戦争遺産を今に伝える展示施設「soraかさい」の2機の旧軍機
太平洋戦争の記憶を伝える兵庫県加西市の展示施設「加西市地域活性化拠点施設soraかさい」は、2022年4月にオープンしました。展示の目玉となっているのが、戦闘機と攻撃機、計2機の実物大模型です。
【もう1機ある!】これが九七式艦攻と一緒に展示される「傑作海軍機」です(写真)
1機は戦時中に隣接地にあった川西航空機(現・新明和工業)姫路製作所鶉野(うずらの)工場で最終組立が行われていた、旧日本海軍の陸上戦闘機「紫電改」です。爆弾を抱えて飛行しているようなもう1機は、中島飛行機(現・スバル)が製造した3人乗りの「九七式艦上攻撃機」です。
兵庫県在住の戦史探訪家、緒方孝昭さんは「実物大模型には地元の方々の熱意が込められており、戦争の悲劇とともに当時の人々の必死の取り組みも学ぶことができる」と語ります。筆者(大塚圭一郎:共同通信社経済部次長)は、九七式艦上攻撃機の尾翼に記された「ヒメ-305」の文字と、周辺の残る遺構を手がかりに、この機体がどのように再現されたのか、その背景を探りました。
「soraかさい」が建つこの地域一帯には、パイロット養成のため太平洋戦争中の1943年10月1日付で発足した旧日本海軍の練習航空隊「姫路海軍航空隊」の基地がありました。隣接地には、通称「鶉野(うずらの)飛行場」が整備され、長さ1200mのコンクリートの滑走路が設けられていました。
姫路海軍航空隊と鶉野飛行場は、前出の九七式艦上攻撃機と深い関わりがあります。
戦時中の様子を今に伝え続けている遺構の数々
兵庫県の第三セクター鉄道、北条鉄道の法華口駅から「soraかさい」へ向かう道中には、戦時中の様子を今に伝える遺構が点在しています。途中にある坂道を登り切った場所には、約80年前に同じ場所に立っていたとされる「姫路海軍航空隊」と刻まれた門柱と、衛兵詰め所が再現されています。
現在、姫路海軍航空隊の基地跡地は、神戸大学大学院の農学研究科に附属する食資源教育研究センターの農場として利用されています。かつてこの場所には、一部が3階建てになっていた木造2階建ての本部庁舎がありました。戦後、この庁舎は近くに新設された加西市立下里中学校に移築され、校舎として使われていましたが、1974年に同校が善防中学校に統合されると、その役目を終えました。
姫路海軍航空隊の敷地内にあった士官舎や道場、兵舎・講堂などはすでに撤去されていますが、戦時中の様子を今に伝え続けている遺構が姫路海軍航空隊の中で最大だった防空壕の跡です。加西市の「鶉野飛行場跡戦争遺跡めぐりガイドマップ」によると、この防空壕は「小山に見えるようカモフラージュされた」とされ、内部は長さ14.5m、幅、高さともに約5mのコンクリート製の空間があり、自力発電所として使われていたとされます。
近くには、敵対する連合軍の航空機の来襲に備えて設置された対空機銃の台座もあります。これは円形のコンクリート製で、「対空機銃座跡」と呼ばれています。当時は、長さ1.5m、口径25mmの機銃弾を発射する連装対空機銃が備えられ、「1分間に230発の弾を5000mまで発射できた」とされています(鶉野飛行場跡戦争遺跡めぐりガイドマップより)。この場所には、2005年公開の映画「男たちの大和/YAMATO」の撮影に使われていた九六式25mm三連装機銃の実物大模型が一時展示されていましたが、現在はありません。
また周辺には、姫路海軍航空隊が使っていた爆弾庫の跡も残されています。内部は幅約3m、奥行き約8.5mで、60kg爆弾や250kg爆弾が保管されていたとされています。
練習機が「特攻機」へと変わった運命
このようにさまざまな施設を抱えていた姫路海軍航空隊は、実戦に向かう練習生らに対して、飛行練習の最終段階を担う重要な役割を果たしていました。発足にあたって、1943年10月には、東京・羽田の霞ケ浦海軍航空隊東京分遣隊で使用されていた「九七式艦上攻撃機」約20機が、徳島海軍航空基地を経由して姫路海軍航空隊に飛来し、練習教程で用いる練習機となりました。
しかし、これらの機体は太平洋戦争末期に役割が一変します。戦局の悪化を受けて、神風特別攻撃隊「白鷺隊」が編成され、練習機は特攻作戦に投入されることになったのです。
1945年3月23日、すべての機体が鶉野飛行場を飛び立ち、現在の大分県宇佐市にあった宇佐海軍航空隊の基地へ向かいました。その後、鹿児島県鹿屋市の串良海軍航空基地へ移動。沖縄上陸を進める連合国軍に対する特攻作戦「菊水作戦」に従事することになります。
1945年4月から5月にかけて、21機・計63人が出撃し、沖縄でアメリカ軍の艦艇に機体もろとも体当たりして命を落としました。なお、全ての攻撃機を失った姫路海軍航空隊は同年5月に解散しました。
「soraかさい」につり下げられている九七式艦上攻撃機の実物大模型の尾翼には「ヒメ-305」と記されています。これは、先陣を切って1945年4月6日に出撃した白鷺隊隊長・佐藤清大尉らが搭乗していた機体を再現したものです。
実物大模型が展示されている建物のすぐそばには、平和が続くことへの願いと白鷺隊の隊員たちの鎮魂のため、1999年に建立された「鶉野平和祈念の碑苑」があります。碑文には「この史実を永世に伝え、謹んで殉国された勇士の御霊をお慰めし、併せてそのご加護により永遠の平和の実現を切に願うものである」と刻まれています。
2025年8月15日に80回目の終戦の日を迎えるにあたり、実物大模型と碑文は、数多くの尊い命が奪われた戦争のむごたらしさという「暗黒の歴史」と、かけがえのない平和を守っていくことの重要性を訴え続けています。(大塚圭一郎(共同通信社経済部次長・鉄旅オブザイヤー審査員))
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みんなのコメント
昭和7年、8年とDC-1やノースロップ軽爆(2E?)が輸入されて、日本の技術力とのギャップに海軍航空廠長 前原少将が「こりゃいかんわい」と呟いたそうで…。
ここから海外から講師や設備を導入しながら、駆け足で生産設備や技術力をあげたものの…あとは皆さんのご存知の通りです。
ですが、ここまで一気に技術基準を上げる事が出来た先人達の努力に、ただただ頭が下がります。