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ポルシェ ボクスターは981型でもスポーツカーのお手本だった【10年ひと昔の新車】

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ポルシェ ボクスターは981型でもスポーツカーのお手本だった【10年ひと昔の新車】

2012年1月、3代目となるポルシェ ボクスター(981型)が世界初公開されて大きな注目を集めた。その進化とはどういうものだったのか。今回は2012年3月に南仏サントロペで開催された国際試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2012年5月号より)

タイヤが四隅に張り出してワイド&ローに
911に遅れること半年、ボクスターも新世代へと切り替わった。型式は987型から981型になった。なぜ988型ではないのかという疑問が湧くが、これは997型が991型になった911と同じこと。要は大幅にバージョンアップしたからと理解すればよい。そして991型911の評判がいいだけに、981型ボクスターへの期待は高まった。新しいモデルに乗れるというときは、いつでもわくわくするものだが、今回はとくにその度合いが強かった。

ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか

国際試乗会は南仏のサントロペで行われた。幸いにして天候は晴れ、気温もそこそこ高く、オープンモデルに乗るには絶好のコンディションだった。事前の説明会でその概容は掴んでおり、それなりのチェックポイントを頭に入れて、試乗車のあるところへ向かったが、ひと目見るなり少々興奮気味になり、その項目は頭の中から飛んでいってしまった。とにかく「かっこいい」のだ。今月はレンジローバーイヴォークの取材もあり、「やっぱりクルマはかっこだな」なんて思っていたのだが、ニューボクスターとの初対面でも、その思いを強くした。

スタイリッシュであることを数字で補足説明するのは少々野暮ではあるが、参考のために申し上げると、従来モデルより全長が32mm伸び、全高は13mm低くなった。そしてホイールベースは60mm長くなり、フロントオーバーハングは27mm短くなっている。さらに全幅は変わらないのだが、トレッドは前が40mm、後が18mm拡大されている。

簡単に言ってしまえば、タイヤが四隅に張り出してワイド&ローになったということだが、これが実に精悍でかっこいい。試乗車はすべてオプションの20インチホイールを装着していたことも見た目の印象をよくした一因ではあるが、エクステリアの出来映えは見事だ。従来モデルとの比較で言えば、とくにリアコンビランプ周辺の造形が洗練されたと思う。さらに真横から見るとわかりやすいが、フロントウインドウの立ち上がり位置が100mm前方へ移動したことも伸びやかな印象を与えることに貢献している。

軽快であり乗り心地もいい、PDKの進化ぶりも印象的
さて、美しいものはその心も清らかであるというのが人間なら、かっこいいクルマは走りもよいというのが定説である。もちろん例外はあるものだが、今回はどうだろうか。まず試乗したのはボクスター。2.7Lで265ps を発揮するニューエンジンを搭載し、オプションのスポーツクロノパッケージ、PASM装着車で、トランスミッションは7速PDKだ。

このニューエンジンはボクスターSの3.4Lをボア、ストロークともに短くしたもので直噴だ。出力は従来型のボクスターが搭載していた2.9Lエンジンより最高出力は10ps高265psで、最大トルクは10Nm少ない280Nmとなっている。ニューエンジン搭載の目的はもちろん省燃費だ。オートスタート/ストップ機能を組み合わせ、PDKで燃費は従来比15.4%も良くなっている。

ドライバーズシートに座ると、ミッドシップスポーツらしい適度なタイト感が心地いい。しかし足下スペースは拡大されており窮屈ではないので、長距離走行でも疲れは少ないようだ。そもそもホイールベースを伸ばした理由は「キャビンの快適性向上が第一の目的だった」と、チーフエンジニアのビッドマイヤー氏は語る。さらに991型911でホイールベースを伸ばしたのも第一の理由は同じで、その値を100mmにしたのは直進安定性の向上にも配慮したためだそうだ。一方のボクスターは60mmの延長で収めたわけだが、これはアジリティ確保とのせめぎ合いの結果であると教えてくれた。

ハンドルに手をかけて前方を見ると、全高が低くなったにもかかわらず視界はきわめて良好だ。前にエンジンがないことのメリットだと改めて感じる。インパネまわりは最新ポルシェの流儀に沿ったもので、センターコンソール前方から手前にかけて緩やかに傾斜した部分にシフトレバーと各スイッチ類を配置する。カイエン、パナメーラからこのボクスターに至るまで共通性を感じさせる誂えになった。スポーティでありながらラグジュアリー性も合わせ持ついいデザインだ。

走り出してまず感じるのは軽快であるということ。それでいて、しっとりとしなやかで乗り心地がいい。20インチのホイールとピレリPゼロを見事に履きこなしている。さらにPDKの進化ぶりも印象的だ。変速スピードが従来より速くなっているにもかかわらず滑らかなのだ。オプション装着されていたパドルでPDKを操作してみると、そのパドルのフィーリングがまたよい。オン、オフがはっきりしたデジタルフィーリングではなく、手応えがアナログ的にまるでグラデーションがかかったように変わっていくのだ。クルマの高級感とか品質感は、こうした操作系ひとつひとつの良い感触の積み重ねで高まっていくものだ。そうした意味合いでもニューボクスターは、「お見事」である。

