2021年1月28日に発売された新型PCXシリーズ。今回は、原付二種(124cc)の「PCX」を通勤や買い物で約2週間使用した感想をお伝えします!
ホンダ「PCX」2021年モデル 通勤インプレ
上質感がグッとアップした新型PCX
あれは中学生の頃だろうか。初めてなめらかタイプのプリンを食べたのは……。あのときの感動と似たものをPCXに乗りながら感じています──。
新型PCXに初試乗したのは、2020年末に行なわれたプレス向け試乗会でした。そのときの感想を大雑把にいうと、軽い! 速い! 止まる!
新型は先代モデルと比べると、圧倒的にキビキビしていて、とくに出足の速さが光ります。信号待ちでは、隣にバイクが並んでくるのがひとつの楽しみに。競うわけではないけれど、50m走なら大型バイクにもおいていかれません。
テスター・太田安治さんが行なったクローズドコースでの実測検証によると、0-100mのタイムが7.322秒。100m地点での速度は70.71km/hという結果に。公道だったら、信号が青になった瞬間フルスロットルにしたら7秒ほどで法定速度オーバーですね。汗
同時に制動力もグッと強化されました。新型は初めてリアにディスクブレーキを採用。フロントのディスクブレーキにはABSも標準装備しています。
スロットルを開ける、戻す、ブレーキを握る。幹線道路をスクーターで走るとほとんどこの連続ですよね。加速・減速の基本性能が大幅にレベルアップした印象です。
僕がPCXとの通勤ライフを過ごした期間は2週間ちょっと。片道約7kmの通勤と仕事での移動、スーパーへの買い物などで利用していました。続けて10km以上はほぼ乗らない、街乗りオンリーです。
さて、冒頭のなめらかプリンの話に戻ります。PCXでの通勤生活が始まって3日目のこと。「あれ、この道ってこんなに舗装が綺麗だったっけ? なんて、なめらかなんだ!」と違和感を抱きました。
持ち前のキビキビ感が身体に馴染んできて、PCXで走るのがあたりまえの日常になったとき、初めて振動や衝撃が異様に少ないことに気づいたのです。
新型PCXは、エンジンとフレームを新設計したフルモデルチェンジ。さらに日本の原付二種で初めてトラクションコントロールを採用。リアブレーキはディスクに。
そしてもうひとつ大きな変更点があります。リアタイヤが以前の14インチから13インチにサイズダウンしました。それなのに、なめらかさ、上質さがすこぶる向上しています。なぜ?
13インチにした分、リアサスペンションのストローク量は10mmアップし95mmとなりました。さらにタイヤはワイドなものに変更、エアボリュームも増やしています。これらの効果で、タイヤサイズを落としながらも従来モデル以上のクッション性を得たのです。
大きな段差ではそれなりに衝撃を受けます。車体が吸収してくれるのは、見えないくらいの小さな段差。普通の舗装路が新しくできた道のように感じるのです。
50cc~125ccは、バタバタと「頑張って走るもの」という認識が自分の中にありましたが、新型PCXの乗り心地は高級車と呼ぶにふさわしいもの。高級セダンでアクセルを踏んだときの気持ちよさにも似ています。
振動を抑えるという点では、この新型PCXでは、「ラバーマウント構造ハンドルホルダー」を採用したことも大きいでしょう。
バーハンドルを留めているホルダーの下部にラバーの緩衝材が備わっています。これにより「手元に伝わる不快な振動を軽減した」とのこと。原付にはあるあるなアイドリング時や加速時の気持ち悪い微振動がカットされています。
新型PCXのスタイリングに関してホンダの開発チームは下記のように伝えています。
水上を悠々と疾走するパワークルーザーのような水平基調で伸びやかなプロポーションと、シンプルでエレガントなサーフェースの表情、ダイナミックな流れを感じさせるエッジラインを合わせることで、PCXが醸し出すワンクラス上の上質さを直感できるスタイリングデザインとしました。
僕はパワークルーザーに乗ったことがありませんが、道路の上をなめらかにかつ力強く走る感覚は、ちょっとジェット船に似ているかも、と思った次第です。
