恒例ノーウエイトの真っ向勝負が繰り広げられる2023年のスーパーGT最終戦、モビリティリゾートもてぎのGT500クラス公式予選は、午前の好調さを持ち越しQ1担当の高星明誠とQ2を担当した千代勝正がともに最速タイムを刻むなど、初タイトルへの気迫を感じさせるアタックを決めた3号車Niterra MOTUL Zがセッションを完全制覇。選手権首位の36号車au TOM'S GR Supraも、その背後となる2列目3番手に飛び込み、今季最後の300km戦に向け直接対決の構図が整った。
年間全8戦のうち実に5戦で、長丁場の450kmを戦って来たシーズンもいよいよフィナーレのときを迎える。昨季に続き11月初旬のもてぎが決着の舞台となるが、この週末も記録的猛暑に見舞われた今季を象徴するかのように、金曜搬入日から気温25度越えの夏日となった。
しかし予報に反し、走行開始の土曜早朝は天候が一転。もてぎのみならず栃木県の宇都宮市近郊から隣県茨城の水戸市までが濃い霧とモヤに覆われ、早朝サポートレースでも視界不良によるディレイが発生するなど、最終決戦に向け波乱を予感させる幕開けとなる。
その影響も受け、午前9時25分開始の公式練習は気温15度、路面温度は18度という本来のこの時期らしい条件で始まったが、霧雨に濡れたトラックもセッション進行とともに日差しが戻り、午前10時50分からのGT300クラス占有走行枠を前に気温は23度、路面温度も28度と、温度条件の面でも約10度近い上昇をみせる。
その占有枠の予選シミュレーションでは、混走時間帯から長く首位を維持した17号車Astemo NSX-GTを上回り、逆転タイトル獲得に燃える3号車Niterra MOTUL Z(62pt)が最速タイムを刻み、午後の予選に向け盤石の準備を整える。一方、選手権リーダーで臨む36号車au TOM'S GR Supra(69pt)も3番手に飛び込み、同じくタイトル獲得の可能性を残すランキング3位の16号車ARTA MUGEN NSX-GT(53pt)は5番手に続くなど、各候補が一歩も譲らない姿勢を示す。
■Q1:ランキング3位の16号車がQ1敗退
GT300のQ1A組開始となる14時20分時点で、気温は23度、路面温度は29度とほぼ横ばいのコンディションが維持された。ここで確実に1点を加算すべくポールポジションが欲しいクルマと、ライバルのQ2進出を1台でも阻むべくQ1で上位を固めたい陣営と、それぞれの思惑が入り乱れての勝負が始まる。
そのまま定刻14時53分にGT500がコースオープンになると、まずダンロップタイヤ装着の64号車Modulo NSX-GTを先頭に、37号車Deloitte TOM'S GR Supra、少し間を置きポール獲得が至上命題の16号車ARTAとなる大津弘樹が早めにコースへ向かう。
セッション開始2分を過ぎ、36号車au TOM'Sの“新スーパーフォーミュラ・チャンピオン”宮田莉朋と、3号車Niterraの高星明誠も前後してピットを離れ、残り6分20秒でトラックインした14号車ENEOS X PRIME GR Supraの山下健太を最後に、全15台がタイヤグリップ発動に向けたウォームアップを進めていく。
各車計測4周目が本格的なアタックラップ開始になると、まずは“GT最速男”のフィナーレを飾りたい38号車ZENT CERUMO GR Supraの石浦宏明が、立川祐路に繋ぐべく1分36秒857の基準タイムを刻んでいく。
ここから午前も好調だった17号車Astemo NSX-GTや、FCYテスト枠でも上位を固めたニッサン陣営の24号車リアライズコーポレーション ADVAN Zが次々にトップタイムを更新する展開となる。
そんななか集団後方で熱入れを進めていた3号車Niterraの高星が、ここで1分35秒929と唯一の35秒台を記録して一気にタイムボードの最上位へ。対する36号車au宮田は1分36秒440と、その直前のコントロールライン通過時点で2番手とわずかに届かない。
さらにカットライン当落線上でもドラマが続き、チェッカーラップを迎えた車両から14号車ENEOS X PRIME山下が1分36秒156で2番手にジャンプアップ。エース欠場の穴を埋めるべく奮闘を見せる100号車STANLEY NSX-GTの牧野任祐も3番手に飛び込んでくる。
ここで計測5周目に1分36秒614で5番手としていた16号車ARTAは、ギリギリ8番手で踏み留まるかと思われたが、隊列先頭で最多周回のラストアタックへ向かった64号車Moduloの太田格之進が、最後の最後に1分36秒609を叩き出し8番手に滑り込んでみせる。
結果、逆転タイトルへ是が非でもポール獲得の1点が欲しかった16号車ARTAは9番手に押し出され、無情のQ1敗退が決定。38号車ZENTも12番手となり、立川は明日決勝での“オーバーテイク・ショー”に望みを掛ける展開となった。
■Q2:逆転タイトルを狙うNiterra Z千代勝正がGT500初ポール
陽が傾くなか迎えた今季最終の予選セッション。15時31分開始のQ2も64号車Moduloの伊沢拓也がピット出口グリーンと同時に、気合を込めて飛び出していく。約2分を待って100号車STANLEYの木村偉織が、昨季GT500初の予選アタックを経験した地で2年連続のQ2へと向かう。
さらに24号車リアライズの佐々木大樹を挟んで、17号車Astemo塚越広大の背後には3号車、23号車と2台のミシュラン陣営Zが続き、36号車auの坪井翔と、やはり最後尾に14号車ENEOS X PRIME大嶋和也のオーダーで最後の勝負に向かう。
Q1と同じく計測4周目に迎えたアタックでは、やはり17号車Astemoの塚越が早めの仕掛けを見せて1分35秒931とし、ここでQ1最速に並ぼうかというタイムを刻んでいく。直後にチェッカーフラッグが振られるなか、タイトルに向け執念を燃やす3号車Niterraの千代勝正が、ダウンヒルストレートを駆け降り1分35秒539まで詰めて勝負を決めに掛かる。
同じく背後から最終セクターをクリアしてきたチャンピオンシップの直接的ライバル、36号車坪井は1分36秒214で3番手とし、23号車MOTUL AUTECH Zも2台に先行ならず。1分36秒362として通過時点で4番手に終わり、これでポール獲得合戦は終結。
昨季もタイトル獲得に望みを掛けながら、ペナルティに泣いた3号車のふたりが1年越しの“リベンジ”に向けてグリッド最前列を獲得。千代にとってはGT500初ポールポジションをゲットして明日の舞台を整えるとともに、フロントロウ2番手の17号車NSX-GTを挟んで背後には36号車auと、直接対決の構図が完成することに。
最後に23号車MOTUL AUTECH Zを逆転した24号車リアライズが4番手に並び、以下100号車、64号車、14号車のトップ8で“燃費に厳しい”グランドフィナーレ300km勝負を迎える。
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