次に報告したいのはボディ剛性の高さだ。ひと昔前はいかなるプレミアムブランドであれ、オープンモデルにボディ剛性の高さは望むべくもなく、純粋に走りを楽しみたいなら、カブリオレなど選んではいけないという人が多かった。ところがこれはもう「昔の常識は今の非常識」と言っていいだろう。ボクスターの全体的な走りのクオリティは、ボディ剛性の高さを頼りにサスペンションがいい仕事をすることで生まれているものだ。

さて、試乗コースは海沿いの一般道から高速道路に入る。ここで説明しておきたいのがコースティング機能だ。ニュー911にも採用されているもので、走行中、一定の条件を満たすとクラッチが切れエンジン回転が落ち、クルマはそのまま惰性で走行して燃費を稼ぐというものだ。高速道路を巡航しているときなどはコースティングに入りやすい。

ビッドマイヤー氏によれば、PDKの場合、基本的にどのギアでもコースティングに入れることはできるという。巡航時にゆっくりとアクセルペダルから足を離せばよいそうだ。このシステムの作動のさせ方については、エンジニアの間で議論が白熱したとのこと。確かにスポーツ走行をしているときは、アクセルペダルから足を離すのも早い。このシステム作動のルールを知らずに試乗していたが、違和感はまったくなかったので、これは正解だろう。なお、強制的にコースティングに入れる方法もある。巡航時、シフトアップ側のパドルを2回続けて押してやればよい。7速に入っているときは、1回押せばコースティング状態になる。

3.4LのボクスターSはさらに奥行きのある走り
高速道路を下りてワインディングロードへと入っていく。このあたりの道幅はあまり広くないので、飛ばそうという気にはならない。と言うか、飛ばさなくても気持ちいいので、飛ばす必要がない。そして、ゆったりとワインディングロードを走っていると感じるのは、俊敏性と直進安定性のバランスの良さだ。ホイールベース延長の着地点がいい、ということだろう。また、コーナーを回るときは、ミッドシップらしくバランスよく旋回しつつリアタイヤへ確かなトラクションがかかることが、ハンドルから手に、そしてシートから体に伝わってきて楽しい。

そして、道幅が広くなるとともに、少し速度を上げていくと、ボクスターはさらに活き活きとしてくるのだが、そこで感じるのは重心の低さだ。全高は13mm下がっているが、重心は7mm下がったという。わずかな値のように思われるかも知れないが、この重心の低下によりコーナリングの安定感は確実に増しているはずだ。

また、ステアリングフィールについても報告しておかなくてはならない。この981型から燃費向上のために電動パワーステアリングを採用しているのだが、仕上がりはかなりいい。路面からの情報を確実にステアリングホイールを握った手に伝えてくる。路面と手の間にモーターで雑情報を入れ込んでしまうことはなく、実にピュアなフィーリングだ。

さらにスポーツクロノパッケージを装着していたので、スポーツプラスモードを試してみたが、相変わらずこれの効果は素晴らしい。「戦闘モード突入」といった感じで、あらゆる部分でクルマの性格がワンランク、獰猛になる。しかし、基本的な性格は変わるわけではないので違和感なく、ドライバーはすぐにそのモードに馴染める。また、このモデルからスポーツクロノパッケージにはダイナミックトランスミッションマウントが組み合わされることになった。エンジン/トランスミッションユニットはボディ3カ所で固定されているが、そのマウントの減衰特性を走行条件によって変化させるものだ。その結果、通常走行時には快適性を確保しながら、スポーツ走行時にはパワーユニットとボディの間に生じる振動を抑え、クルマを安定させることができる。実際の効果はサーキット走行でもすればよくわかるのだろうが、一般路を走っても、その片鱗は感じることができた。

ボクスターの試乗を終え、次に315psの3.4Lエンジンを搭載するボクスターSのハンドルを握った。これもオプションのスポーツクロノパッケージ、PASM装着車で、トランスミッションは7速PDKだ。誌面が尽きてきてしまったが、正直な感想は「知らなければよかった」というものだ。ボクスターも十二分に魅力的でよいのだが、やはりプラス50ps/80Nmの効果は大きい。ボクスターSにはあらゆる面で余裕があり、それがより高いレベルの快適性を生み、さらにより深みのあるスポーツ性を実現している。

ボクスターとボクスターS、期待どおりの出来映えだった。日本における価格発表はまもなく、デリバリー開始は夏になるそうだ。国内でまた、じっくりと乗ってみたい。(文:Motor Magazine編集部)

ポルシェ ボクスター 主要諸元
●全長×全幅×全高:4374×1801×1282mm
●ホイールベース:2475mm
●車両重量:1415kg
●エンジン:対6DOHC
●排気量:2706cc
●最高出力:195kW(256ps)/6700rpm
●最大トルク:280Nm/4500-6500rpm
●トランスミッション:7速DCT(PDK)
●駆動方式:MR
●最高速:262km/h
●0→100km/h加速:5.7秒
※EU準拠

文:Webモーターマガジン Webモーターマガジン編集部
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