外観は開発チームが語る通り、スタイリッシュで、鋭い仕上がりに。これまでPCXというと、とくに白色は卵を横にしたような丸みのある可愛らしさが個人的には特徴だと思っていました。新型はキリっとしていて、イケメン感が漂っています。
性能の大幅な進化に合わせて、それを表現するかのように一新したスタイリング。乗れば乗るほど、外見と中身が絶妙にマッチしていると思うばかり。
125ccのスクーターは、通勤通学・買い物などで活躍し「普段の足」なんて言われることもあります。けれどPCXの場合は、明らかにそれだけではありませんね。
とくに新型は、「これでいいや」じゃなく「これがいいんだ!」と強い意志を持った人に選ばれる一台でしょう。クラス最高峰の装備もさることながら、所有欲を満たしてくれるという点において、これまでの原付二種の枠を完全に飛び出していると僕は思います。
ホンダ「PCX」2021年モデルのいいところ【使い勝手をレビュー】
シート下収納スペースの容量アップ
スクーターの大きな魅力はシート下の収納スペース。容量は従来の28Lから30Lにアップしました。ヘルメットとレインスーツとグローブが余裕で入ります。
西野は通勤中に入れていたものは、カバンとレインスーツと荷物が増えたときに使うストレッチコード。帰り道にスーパーに寄ったときは、カバンは肩にかけて食材を中に入れていました。
ヘルメットホルダーは2カ所
シート下収納スペースに荷物をぱんぱんに入れていても安心。シート下の前方にある突起にヘルメットを引っかけることができます。シートを閉じれば、ロック完了。左右に計2つ付いているのが嬉しいですね。
フロントインナーボックスに電源ソケット
これがあるかないかで、便利さは大きく変わりますよね。PCXは、500mlペットボトルがぴったり入る形状となっています。
そして、電源ソケットを標準装備しています。しかも「USBタイプC」ソケットを新採用。これまではシガーソケットタイプが一般的でしたが、あれって変換アダプターを噛ませなくてはいけないので、けっこう使いにくいんですよね。
「USBタイプC」のケーブルを買えば、ダイレクトに使えます。給電はイグニッションがオンになっているときしかされません。
スマートキーがものすごく便利
PCXに「Honda SMART Keyシステム」が採用されたのは、先代の2018年モデルから。当然新型にも備わっています。キーをポケットに入れているだけでイグニッションのオンオフやシートの解錠ができるのは本当にラクです。
とくに原付二種は、普段から頻繁に利用して、乗ったり降りたりする機会が多いので、ありがたさを常々感じます。
給油口のキャップ置き場を新装備
給油口も鍵を使わずスマートキーを携帯していればボタンひとつで開けられます。新型PCXシリーズの給油口には、新たなアイデアが採用されました。キャップを置けるのです!
こういったアイデアや知恵で生まれた装備は、昭和生まれの僕も非常に親しみを感じます。実際にこれはかなり便利でした。
給油をして、ひとつ残念だったのは、先代モデルやADV150と同様、給油量が見えにくいことです。足元に燃料タンクが備わっている車両の宿命かもしれませんが、これもいつか知恵で解消してくれることを祈っています。
ガソリンスタンドの店員さん困っちゃうんですよね。給油量も人にまかせるとまちまちになるので、PCXシリーズに給油をする際はなるべくセルフのスタンドを選んでいます。
気になる燃費と航続可能距離は?
通勤生活では、東京都心を215km走りました。西野の体重は80kg。デジタルメーターが表示した平均燃費は、36.7km/Lという数値に。
215kmを走ったときにメーター残量が1個になったので給油を行なったのですが、給油量は6.1L。計算上は35.2km/Lとなりますが、ちょっとギリギリまで入れすぎたのかもしれません。最近のホンダの燃費計は、実測との誤差がほとんどない印象です。
燃料タンク容量は8.1L。従来モデルは8.0Lだったので少し増えたのでしょう。平均燃費35km/Lで計算しても航続可能距離は35km×8.1L=283.5kmとなります。
目盛りが最後の一個になった瞬間は、2L程度まだ残っているようです。街乗りでは、目盛りが残りひとつになったらガソリンスタンドを探すくらいの気持ちで全然OK!
