現在位置: carview! > ニュース > ニューモデル > 【高性能PHEVワゴン対決】後編 やんちゃなボルボ 完成度高いBMW 美点を取り戻したプジョー

ここから本文です

【高性能PHEVワゴン対決】後編 やんちゃなボルボ 完成度高いBMW 美点を取り戻したプジョー

掲載 更新 18
【高性能PHEVワゴン対決】後編 やんちゃなボルボ 完成度高いBMW 美点を取り戻したプジョー

数字通りの性能と走ってわかる実力

執筆:James Disdale(ジェイムズ・ディスデイル)

【画像】写真で見るパフォーマンスワゴン 全5枚

撮影:Luc Lacey(リュク・レイシー)

では、せっかくのハイパフォーマンスを発揮させてみようか。ボルボをダイナミックモードに入れ、性能をフルに引き出すと、どちらのパワーソースが優勢かはっきりわかる。リアの電気モーターが弾けるようなスタートに寄与するいっぽうで、ツイン過給の2.0Lユニットが高らかに唸りを上げ、全力を絞り出す。0-100km/h加速は3台中で最速の4.6秒をマークする。ウェイトは2021kgと、プジョーの1850kgやBMWの1890kgを上回っているにもかかわらずだ。どれも重いのは、プラグインハイブリッドの宿命だ。

だが、トルクステアの破壊的な大きさには驚かされる。クルマが路面の上反りや盛り上がりに遭遇すると、ステアリングホイールがそちらのほうへ引っ張られるのだ。

BMWなら、そうした問題は皆無だ。293psを全開にしてもまっすぐ素直に進むが、これは優秀な4WDシステムによるもの。必要に応じた駆動トルクの分配を、易々とやってのけるのだ。

さらに、この3台の中でも力不足な印象はまったく感じさせない。これはパワートレインの協調がすばらしく、スロットル調整もみごとだから。おかげで、ドライバーの入力へ即座にレスポンスしてくれるのだ。340のネームバッジがついていてもおかしくない、とさえ思わせてくれる。

さらに、効率面でもっとも優れていたのも330eだ。試乗時間が限られていたので、望んだほど充電する機会を用意できなかったが、それでも燃費は14km/Lを大きく上回った。ほかの2台は、13km/L台といったところだ。この数字は、プラグイン充電できるチャンスが多いほど、さらに向上できるのは間違いない。

体感上の速さと快適さはプジョーが一番

いずれにしても、一番速く感じられるのはプジョーだ。とくに中回転域では、2基のモーターとエンジンが全力を発揮し、53.1kg-mのシステムトルクをフルに使える。しかし驚くべきは、発進加速時の静けさだ。エンジンサウンドの遮音性はほかの2台よりずっと上で、電子音で増幅されたよそよそしい唸りが響くスポーツモードを選んでいてさえそうなのだ。

BMWのパワーユニットのほうが、レスポンスも魅力も上で、8速ATも変速の歯切れのよさで及ばない。しかし、飛ばせばかなり力を発揮してくれる。

コーナリング時にもまた、驚きを覚えることになる。ダンパーをハードなセッティングにしていても、足回りはすばらしくなめらかで、いかにもフランス車らしい。

PSEのブレーンたちは、トレッドの12mm拡幅と車高ダウン、そしてスプリングの強化を実施した。それでもこのプジョー508は、路面をゴツゴツと伝えてくることがない。むしろ舗装に追従して、状況を逐一知らせながらも、感じ取る必要のない突き上げはうまく消している。

ステアリングはクイックで、ややインフォメーションは足りないが、ターンインでの食いつきは強力。しかし、激しく走らせ、コーナーへ飛び込むには、手際のいい、これ以上ないほど適切な入力が求められる。

このクルマのキモは巧妙な、すばらしく磨かれた減衰コントロールで、気分次第でゆったりでも俊敏にでも走れる。ちょっと前なら、プジョーのシャシーエンジニアが自ブランドのよさを見失ったように思えたが、このPSEモデルでその魔力を取り戻したようだ。

対照的にBMWは、ゴツゴツして鋭い、トラディッショナルなドライバーズカーらしいもので、路面をよりはっきり伝えてくる。その身が詰まったステアリングはプジョーと変わらずクイックだが、よりインフォメーションが多く、コーナリングも速く旋回したがり、このクルマに優れたアジリティをもたらす。

