■ポルシェとフォルクスワーゲンは、創業直後から深い絆で結ばれていた
世界最高水準の技術を誇る老舗のスポーツカーメーカーといえば、多くの人はドイツのポルシェ社を思い浮かべるだろう。
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PORSCHE AG初の市販モデルは、1948年にオーストリアのグミュント村にあるポルシェ研究所で試作され、翌年春のジュネーブショーで鮮烈なデビューを飾った。いうまでもなく今でも20世紀のスポーツカーの名作と讃えられているポルシェ「356」である。
多くの人が知っているように、最初のポルシェ356は、フォルクスワーゲン(VW)製の369型水平対向4気筒OHVをベースにした1.1リッターエンジンをリアに搭載していた。
サスペンションもフォルクスワーゲンのタイプ1(ビートル=カブト虫)と同じトレーリングアームと、横置きトーションバースプリングの4輪独立懸架だ。そのためポルシェ356を生み出した父は、ポルシェを創業したフェルディナント・ポルシェ博士、そして母はフォルクスワーゲンと呼ぶ人が少なくないのである。
※ ※ ※
ポルシェとフォルクスワーゲンは、創業直後から深い絆で結ばれていた。
1931年、フェルディナント・ポルシェは後に356の開発を主導する息子のフェリー・ポルシェを誘い、ドイツのシュトゥトガルトにポルシェ設計事務所を設立している。
ポルシェ博士は、その3年後にドイツの首相に就任したナチ党総統のアドルフ・ヒトラーに依頼され、国民車の開発に着手した。これが後にカブト虫のニックネームで愛され、単一モデルとしては世界最多量産記録を打ち立てる20世紀の名車、フォルクスワーゲン・タイプ1だ。また、フォルクスワーゲンの基礎となるドイツ国民準備会社の設立にも尽力している。
ポルシェのコードネームを付けた最終プロトタイプは1938年に完成し、量産化に向けての準備が整いつつあった。だが、第二次世界大戦が勃発したため、民生用の量産化計画は先延ばしになっている。
第二次世界大戦後、ポルシェ博士が心血を注いだ1945年秋にフォルクスワーゲンの工場を管理するイギリス軍の指導のもと、生産が開始され、栄光への第一歩を踏み出すのである。
ポルシェ博士は、国民車の設計をおこなっているときから、もうひとつの夢を持っていた。この国民車のエンジンやサスペンション、ステアリングギアなどのパーツを用いたスポーツカーの開発だ。
だが、終戦後にポルシェ博士はフランス軍に逮捕されてしまった。ナチスに協力して戦車や軍事車両の開発をおこなった戦犯と考えられたからである。2年にわたる収容所生活の間、このスポーツカー構想を推し進めたのは、息子のフェリー・ポルシェとアウストロ・ダイムラー時代から有能な助手と見込まれていたカール・ラーベだ。
ポルシェ博士は、釈放されるとポルシェ356の細部の煮詰めについてふたりにアドバイスし、市販に向けて手直しをおこなった。
■かつてはポルシェ家とピエヒ家の争いもあった
そしてポルシェ356の量産化の目処がついた1948年に、国営企業だったフォルクスワーゲンと業務提携を、続いて技術コンサルタント契約も結んでいる。この取り決めは、それ以降の両社に大きなメリットをもたらすことになった。この契約は、原則的に今日まで継続して施行されている。
その骨子は大きく分けると4つだ。
1:これから先、ポルシェはVWと競合する車種を他メーカーのために設計しない。
2:VWはポルシェの持つパテントを自由に使うことができるが、その代わり生産されたVW1台ごとに定額のロイヤリティ(特許使用料)を支払う。
3:ポルシェはVWのパーツを利用して自由にスポーツカーを製作することができる。
4:ポルシェは自由にVWの販売網とサービス網を利用できる。
フォルクスワーゲンからの安定したパーツの供給やヨーロッパ全土を網羅した販売店とサービス網を使えることに加え、ロイヤリティまでも受け取れたことは、初めてスポーツカーを送り出すポルシェに多くのメリットをもたらした。
ポルシェ博士は息子のフェリーにポルシェ社を任せ、娘のルイーゼは博士のビジネスパートナーだった弁護士のアントン・ピエヒと結婚し、ポルシェ持ち株有限会社を創設する。ちなみにふたりの間に生まれたのが、後にフォルクスワーゲンの社長とVWグループの取締役会会長にのし上がり、辣腕を振るうフェルディナント・カール・ピエヒだ。
フォルクスワーゲンは1960年に民営化されたが、議決権を持つポルシェ家とポルシェ家の女系であるピエヒ家は、その後も筆頭株主としてフォルクスワーゲングループを支配し続けている。
ポルシェ社との契約から誕生した名作は少なくない。その筆頭がミッドシップのポルシェ「914」だ。また、グループ企業のアウディのパーツを使ってポルシェ「924」も生み出された。今世紀になってからもタッグを組んで「カイエン」や「マカン」などの高性能SUVを誕生させている。
ポルシェ家系とピエヒ家系による同族統治はうまく機能し、ポルシェはフォルクスワーゲンの親会社として高い利益率を誇っていた。
だが、21世紀になってポルシェ家とピエヒ家の間で権力闘争が起こり、ポルシェとフォルクスワーゲンのどちらが支配権を持つかで争うようになる。この買収劇は両社が経営統合し、ポルシェがフォルクスワーゲンの合弁子会社になる形で決着した。
新たな持ち株会社を設立して再スタートを切ったが、今もポルシェ家はフォルクスワーゲンの役員に名を連ねている。だから、今後も両社の関係が大きく変わることはないだろう。
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みんなのコメント
あの音質は、ベンツやBMとは違う。
ゴルフとポルシェは親戚なんだと思う。