ちなみにその後、燃費を意識して普段の通勤路を数往復したら、40km越えの数値を出すこともできました。同じ道でもスロットルの開閉を意識するだけでだいぶ変わるようです。
アイドリングストップが標準装備
アイドリングストップ・システムは、初代の2010年モデルから備わる好評の装備。エンジンが充分に温まったのち、信号待ちなどで停止するとストンと落ちます。再度発進するときはスロットルをひねればスタート。クルマのアイドリングストップと同じですね。
ただ、ホンダのアイドリングストップ・システムは、年々進化を遂げている印象を受けます。初期のころは、再発進する際もたもたして、ややストレスがたまりました。いまでは、スムーズに発進でき、後続車に迷惑はかかりません。
灯火類はフルLED、ポジションランプがおしゃれ
PCXはフルLED化されたのが早く、2014年モデルから採用されています。明るさもさることながら個人的には、ウインカーの切れのよさがLEDだとパシッパシッと気持ちよくて好き。
新型PCXでは、ポジションランプをフォローするように5本のラインがかっこよくあしらわれています。どことなくホンダのウイングマークのようにも見えておしゃれ。新型PCXのフロントフェイスがキリっとした顔立ちに見えるのには、この5本のラインが大きく貢献していると思います。
トラクションコントロールを初採用
「トラクションコントロール」とは、滑りやすい路面で後輪がスリップした際にセンサーで検知し、空転するのを抑制するハイテク機構。大型のアドベンチャーバイクやスポーツモデルから搭載されはじめ、いまではABSとともに大型バイクの定番装備といえそうです。
しかし原付二種のコミューターであるPCXに採用されたのには驚きました。日本メーカーの原付二種では初の採用となります。
西野がPCXで通勤ライフを過ごしていた約2週間の間、雨が降っていた日は一度だけありました。実際に作動を体感することはなかったのですが、備わっているということが大きな安心感につながります。
ちなみにホンダのトラクションコントロールは、「Honda セレクタブル トルク コントロール」(HSTC)という名称で、トラクションコントロールのオンとオフが選択可能。機種によっては介入レベルを数段階調整できます。
通勤など日常利用の時は、とりあえずオンの状態にしておけばいいでしょう。PCXの場合は、オフにしておいた方がいいシーンというのはちょっと思い当たりません。ツーリング中に出くわした未舗装路でも支えとなってくれるはずです。
シート高は764mm、足つきチェック!
シート高は2018年モデルの764mmから変更はありません。コミューターとして安心の足つき性です。
身長175cm・体重80kg(短足ぎみ・脚太い)の西野の場合、かかとのある靴なら、両足べったり接地します。ソールがフラットなスニーカーの場合は、少しだけかかとが浮きました。それでも跨ったまま余裕で動かせます。
シート高764mmという数値は、このサイズのボディなら標準的。コンパクトなリード125とDio110は760mm。250ccのフォルツァは780mm。オフロードの走破性も考慮したADV150は795mmとなっています。
フットボードの形状が変更された
走行時に足を置く部分のフロアの形状も2018年モデルから変更されています。ボディ全体がスタイリッシュになったのに合わせて鋭さを持ったデザインに。
メーターは大型に。ウインカー表示が目立つ
新しいデジタルメーターはとても見やすいデザイン。常時表示されているのは、速度計、燃料計、時計。総走行距離計、トリップメーター、トラクションコントロールの設定画面は、ボタン操作で切り替え表示できます。
西野が個人的に好きなポイント
最後に好みの話をちょこっとさせてください。昔からPCXで好きだったのが、この部分。足元を覆うように張り出しています。造形がグラマラスなんですよね。この曲線にはかなりこだわっている印象を受けます。
「神は細部に宿る」なんて言葉がありますが、見れば見るほど、新型PCXは特別なバイクだということ、ホンダがとても大切にしているモデルであることがよく分かるモデルだと思います!
[ アルバム : 【本編には載せていないいろいろな写真 16枚】 はオリジナルサイトでご覧ください ]
ホンダ「PCX」2021年モデルの主なスペック・価格
[ 表が省略されました。オリジナルサイトでご覧ください ]
文:西野鉄兵/写真:西野鉄兵、岩瀬孝昌、福田 稔
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