新車試乗レポート [2025.10.14 UP]
【ヒョンデ】インスタークロスの心地いいワイルド感【九島辰也】
文●九島辰也 写真●ヒョンデ
小さくてカワイイ! インスタークロスの意外な実力【竹岡 圭】【ヒョンデ】
アイオニック(IONIQ)5の印象が強いヒョンデですが、気づくと日本でのラインナップ展開は充実してきました。アイオニック5 NというハイパフォーマンスモデルやFCEVのネッソ(NEXO)、それにコナ(KONA)があります。さらにいえば、コナにはマウナロア(Mauna Loa)という限定車も。こちらは限定車専用ボディカラーにブラック塗装のバンパーやフェンダーを取り付けたワイルドな仕様。どちらかというと、今流行り的なアウトドアを意識したモデルとなります。
そんな中今回注目するのはインスター(INSTER)です。日本で発売されているヒョンデの中でもっともコンパクトでリーズナブルな一台となります。軽自動車規格とまではいきませんが、思いのほか小さいので、扱いやすいサイズと言えるでしょう。本国には内燃機関のモデルもあるそうですが、日本仕様はBEV。そのホイールベースを伸ばして床下にバッテリーを敷き詰めたそうです。もちろん、車両重量がかさむことで足回りにも手が入っています。
ヒョンデ インスタークロス
で、そこに今年8月追加されたのがインスタークロス。前述したコナの限定車と同じ手法で、アウトドア感を強くしました。
具体的には専用のバンパーやサイドシルプロテクター、ルーフバスケットを装備するほか、内外装に専用色を用意しています。インテリアはグレーとカーキのコンビネーションにライムイエローのアクセントを取り入れるなど印象的にしています。
エクステリアカラーはトムボーイカーキとアンブリーチアイボリーという2色を初回生産分に限定で販売した模様。標準色よりも選択肢が多くなります。といってももう完売かな。カタログカラーのアマゾナスグリーンマットでもワルくないですけどね。
ホイールはクロス専用デザインを履きます。ダーク系の配色でワイルドさを演出しています。惜しいのは、そこでタイヤのハイトなどが変わっていないこと。つまり、全高は標準車と変わりません。この手のモデルであれば、タイヤの外径を大きくしたりサスペンションを取り替えたりして車高アップを図ってもらいたいところです。
ボルボEX30クロスカントリーがそうです。全高は1565mmですから標準車の1550mmに比べわずかですが16mm高くなります。でもこの差が大切なんですよね。見た目の印象をワイルドな方向へ変えてくれます。インスタークロスもぜひその手法を取り入れてみてください。
ヒョンデ インスタークロス
ではその走りですが、一般道を中心に走りましたがとてもスムーズでした。気になるクセはなく快適。ステアリング操作に対してもナチュラルに反応します。雑さはありません。精緻に設計されている感じです。それになんたってこのサイズですから気楽です。
個性的なのはシフト操作でしょう。ハンドル右のレバーでDレンジに入れます。向こう側へ捻る動作。普段メルセデスに乗っている身からすると逆方向にあたります。メルセデスのレバーは下にするとDレンジですから、ヒョンデ風にいうと手前になります。正確には異なる操作ですが、頭の中の感覚はそうです。面白いですね、人間の感覚って。
ヒョンデ インスタークロス
それにしても最近はシフト操作がメーカーによってまちまちなになっている気がします。メルセデスは効率を重視しいち早くレバー式にしましたが、BMWは手法は変わってもセンターコンソールから動かしません。アウディもそんな感じ。そういえばキャデラックリリックはステアリングコラム右側のレバー操作だったような。
これらはフロアシフトがセオリーだった時代を経て各メーカーが取り入れました。振り返れば、かつてはコラムシフトのMTやATがありましたが、80年代くらいからここ数年まではフロアシフトが主流でした。その意味では技術力が上がり設計が自由になったのでしょう。特に補器類をはじめパーツの少ないBEVではそうだと思います。
でも調べてみると、1950年代のアメリカ車にはATのシフトチェンジをボタン操作で行っていたものもありました。思い返すと、あの頃のアメリカ車は進んでいたんです。なんたって毎年のようにモデルチェンジしていましたから。
話がそれましたが、今回は最近流行りの少しワイルド仕様のBEV、インスタークロスを紹介しました。ディーラービジネスを行わない方向で始まったヒョンデなので、今もタッチポイントは少なく新型車がわかりずらいですが、モデル展開は確実に広がっています。
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