コンパクトカーと言うと、フィット、ヴィッツなど、いわゆる大衆車的な位置づけに最も近いカテゴリーなのか、親しみやすいモデルが多い気もする。
だが、一方で、人々を熱狂の渦に巻き込み、海千山千の自動車評論家たちをも唖然とさせるような「アメージング」なクルマが多いのも事実だ。
異端車とともに歩むカーライフ 愛すべき変態グルマたち 30選
ここでは、斎藤 聡、清水草一 二人の自動車評論家が、驚き、称賛し、ある意味呆れた歴代モデルを紹介してゆく。
■ラインナップ
・歴代モデル その速さに驚いた! …ホンダ シティターボII(1983年登場)
・歴代モデル ハンドリングが素晴らしかった! …トヨタ スターレット(KP61型・1978年登場)
・歴代モデル デザインが秀逸すぎた! …スズキ 3代目スイフト(2010年登場)
・歴代モデル 奇抜で驚いた! …マツダ レビュー(1990年登場)
●【画像ギャラリー】スターレットからスイフトまで!!! 評論家たちを(いろんな意味で)唸らせた歴代名モデルたちをギャラリーでチェック!!!
※本稿は2020年3月のものです
文:ベストカー編集部/写真:ベストカー編集部
初出:『ベストカー』 2020年4月10日号
■歴代モデル その速さに驚いた! …ホンダ シティターボII(1983年登場)
●加速性能もトルクステアも強烈だった!
(TEXT/斎藤 聡)
歴代のコンパクトカーを振り返ってみると、ビックリするくらい速いクルマが何台も登場している。考えてみれば、1980年代から1990年代にかけてコンパクトカーは日本のお家芸というくらい元気がよくバラエティに富んでいた。
そんななかで強烈なインパクトとともに記憶に残っているのが、爆発的な人気を博した初代シティをベースにこれをターボ化(インタークーラー付き)したシティターボIIだ。愛称ブルドック。
110psの1.2Lターボは典型的なドッカンターボでアクセルを踏み込むと唐突にターボパワーが炸裂し、文字どおりドッカーン! と加速した。
●ホンダ シティターボII(1983年登場)
実は3000回転以下で過給圧が10%アップするスクランブルブースト機能が付いていて、これが強烈な加速性能をさらにかさ上げしていたのだ。
トルクステアもバリバリでハンドル取られまくり。トラクションコントロールなんてない時代だからホイールスピンしまくりの暴れん坊。あの時の驚きは今も鮮明に覚えている。しつけがよく穏やかなクルマがいいクルマとされているけれど、面白さとは別の話。面白さを持った典型的なリトルギャングだった。
次点はマーチR。
低中回転域をスーパーチャージャーが、中高回転域をターボが担うツインチャージャーエンジンで、ラリーへの参加を考慮してターボ係数×1.7に合わせ、排気量を930ccにスケールダウン。これで1600cc以下クラスを戦った。
●次点:日産 マーチR(1988年登場)
■歴代モデル ハンドリングが素晴らしかった! …トヨタ スターレット(KP61型・1978年登場)
●あえて過去のクルマで選べばFRのKP61だ
(TEXT/斎藤 聡)
ハンドリングは、シャシー性能とタイヤの進化のたまもの。だから新しいほうがいいのだが、あえて過去のクルマを選ぶとすれば、KP61型スターレットを推す。
1980年代のトヨタ車といえば今はハチロクが脚光を浴びているが、KP61型スターレットも当時のトヨタを代表する名車のひとつ。排気量1.3L、最高出力わずか72ps(しかもグロス表示)。非力なエンジンを搭載していたが、だからこそFRスポーツモデルのエントリーカーとして価値があった。
飛びぬけて操縦性が優れていたというほどではないが、軽さは何よりの性能。機敏な走りは魅力的だったし、FRの操縦性を覚えるのにもうってつけだった。ラリーやレースに多く使われていたからチューニングパーツも豊富。ちょっと手を加えるだけでビックリするパフォーマンスを見せてくれた。
●トヨタ 2代目スターレット(KP61型・1978年登場)
操縦性と速さを併せ持った外せない現代のクルマがある。それはスイフトスポーツ。2代目のZC11S型も魅力だが、4代目の現行型はほとんどチューニングカーのレベル。
標準車に対しスポット溶接増し打ちを施しボディ剛性をアップ。サスペンションに至っては強化するだけでなく、わざわざリアトーションビームを専用に作り直しているほどのこだわりよう。
エンジンもK14C型ブースタージェットエンジンと呼ばれる1.4Lターボ(140ps/23.4kgm)を搭載。今最も刺激的なコンパクトカーの1台でもある。
●次点:スズキ 現行スイフトスポーツ(2017年登場)
■歴代モデルデザインが秀逸すぎたこの一台 …スズキ 3代目スイフト(2010年登場)
●傑作デザインはコンパクトに集中している!