すぐに爽快感を味わえるのはプジョーよりもBMWのほうだが、その方向性は異なるものの、どちらも走り志向のドライバーを満足させてくれる。いずれも、ある程度まで増えたウェイトを感じさせないという点ではおみごと。ただし、急ハンドルや高速コーナリング中に心境が変わった場合には、リアに積んだバッテリーの重量に振られるのを感じる。

けっしていうことを聞かなくなるわけではないが、限界域ではちぐはぐな動きを見せることがある。それが少ないのはボルボで、バッテリーをホイールベース内の、センタートンネル部分に置いたことが効いている。

期待に応える速いプジョーの帰還

そうであっても、非常にわずかながら無感覚なところがあるボルボは、ダイナミックさでほかの2台に及ばない。運動性重視のダンパーは、ハードに走ると垂直方向の挙動をみごとに抑えてくれるが、軽いステアリングはスローでよそよそしく、アクションがダルくて曖昧だ。

このV60が走行性能もグリップも低いわけではないが、ライバルたちより走り方に深みがなく、こわばっている。攻めたときに、走らせ甲斐がほかの2台ほど感じられないのだ。

そんなわけで、ボルボには銅メダルを贈ることとするが、これはおそらく採点が厳しすぎるだろう。というのも、このV60はスタイリッシュで、乗り心地の不足を忘れれば贅沢な仕上がり。速くて実用的なファミリー向けワゴンとしては、十分に出来がいい。

5万2200ポンド(約731万円)という価格で、すばらしいダンパーとポールスターのノウハウを注ぎ込まれたことを考えれば、もっと多くを期待したかった。ところが、結局はダイナミクスの冴えに欠け、ソリッドさは目指しているレベルに達していなかった。

BMWとプジョーの金メダル争いは、甲乙つけがたい。3台中もっとも低い4万9685ポンド(約696万円)という価格や、魅力がわかりやすい3シリーズのほうが、トップにランキングするなら妥当だ。実際に走ってみると、スペック表以上に508PSEと競り合えるものがあり、プジョーの5万4000ポンド(約756万円)を上回る値付けでもおかしくない。

電動化が進む世界において、昔ながらのエンジン単体仕様とフィーリングがほとんど変わらない330eは、スマートな選択だ。とはいえ、エンジン車終焉のときとされる2030年まではまだもう少し間がある。燃費性能をシビアにみるのでなければ、価格的に有利なエンジン車のツーリングが魅力的であることに変わりはない。

508PSEはじつに魅力的なクルマだが、5万4000ポンド(約756万円)というプジョーの値付けはかなりキツいものがある。とはいえ、このPSEにはおもしろみが感じられ、とくにシャシーには抗しがたい魅力がある。完全無欠というわけではないが、個性の強いプラグインハイブリッドだ。

しかも、長く待たれた、心からほしくなる速いプジョーの復活でもある。みんな違ってみんないいのだが、今回の結論は「フランス万歳」としようではないか。

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油7円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

