レース、モータースポーツ好きが選ぶクルマといえば、とにかく速さを求めていると思われがち。たしかにトルクフルなエンジンや信号待ちからスタンディングスタートを決めたくなる加速感は魅力的。さらにレースカーのようなエアロが付いた見た目や、サーキット走行ができるくらいの固い足回りのクルマもレース好きの心をガッシリ掴みますよね。
でも……1周まわって、やっぱり普段の足に使いたいクルマって結局、乗り心地のいいクルマじゃないですか? という編集部の主張をもとに、お借りした広報車をできるだけ忌憚なく、乗り心地はどうかという一点で評価してみたいと思います。今回評価するのはトヨタ/GRのGRヤリスです。
トヨタGR、歴史的な1-2-3-4-5フィニッシュを達成「ドリームチームに恵まれている」/WRCフィンランド
●乗り心地評価 7つのポイント5段階評価
運転席からの見やすさ ★★★★☆ステアリングの操作性 ★★★★★足回りの感触 ★★★★★アクセル、ブレーキの感触 ★★★★☆シートの座り心地 ★★★★☆街乗りオススメ度 ★★★☆☆高速道路での安心感 ★★★★★その他おすすめポイント:見た目と走りのギャップ萌えと、いろいろ伝わる作り手のこだわり
総合評価 ★★★★★
こんにちは。編集部のミズノです。6月に開催されたニュルブルクリンク24時間では109号車トヨタGRヤリスDATコンセプトのクラス優勝、おめでとうございました。ということもありますし、国内現場でリスペクトしているTGRエンジニアの方が抽選で真っ赤なGRヤリスをゲットしてドライブしているのを見て、そして4月に愛知県の元町工場でGRヤリスの製造工程を拝見させて頂き、とにかくGRヤリスに乗ってみたくなりました。
ということで今回、GRヤリス(RZ High performanceグレード)の広報車を試乗させて頂きました。このGRヤリスはいろいろ魅力が多くて、さまざまな角度で伝えられるのですけど、このコーナーのコンセプト、『乗り心地』に絞って、お伝えしたいと思います。
GRヤリスは「モータースポーツを起点とした、もっといいクルマづくり」をコンセプトにしたGRの象徴的モデルです。ざっくりと概要をお伝えすると、WRC(世界ラリー選手権)の現場で勝つ要素を一般市販車に詰め込んだクルマで、トヨタとして1999年以来の四輪駆動、GT-FOURを採用して、スーパーGT500クラスに参戦中の大嶋和也、そして石浦宏明が開発を担い、専用工場(GRファクトリー)まで作って世に送り出しているモデルです。
2021年には英国カー・オブ・ザ・イヤーを受賞するなど、世界的にもGRヤリスの評価は高く、未だに購入者が絶えずに入手まで数カ月待ちが基本となります。
そんなGRヤリス、改めて一般庶民の視点で乗ってみても、そのクオリティの高さというより、作り手の気迫がしっかりと伝わります。見た目はちょっとマッスルなヤリスという感じですが、その乗り味はややスパルタン。FFや四駆と聞くと、ちょっとクセがあるイメージですが、GRヤリスはそんな特徴をかき消すように、乗り心地はまるで高級ドイツ車のようにしっかり感があり、シャシーの剛性の高さと、とにかくよく曲がるというインプレッションです。
高速道路の本線に向かう、回り込むようなコーナーでもどんどん曲がって、アンダーステアが出るような気配がまったくありません。そのステアリングさばきと言いますか、コーナーを曲がる感覚はとにかく乗ってきて気持ちがいい。高速を降りて山道のワインディングロードに入ると、その楽しさは掛け算で増して行きます。さすが、出身がラリーなだけあって、とにかくコーナーが楽しくなるクルマでした。
1.6リットル3気筒ターボのエンジンのトルク感も十分で、しかも、2500rpmを超えてから車内でも十分に感じるエンジンサウンドに気持ちがアガリます。まあ、その分、車内で音楽や会話などに弊害は出るのですが、このクルマを手にする目的はそこではないですからね。
走りはしっかり感が十分な一方、ノーマルモードで街乗りで走るとちょっと足が硬めで跳ねるような感触があったので、この企画の街中での乗り心地という点ではちょっとマイナス点。でも、ノーマルモードからグラベルモードに変えると、足が柔らかくなって突き上げ感が激減。なるほど、このGRヤリスにとって街中はグラベルと同じなのかも、と妙に納得してしまいました。その一方、高速道路ではノーマルモードのしっかり感はとても心地よかったですね。