(TEXT/清水草一)
これは迷った! 迷いに迷いましたよ。なにせ国産車のデザイン的傑作の多くがコンパクトカークラスに集中しているので。迷いに迷った末、ほかの項目との兼ね合いで先代スイフトを選びました。
先代スイフトは、とにかくお尻の造形がもの凄く魅力的で、リアスタイルを見てると、あの曲面に目が釘付けなんだよね、今でも!
あの豊かでしかもシンプルで奥の深い曲線……。自動車デザインヒップ大賞コンパクトカー部門があったら世界一にしたいくらいスバラシイ!
●スズキ 3代目スイフト(2010年登場)
といっても、「あのお尻だけでイイ!」というわけではありません。お尻だけ美しくてもダメに決まってますよね。先代スイフトはその他の部分も手堅く美しかった。
スイフトってよくレンタカーとか営業車にも使われてたでしょ。あんな美しいクルマをこんな風に使い倒してえーのか! と思うような高貴さがあったんだよ。
そう、スイフトの斜め後ろ姿は高貴そのもの! エレガントなの! 先代スイフトのお尻のことを思うとコーフンして鼻血が吹き出しそうだ。
次点は、迷いに迷った先代デミオの前期型です。先代デミオも本当にシンプルかつ美しく躍動感にあふれたデザインだった。
あと、2代目キューブも超絶よかったし、革命的なデザインだった。ただ、今見ると、ちょっと時間的耐久性が尽きた感じもあるので、キューブは次点の次点ということにします。
●次点:マツダ 3代目デミオ(2007年登場)
■歴代モデル 奇抜で驚いたこの一台 …マツダ レビュー(1990年登場)
●奇抜だけどよかったレビューのデザイン
(TEXT/清水草一)
いい意味で奇抜っていうことなら、2代目キューブがトップかもだけど、ここでは「珍しい」的な要素も必要かなと思い、あんまり売れなかったマツダレビューを選びました。
レビューは、当時としては非常に画期的なデザインだった。全高の高い、丸っこいフグみたいなフォルムは、女子ウケ狙いのカワイイデザインのように見えて、それをはるかに超えたユニバーサルな魅力があった!
フグみたいにふくらんでるけど、ちゃんとフォルムのバランスが取れていたし、居住空間も広くて、十二分に機能的だった。
●マツダ レビュー(1990年登場)
当時レビューのデザインについて、日本では「ふざけてる!」的な批判もされたけど、しっかり機能を満たした秀逸なデザインだったんだよ。でもやっぱり当時としては奇抜だった。まぁ私はその奇抜さに驚かず、「これはイイ!」と即座に見抜きましたけどね。フフ~。
レビューって、今見てもけっこうユニークでしょ? 特にちょこんとついたトランク部がなんともピースフル。それで前後のバランスがしっかり取れてるんだからステキ。
次点はやっぱりミラージュディンゴだな。最初に写真を見た時には吹き出した。「やっちまった~!」って。あの無意味なオーバーフェンダー、そして無意味なフロントマスクの造形。
当時は「どうしてわざわざこんなにカッコ悪く!」って思ったけど、今見るとそうでもないよね……。
●次点:三菱 ミラージュディンゴ(1999年登場)
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みんなのコメント
大切に今でも乗ってる人いたら、街中で目立つかも。