レースで伝説を残したモデルの心臓を受け継ぐ市販車
1)日産スカイラインGT-R(PGC10)
レーシングドライバーでも操れない! 運転が難しすぎる市販車3選
ファミリカーといえどもレーシングカーに搭載されるような強力なエンジンを搭載したモデルがかつては多く存在した。その走りになったと言えるのは1969年に登場した初代日産スカイラインGT-R(PGC10)通称「ハコスカ」と呼ばれるモデルだったろう。
車体外観はファミリーセダンであるスカイラインのままで心臓部には純レーシングマシンである日産R380が搭載していたGR8型2リッター直6DOHCエンジンをデチューンしS20型と改名して搭載していた。
とはいえミクニ製ソレックスのキャブレターを3連装し7000回転で160馬力を発揮するそのエンジンは走り屋垂涎の的となった。大人しいセダンが強力なパフォーマンスを秘めていたことから「羊の皮を被った狼」と形容されたのだ。このS20型を搭載したスカイラインGT-Rもレースで大活躍を示し通算50勝を記録するなど、今では伝説となっている。半世紀経った今では入手困難で奇跡的なコンデションの固体に巡り会えたとしても天文学的な値段となってしまうだろう。
もう二度と登場しない可能性もある大排気量V10搭載車
2)BMW M5(E60)
僕個人としてはもっとも好みのエンジンは大排気量で自然過給のV型10気筒エンジンである。F1マシンがV10エンジンを搭載して競われた2000年代、その魅惑的なエンジンサウンドが世界中のモータースポーツファンを魅了していた。12気筒エンジンもサウンドは素晴らしかったが、フォーミュラカーに搭載するには大きすぎた。V10エンジンのコンパクトさと高回転特性、サウンドのハーモニーが最高と多くのファンが思ったに違いない。
そのV10エンジンを市販車の、それもファミリーセダンに載せてしまったのが2004年に発売されたBMW M5だ。スカイラインGT-Rと同じく外観はまったく普通のBMW 5シリーズセダンでありながら、エンジンルームには5リッターの大排気量を持つV10エンジンが収められたのだから。しかも最高出力は507馬力とされ量販モデルとして初めて500馬力オーバーを達成。現代のハイパフォーマンスカーブームに先鞭をつけていた。
後輪2輪駆動で500馬力を路面に伝えるのは困難で通常は電子制御に頼るしかない。サーキットでトラクションコントロールをオフにしたら我々プロドライバーでも操りきれないほどのじゃじゃ馬的ハンドリングだったが、当時の新車販売価格が1350万円ほど。エンジンだけの値段としても安いと感じさせるほど安価な価格設定と言えた。
M5がきっかけとなり競合他社も競ってV10エンジン搭載車を登場させる。アウディはセダン・クワトロのS8に。4輪駆動としたことで1輪当たりの馬力負担が減りコントロール性が圧倒的に高まりハンドリングバランスにも優れた魅力的なモデルだった。トヨタはLF-A、米国ではクライスラーがダッジ・バイパーに、またRAMやフォードなどピックアップトラックにV10エンジンを搭載したモデルもありファミリーカーではないけどもV10エンジンだけでも価値が認められるのだ。
3)メルセデスAMG A 45
最後にお薦めしたいのはメルセデスAMG A 45だ。こちらは2リッターの直4ターボエンジン。ランエボやインプなど2リッターターボエンジン搭載車は国産車にも多く存在するがA 45はそのパワースペックにおいて他を圧倒している。
馬力規制もあって国産モデルは280馬力の最高出力仕様がほとんどだった中で2013年に登場したAMG A45は最高出力360馬力。最大トルク450N・mを発揮させられていたから驚いた。我々がレースで使用していたランエボのS耐マシンでも330馬力ほどだ。それを市販モデルで大きく凌ぎリッター当たり馬力で180馬力にも達していた。
しかし驚くのはそれだけではない。A45はその後381馬力にパワーアップされ、今年登場予定の新型では420馬力に達すると見込まれている。おそらく1千万円を下まわる価格でリッター当たり出力が210馬力にも及ぶウルトラ級エンジン搭載車が購入できる時代でもあるのだ。
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