⚫︎スーパーGTでお馴染みの石浦宏明、大嶋和也が製造工程から開発を担当
このGRヤリスが作られたのは、今年の1月にリニューアルされた愛知県のトヨタ初のスポーツカー専用工場の元町工場(GRファクトリー)。今年4月にそのGRファクトリーの製造ラインを見学する機会があったのですが、そこは最新設備満載の近未来的なファクトリーでした。ベルトコンベアなどはなく、AGVと呼ばれる無人搬送機が縦横無尽に動いていました。AGVはイメージとしては、ロボット掃除機のような平べったいモジュールの業務版みたいな機械です。 その最新設備とともに驚いたのが、職人スタッフによる足回りの組立と検査の工程のこだわり。通常の工場では工程の中盤に行われる足回りの取付を、GRファクトリーでは最後に行っています。これは実際に乗った際、操舵性や駆動にダイレクトに関わってくる部分のため、精度を高めるために最後に行なっているのだという。
そして、これまでは足回りを取付ける際、クルマをリフトアップした状態で作業していたそうなのですが、このGRファクトリーでは1G締めと言って、実際に足回りにクルマ1台分の重量を掛けた状態で取付けているのが印象的でした。1Gを掛けて作業を行うことでブッシュのねじれなどを解消し、サスペンションが本来の動きになることで乗り心地を向上させたり、サスペンション性能を最適に引き出せること
この1G締めは高い精度でアライメント行うレースの現場で行われている作業なのですが、それをGRファクトリーで行なっているのです。しかも、このアイデアは開発を担当した石浦宏明選手、大嶋和也選手からの発案だったとこと。
後日、石浦選手にこの1G締めと、新しいGRファクトリーについて聞いてみました。
「今のGRファクトリーができてから1G締めができるようになりました。1回緩めて、1Gを掛けながら締め直す。僕が以前、納車したばかりの新車のアライメントを測定したら、四輪の車高がバラバラだったんですよ。一般道を走る分にはそれでも問題ないのですけど、サーキットのような平な路面をそれで走ると『あれっ!?』といろいろ気づいてしまいます。ですのでチームのファクトリーで1回緩めてもらって、1G締めしてもらいました。工業製品なら製品によって多少の公差はありますが、今のGRファクトリーができてからのクルマは、僕らがテスト段階でサーキットで乗っているクルマと同じようなフィーリングになっています」と、石浦選手。
同じく大嶋和也選手も、「わがまま言って、精度を上げてもらいました。工場でのクルマの作り方やクルマへの要求、そしてテストコースでの検査の仕方とか、『もっとこういうことをやった方がいいですよね』とか、『こうした方がいいクルマができるよね』とか、ずっと長く話しをしてきていました。クルマを乗ったらわかると思うのですけど、すべての部分でかなりレベルが高いと思いますし、精度の高さも数年前と比べたら段違いです。あの工場で働いている人たちが頑張った結果なんですよ、というのを感じてもらえると嬉しいですね」と、自信たっぷりに話しているいる姿が印象的でした。
いろいろクルマの知識や製造背景を知ってしまうと、それに影響されがちですが、何はともあれ、クルマは乗ってナンボ、走ってナンボ。まずは先入観なく、とにかくこのGRヤリスを乗ってみてください。では!
[オートスポーツweb 2025年08月15日]
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みんなのコメント
微妙というかなんというか。
車体側はかっちりしっかりしてるしサスもよく動くから、タイヤを地面にくっつけてます!って気合は伝わってくる。
でも普通の車のような乗員への配慮とかいたわりは欠けてるというか二の次かな?
特に50キロくらいまでで片輪ギャップ越えたりすると、あまり優しくしてもらってると感じられない。
速度上がるとそれもなくなってビシッとなるんだけど。
高級ドイツ車のような、って書いてるけども普通の911もBMWもここまで振り切ってないよ。やはり競技ベース車だなと感じる。