「歩行者事故」減少を狙う看板増加
クルマを運転していると、道路標識とは異なる注意看板を目にすることがある。そのなかでも、子どもや高齢者の飛び出しを警告する人型の看板があり、「とびだしとび太くん」や「とびだし坊や」などと呼ばれている。
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これらの看板は、主に通学路や信号のない交差点に設置されている。ドライバーは、これらの看板を見たことがあるかもしれない。設置の理由は、子どもや高齢者が歩行中に事故に遭うことが多いためだ。
内閣府が発表した「学齢別・状態別事故死者・重傷者数(平成23年~令和2年合計)」によると、未就学児の事故死者・重傷者3679人のうち、65.6%に当たる2415人が歩行中に死傷している。また、小学生の事故死者・重傷者1万1981人のうち、56.5%に当たる6770人が歩行中の事故で犠牲となった。
さらに、「状態別・年齢層別交通事故死者割合(令和2年)」によれば、歩行中に死亡した交通事故死者の74.2%が65歳以上で、そのうち75歳以上は55.0%に達している。
このように、子どもや高齢者が歩行中に事故で死亡する確率が高いため、ドライバーは特に注意して運転する必要がある。
こうした意識は、ドライバーに限らず地域住民にも広がっており、飛び出し注意の看板が増加している。しかし、市区町村ごとに設置のルールや方法に違いがあるようだ。
「飛び出し注意看板」の設置条件と背景
立命館大学の小川圭一氏による「飛び出し坊や」の設置状況と地域の道路形成に関する分析によれば、これらの看板は主に自治会やPTAなど、地域住民が自主的に設置したり、住民からの依頼を受けて地域の交通安全協会が設置することが多いという。
飛び出し注意看板は、警察署が設置するのではなく、地域団体である
・交通安全協会
・社会福祉協議会
・町内会
・自治会
などが自発的に設置する仕組みである。そのため、私有地への設置が基本であり、交通標識とは異なる設置基準が定められている。
また、市区町村によっては申請により無料で提供される場合もある。例えば岐阜市では、看板設置に必要な条件として「私有地への設置」と「所有者の許可取得」、さらに「看板の維持管理は申請者の責任」といった要件を満たした団体に対して交付される。
設置に一定の条件はあるが、飛び出し注意看板には子どもや高齢者を事故から守りたいという地域住民の強い思いが込められている。では、こうした看板が設置される背景とは何か。
急増する交通事故と地域の対応
東近江市観光協会のウェブサイトによると、飛び出し注意を訴える人型の注意看板は、日本の高度経済成長期に登場した。1960年代から1970年代にかけて、車の交通量が急増し、全国的に交通事故が増加した。この時期、経済成長にともなう都市化や工業化が進んだ一方で、道路整備や交通安全対策は遅れた。
内閣府の「令和5年度交通事故の状況及び交通安全施策の現況」によると、戦後から1960年代半ばにかけて、交通事故による負傷者数と死者数が急増した。1951(昭和26)年から1970年の間、負傷者数は3万1274人から98万1096人、死者数は4429人から1万6765人に増加した。この急増は、車社会の進展に対し、インフラ整備や安全技術が追いつかなかったことが原因だ。
この時期、交通安全のためのインフラ整備が急務だった。道路標識や信号機の設置が不十分で、道路自体の整備も遅れた。車両の安全技術も未発達で、事故を防ぐ技術革新は急務だった。しかし、車の利用は急速に拡大し、交通社会の変化が社会全体に大きな影響を与えた。地域ごとに積極的な取り組みが求められる状況となった。
特に子どもたちの飛び出し事故は深刻な問題だった。これを受けて、滋賀県旧八日市市(現在の東近江市)の社会福祉協議会は、「子どもの飛び出し事故を防ぐ方法はないか」と啓発活動を進めた。その結果、「とびだし坊や」が制作された。視覚的にわかりやすく、親しみやすいこの看板は、ドライバーに対して飛び出しの危険を喚起し、運転マナーを向上させた。
これらの看板設置は、地域社会における交通安全意識の向上を促し、事故の減少につながった。特に「とびだし坊や」のような地域主導の取り組みは、効果的な啓発活動として地域の安全性向上に寄与した。このような取り組みは、行政や警察の枠を超えた市民の自発的な参加によって実現され、社会的コストの削減に繋がった。
地域主導の看板設置と経済効率
交通事故による社会的コストの増加も無視できない。事故による死亡や負傷は医療費や保険金の増加、また生産性の低下を招き、社会全体に大きな経済的負担をかけていた。事故を未然に防ぐための予防的対策は、短期的には設置費用がかかるが、長期的には社会的コストを削減する経済的利益を生む。このような地域での積極的な安全対策は、社会全体の経済的効率を高めるための重要な手段となる。
「とびだし坊や」の設置は、地域住民の自発的な行動によるもので、公共の利益を最優先にした経済的に効率的な解決策として評価できる。自治体が支援する形で、看板が無料で提供されることもあり、これも経済的に合理的な選択だ。自治体が看板設置の費用を負担することで、交通事故の減少を促し、社会的コストを削減することができる。
結論として、1960年代から1970年代にかけての交通事故の急増に対して、地域主導で設置された「とびだし坊や」の看板は、経済的合理性に基づく予防策として非常に有効だった。今後も、地域社会の安全性向上と経済的効率性を両立させるためのモデルとなることが期待される。
看板に込められた地域の思い
子どもの安全を守るための「飛び出し注意」看板は、地域の自治体や住民の協力によって実現されている。
2023年9月15日発行の東近江市社会福祉協議会の「社協だより」では、飛び出し注意看板「とび太くん」の地域との密接な関係が紹介されていた。「赤い羽根共同募金ととび太くんの関係」によると、募金活動を通じて設置支援が行われ、17年間で約1200体の「とび太くん」が地域に設置されたという。
これにより、「とび太くん」の認知度が高まり、ドライバーは飛び出しの危険性を意識するようになった。また、看板を見た子どもたちには「飛び出しが危険である」という認識が深まる効果もあった。
一見シンプルな看板に思えるが、地域の交通安全に対する真摯な取り組みと協力が形になった結果だと考えると、その意義は大きい。
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みんなのコメント
普段どこに横断歩道があるかを認識させるためにはこう言うのは効果があるんじゃないのかな?