしとやかなエンジン」スカイアクティブXが登場した時と同じように、我々自動車評論家を悩ませることになるだろう。
■先行しているライバルと比較して技術面と商品性における注目ポイント
◆EV専用のプラットフォームによる走りの質感の高さに期待
昨年、マツダはMX-30に先駆けて、CX-30の外装をまとった「EVの技術検証車」の試乗会を行っていた。床下に動力用バッテリーを敷き詰めた、このEV技術検証車には、「多方向環状構造ボディ」なる技術が採用されおり、ご覧の通り、バッテリーを囲う牢屋のようなフレーム構造を取っている。
仮に後ろから衝突されても、バッテリーパックへダメージが及ばないよう、車体の強度が大幅に上げられているのだ。その強固なフレームから、前後方向へサイドメンバが伸びており、前後のサスペンションの荷重を、フロアへと伝える構造に見える。バッテリーを守るこの構造によって、フロアの剛性を飛躍的に高めることにも成功しているはずだ。
さらに、比較的小さなバッテリー容量にしたMX-30は、大容量のバッテリーを搭載したライバルたちよりもバッテリーが「軽い」というメリットをもつ。軽さは、クルマの運動性能にもろに効いてくる。フロアに敷き詰めたバッテリーによる低重心化と、比較的軽量なバッテリー、そして高いフロア剛性、これらがもたらす運動性能の恩恵は、必ずあらわれるだろう。
MX-30はCX-30とプラットフォームを共用しEV化している
◆航続可能距離200kmの設定は正解か?
航続距離について、世界中のユーザーから洗礼を浴びたのが、EVの先駆者である、日産リーフだ。2010年12月に発売開始した当時のバッテリー容量は24kWh、航続距離200km(JC08モード)と、MX-30の公称値と同じだった。実質的には0.7掛け程の140kmが実力で、当時リーフは「こんな距離の短さでは使えない」と酷評された。
その後、紆余曲折を経て、2代目リーフでは40kWhのバッテリー容量で400km(WLTCモード換算で322km)、2019年にはバッテリー容量を62kWhまで増した「e+」を発売、570km(WLTCモードで458km)にまで伸ばした。「システムの効率向上とバッテリー容量増加」という、技術で航続距離論争をねじ伏せたリーフは、ユーザーがファーストカーとして満足のいく航続距離を示すことに成功した。しかし、e+の車両価格は約441万円(Xグレード)、上級グレードのGグレードは約500万円と、リーフは高額車になってしまった。
「ホンダe」はセカンドカーだが、「MX-30」はファーストカーという位置づけ。そういった理由から、航続距離が200kmというのは賛否ある
この一連の流れを、じっくりと見ることができた各国の自動車メーカーは、「1度の充電で本当に必要な航続距離がどれほどなのか?」をじっくりと考えることができただろう。マツダがMX-30の航続距離を200kmにしたのも、ホンダが「ホンダe」の航続距離を220kmとしたのも、リーフの右往左往を見ていたうえでの判断だと、筆者は推測している。
実際、航続距離は200kmもあれば、通常生活する上でまったく問題ない。リーフのオーナーであった筆者の経験から断言できる。400kmも、500kmも航続距離があっても使いきることはまずないし、充電時間も長く、車重もあり、車両価格も上がってエコノミーではない。
足りない方は、ディーゼルエンジン車や、ハイブリッド車を使えばいいだけだ。いつ行くのか分からない遠出のために、大きなバッテリーで安心感を買うというユーザーは、EVというモビリティを勘違いしているのではないか、と考える。
◆「駆動力を絞って内燃機関らしく」したEVは正解か?
マツダは、EVでも「人間中心のコンセプトや人馬一体感」を持たせる信念を追求しているそうだ。MX-30では、加速や減速の強さを、人間が音で知覚できるような、周波数の高低やピーク値の数、大きさなどといった要素で、サウンドとしてドライバーに伝える技術が盛り込まれており、発進時は低周波のサウンド、速度が増すにつれて高周波サウンドを混ぜるようになっていくそうだ。
EVのもつ「スカッ」とするほどの加速フィールは、大きな魅力のひとつだ。ジャガー「I-PACE」、メルセデスベンツ「EQC」、アウディ「e-tron」、そしてポルシェ「タイカン」などは、速さ=正義だ。先日、I-PACEに試乗させていただく機会があったが、ほんの一瞬アクセルペダルを踏み込んだだけで、ヘッドレストにまで眼球が押し込まれるかのような、瞬時に出る強烈な加速に、心臓がバクバクした。
「速さ」をアピールしないEV。しかも「内燃機関のフィーリングを目指す」というのは、現時点、それが魅力的に映るのか、筆者にはわからない。2021年、このクルマが登場した際には「マツダが目指したのはこれか!」と言わせていただけることを期待している。
※編集部注:マツダに取材した結果、日本導入は、決まってはいるものの時期については未定だという。2021年春頃と予想している。
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みんなのコメント
いつもこればかり言い訳ばかりで、ほんとこの会社は信用できない
出来がアレでもしょうがない。