■日産が放ったプレミアムミニバンの嚆矢
2025年4月、日産はいよいよLクラスミニバン「エルグランド」の次期モデル発表を明らかにしました。初代から数えて4代目となります。
【画像】超カッコいい! これが日産「高級ミニバン」の「“純正”車中泊」仕様です! 画像で見る(30枚以上)
のちに強力なライバルとなる「アルファード/ヴェルファイア」を生み出すほど、ミニバン市場に大きなインパクトを与えた初代エルグランドですが、今以上に多彩なバリエーションを誇っていました。
なかでも、大人と子どもあわせて4人が就寝可能な純正キャンパー仕様「フィールドベース」は、車中泊ブームが再燃するいま、あらためて注目のモデルです。
2025年4月22日、日産は日産グローバルギャラリーで開催した「NISSAN START AGAIN 2025」で、2026年度にかけ新型車4車種を発表する計画を明らかにしました。
そのひとつに新型「エルグランド」が含まれており、しかもデザインの一部がティザー公開されたこともあって大きな話題を呼んでいます。
高級大型(Lクラス)ミニバンの初代エルグランド(E50型)は、販売店に合わせて「キャラバン・エルグランド(ローレル販売会社向け)」「ホーミー・エルグランド(スカイライン販売会社向け)」という2つの車名を持って1997年に登場しました。
それまでも日産は高級な箱型ワゴンとして、1BOX商用バンの「キャラバン」「ホーミー」(E24型)を1BOXワゴン化した「コーチ」を販売していましたが、エルグランドは商用モデルの乗用化ではなく、フロントに小さなノーズを持つミニバンスタイルを採用。
4.7mを超える全長、1.8mに迫る全幅の3ナンバー専用ボディは当時では大きな部類で、フロントに上下2段式の灯火類と派手目な大型グリルを、リアにはワイド感を強調するテールライトやガーニッシュを装着して、迫力と高級感を持つ外観を作り上げていました。
このエクステリアに負けじと、インテリアも上質かつ高級感を追求していました。
フラットなフロアには7人/8人が乗車できる3列シートを装備。大型車体によって車内は広く、3列目シートも十分な空間と座り心地を提供していました。
一方で、キャラバン/ホーミーコーチ譲りの多彩なシートアレンジはしっかり継承しており、高いユーティリティも有していたのです。
駆動方式はFR(後輪駆動)を基本に4WDも設定。運転席・助手席下にエンジンを載せる1BOXワゴンと異なり、エンジンをボンネット下に収めたことによって車内へ入るノイズの低減も図られたほか、ステアリングホイールを抱え込むようなドライビングポジションだったキャラバン/ホーミーに対し、ごく自然な姿勢で運転することもできました。
初代エルグランドではパワーユニットにも注目が集まりました。デビュー時は最高出力170psを誇る3.3リッターの「VG33E」型と、インタークーラー付きターボで最高出力150psをマークしたディーゼルエンジン「QD32ETi」型を搭載。
約2tの重い車体を走らせるには充分で、多人数乗車で威力を発揮しました。
キャラバン/ホーミーコーチ時代にも、1BOXワゴンでは稀有な存在だった最高出力155psを発生する3リッターV6を積んでいましたが、ベースが商用バンゆえ、動力性能に対して足回りが追いついていませんでした。
そこでエルグランドでは操縦性の改善が図られていました。
■ライバルのグランビアに圧勝
3ナンバーサイズの大型ミニバンという観点では、トヨタが1995年に「グランビア」を先行して発売していましたが、同車は海外向けのセミキャブオーバー型商用バンの「ハイエース」(XH10系)の車体を利用していたことから、乗用専用のプレミアムミニバンのパイオニアはエルグランドである、といえます。
ちなみにトヨタは、グランビアの5ナンバーサイズ兄弟車として設定された「ハイエース・レジアス/レジアス」では、日本国内でも商用バンの「ハイエースレジアス/レジアスバン」を販売していました。
発売時のエルグランド最上位グレード「X」のガソリン・4WDモデルは400万円に迫る高価格車でしたが、日本に高級大型ミニバンという新しいジャンルを生み出したエルグランドの販売は絶好調。
多い時には月に約1.5万台も売れました。
これを見たライバルのグランビアは、1998年に「5VZ-FE」型3.4リッターV6エンジン(エルグランドより10PS高出力)を追加、1999年にフロントマスクを派手に再整形して追撃。よりアクの強いグリルが与えられた、トヨペット店向け兄弟車「グランド・ハイエース」もリリースしましたが、それでもエルグランドの牙城を崩すことはできませんでした。
さらにエルグランドは追い打ちをかけるように、1999年にディーゼルエンジンを3リッターDOHCターボの「ZD30DDTi」に、2000年にはガソリンエンジンを3.5リッターDOHCの「VQ35DE」に換装。それぞれ最高出力は170ps /240psへと向上しており、エルグランドの人気をさらに高めました。
一方、エルグランドに負けたトヨタは、2002年に初代「アルファード」を発売。ほぼ同時期に2代目にフルモデルチェンジしたエルグランドの販売台数を圧倒して雪辱を果たしています。
■多彩なバリエーション展開! なかには純正「キャンパー」仕様も!?
そんな初代エルグランドには「ハイウェイスター」「ライダー」「ロイヤルライン」(のちの「VIP」)「アンシャンテ」などのさまざまなカスタムモデルや特別仕様車、福祉車両などが矢継ぎ早に販売され、これも同車の人気を後押ししました。
そのなかでも、登場直後に発売された「フィールドベース」は、今こそ再注目したい特別仕様車といえます。
フィールドベースは、オーテックジャパン(現・NMC)が架装したキャンピングカーです。
外観はほぼノーマルのまま。中堅グレード「V」の3.3リッターガソリンモデルがベースで、2WDと4WDの両方を設定していました。
2列目・3列目シートを倒した上にベッドボードを載せて作る下段ベッドには大人2名、天井から吊り下げて設置する長さ1.6mの吊り下げ式上段ベッドには子供2人の就寝が可能。
車体後部に設置されたボックスには、調理台付きシンクとコンロ、および収納スペースをシステマチックに組み込んでいます。
オプションとして、夜間車中泊時のプライバシーを守るフロントカーテン、夏の夜には必須の網戸(モスキートネット)、積載力をアップさせるヘビーデューティーラック&サイトタープなども用意されていました。
当時のカタログには「ゆとりあるベッドルームと機能的なキッチン設備で家族や仲間との時間が待ち遠しくなります」と記されています。
発売から27年が経った現在もなおワクワクさせてくれる一台です。
※ ※ ※
圧倒的な強さを見せた初代エルグランドは、こうして見返してみても今なお強い魅力を放っています。
しかし2代目以降はアルファード/ヴェルファイアの後塵を拝し続けており、3代目モデルは2010年の発売以来、長らくモデルチェンジも行われていません。
そんな中、ついに登場する次期モデルは、初代のようなインパクトを市場に与え、アルファード/ヴェルファイアに一矢報いるモデルであって欲しいと思うのは筆者(遠藤イヅル)だけでしょうか。登場の日を楽しみに待ちたいと思います。
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