気胸と骨折の治療進むマルティン、スペインGP欠場を発表。さらなる長期離脱やむなしか
気胸と骨折の治療進むマルティン、スペインGP欠場を発表。さらなる長期離脱やむなしか
AUTOSPORT web
デンソー、SDVモックカーで未来の移動空間を提案…上海モーターショー2025
デンソー、SDVモックカーで未来の移動空間を提案…上海モーターショー2025
レスポンス
進化が止まらぬ「道の駅」! もはや食のテーマパーク? 隈研吾デザイン&A5ランク牛肉ってホント?
進化が止まらぬ「道の駅」! もはや食のテーマパーク? 隈研吾デザイン&A5ランク牛肉ってホント?
Merkmal
スバル、大胆エクステリアの新型アウトバックを世界初公開。2026年以降アメリカ市場に導入へ
スバル、大胆エクステリアの新型アウトバックを世界初公開。2026年以降アメリカ市場に導入へ
AUTOSPORT web
【このF430なんぼ?】誕生から20年 いまやヤングタイマーとなった「フェラーリF430」はどれほどお手頃価格なのか?その走りと購入価格をチェック!
【このF430なんぼ?】誕生から20年 いまやヤングタイマーとなった「フェラーリF430」はどれほどお手頃価格なのか?その走りと購入価格をチェック!
AutoBild Japan
ダイハツ、販売会社57社のメールシステムに不正アクセス被害
ダイハツ、販売会社57社のメールシステムに不正アクセス被害
レスポンス
F1サウジアラビアGPは過酷なコンディションになる? オコンは猛暑に備え「全員にとってチャレンジになるだろう」
F1サウジアラビアGPは過酷なコンディションになる? オコンは猛暑に備え「全員にとってチャレンジになるだろう」
motorsport.com 日本版
「夢は裕毅を長くF1で戦わせること」精力的に動く角田の新マネージャーは現役ドライバー【ギョロ目でチェック/第4回】
「夢は裕毅を長くF1で戦わせること」精力的に動く角田の新マネージャーは現役ドライバー【ギョロ目でチェック/第4回】
AUTOSPORT web
【ロイヤルアロイ】特別カラーの限定車「JPSエディション」125cc/160ccモデルの予約受注を開始!
【ロイヤルアロイ】特別カラーの限定車「JPSエディション」125cc/160ccモデルの予約受注を開始!
バイクブロス
アウディの新拠点「Audi City 日本橋」がオープン! 蜷川実花デザインの鮮やかな「e-tron」は一見の価値あり
アウディの新拠点「Audi City 日本橋」がオープン! 蜷川実花デザインの鮮やかな「e-tron」は一見の価値あり
くるくら
マツダの「コスモ21コンセプト」に反響あり!「新しいロータリー搭載って最高」「絶対買う」の声も! “2人乗り”の超レトロ顔「FRスポーツカー」に大注目!
マツダの「コスモ21コンセプト」に反響あり!「新しいロータリー搭載って最高」「絶対買う」の声も! “2人乗り”の超レトロ顔「FRスポーツカー」に大注目!
くるまのニュース
5/30申込締切 世界最大のデザインイベントに自動車メーカー各社が参戦する理由とは~ミラノサローネ2025現地報告~
5/30申込締切 世界最大のデザインイベントに自動車メーカー各社が参戦する理由とは~ミラノサローネ2025現地報告~
レスポンス
2024年大会ポールの山下健太がFP2最速。王者坪井はストレートで一時ストップ/SF第3・4戦
2024年大会ポールの山下健太がFP2最速。王者坪井はストレートで一時ストップ/SF第3・4戦
AUTOSPORT web
昨年のポールシッター山下健太がトップタイム。牧野任祐、佐藤蓮が続く|スーパーフォーミュラ第3戦・第4戦もてぎFP2
昨年のポールシッター山下健太がトップタイム。牧野任祐、佐藤蓮が続く|スーパーフォーミュラ第3戦・第4戦もてぎFP2
motorsport.com 日本版
「最強の箱型交通システム」川崎重工から出現! 陸・海・空の移動をコレ一個で!その型破りすぎるコンセプト
「最強の箱型交通システム」川崎重工から出現! 陸・海・空の移動をコレ一個で!その型破りすぎるコンセプト
乗りものニュース
V.A.のコラボ、続々登場。A24の映画『異端者の家』とのTシャツがリリースへ
V.A.のコラボ、続々登場。A24の映画『異端者の家』とのTシャツがリリースへ
GQ JAPAN
来日予定のイギリス空母艦隊 航海中に“初の試み”実施へ 艦艇間の物資輸送が円滑に?
来日予定のイギリス空母艦隊 航海中に“初の試み”実施へ 艦艇間の物資輸送が円滑に?
乗りものニュース
スバルが2台のバッテリーEVを世界初公開。2026年以降の自社生産、バリエーション拡充を目指す
スバルが2台のバッテリーEVを世界初公開。2026年以降の自社生産、バリエーション拡充を目指す
AUTOSPORT web

みんなのコメント

18件
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

649 . 0万円 709 . 0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

14 . 8万円 799 . 0万円

中古車を検索
ボルボ V60の買取価格・査定相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

649 . 0万円 709 . 0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

14 . 8万円 799 . 0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村