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ミッドウェー海戦で孤軍奮闘した空母…実は残した戦果はかなり大きかった?なぜ最後まで“残れた”のか

掲載 更新 109
ミッドウェー海戦で孤軍奮闘した空母…実は残した戦果はかなり大きかった?なぜ最後まで“残れた”のか

かなり重要だった「飛龍」の反撃

 ミッドウェー海戦といえば、さまざまな作戦が裏目に出て日本海軍が惨敗し、空母を4隻も失ってしまった戦いとして記憶する人も多いと思います。ただ最近の資料では、この海戦後、一気に日本が主戦力を失った訳ではなく、実はこの時点でも、空母を含めた太平洋方面に展開する海上戦力ではギリギリ、まだ日本軍のほうが優勢だったと考えられています。

【ボロボロに…】これが、攻撃を受け沈みかける「飛龍」です(写真)

 というのも、この戦いでアメリカ海軍も完全勝利という訳ではなく、雷撃隊を中心に多くのパイロットを失っており、空母も1隻沈められたためです。そのきっかけを作ったのが空母「飛龍」の孤軍奮闘でした。

 1942年6月5日から7日かけて起きたミッドウェー海戦は、日本海軍連合艦隊とアメリカ海軍空母群機動部隊が激突し、その後の戦略に大きな影響を与えた戦いです。結果としてここで日本海軍は、主力の空母4隻と重巡洋艦「三隈」が沈没。それまでの破竹の勢いを失います。

 戦いの舞台となったミッドウェーはハワイ諸島の北西にある小さな島の周辺海域です。実は同島においては占領そのものではない、別の目的もありました。それは真珠湾攻撃の際に仕留めきれなかったアメリカ海軍の主力艦艇を、このミッドウェー島近海におびき出し、まとめて沈めてしまおうというものです。

「運命の5分間」を回避してしのぐ

 しかし、この頃日本海軍の暗号は、アメリカ軍によって解読されており、日本軍の行動はすべて察知されている状態であったことから、戦闘開始前から迎撃態勢と整えられかなり不利な状態となっていました。

 さらに、日本空母機動部隊には、敵艦艇の撃滅のほかにもミッドウェー島の空爆という役目も科せられていました。これが最悪の状態に向かう大きな原因を作ります。攻撃準備中にアメリカ軍の爆撃を受けて「赤城」「加賀」「蒼龍」が瞬く間に炎上したからです。

 艦隊護衛の零戦隊は急降下爆撃機が攻撃を仕掛けたとき、殆どは雷撃機の迎撃のため低空に降りており、上空が全くの無防備になっていました。僅かな隙を突かれた攻撃により空母「赤城」は2発、「加賀」は4発、「蒼龍」は3発の爆撃の直撃を受けます。ただ、通常であれば、急降下爆撃による爆弾の直撃を受けてもすぐに航行不能や沈没するほどダメージを受けない可能性もありました。

 しかし、このときはミッドウェー島攻撃の爆撃から急遽、敵空母攻撃に切り替えるため、空母甲板には艦上攻撃機用の爆弾や魚雷が所せましと並べられていたのです。そのため爆撃によって次々にそれらに引火し、火災を引き起こし3隻は短時間のうちに航行不能になり、後に沈没や自沈処分されることになります。

「運命の5分間」「魔の5分間」とも呼ばれるこの瞬間に戦いは決着したかに思われました。しかし、まだ日本海軍には空母が残っていました。それが「飛龍」でした。同艦は、ほかの空母3隻からは少し離れたところにいたため、爆撃を免れ、生き残っていたのです。

「飛龍」が、なぜほかの空母から離れていたかについてはわかっていません。しかし、この前日はひどい濃霧で「飛龍」と戦艦「霧島」が航行中に衝突しかけるという事態も起こっています。ミッドウェーの海域でもたびたびスコールに見舞われるような天候であったといいますから、そのために距離を取っていたとも考えられます。

「赤城」「加賀」「蒼龍」がアメリカ軍の爆撃を受けた時、少し離れた場所にいた「飛龍」はいち早く動き出し、少し北にあったスコールの雲の下へと逃げ込みました。そこは、小さな空間ではありましたが、雲と激しい雨が「飛龍」を敵から隠してくれるちょうどいい場所となりました。そして、南の方向に3隻の空母が炎上するのを確認し、「飛龍」はその敵を討つため、風上となる東へと進路を取り反撃の機会をうかがいます。

たった1隻で傷だらけになり反撃

 3隻被弾後、反撃を決断した際、「飛龍」を指揮する第二航空戦隊司令官の山口多聞少将は乗組員に対し「帝国の栄光のため戦いを続けるのは一に飛龍にかかっている」と宣言したといわれています。

「飛龍」から組織された攻撃隊は戦果を挙げて意気揚々としていたアメリカ軍の機動部隊の空母「ヨークタウン」を発見、これに急降下爆撃を加え損傷を与えると、続く第二次攻撃隊は、魚雷を命中させ、同艦を航行不能とします。

 ただ、「飛龍」の孤軍奮闘もここまででした。「ヨークタウン」攻撃の際に多くの艦載機パイロットを失ったためです。別の場所に出張っていた護衛の零戦を呼べないままの攻撃だったため、被害は甚大なものとなりました。

 よく、この戦いで日本海軍は優秀な艦載機パイロットを多数失ったと言われていますが、ほかの3隻では不時着水するなどで難を逃れたパイロットが多く、未帰還だったのは「赤城」7名、「加賀」21名、「蒼龍」10名に留まっています。実は敵艦に攻撃を仕掛けた「飛龍」の人的被害が一番多く未帰還64名でした。

 攻撃後、「飛龍」は「ヨークタウン」の残存艦載機を受け入れた空母「エンタープライズ」に発見されると、SBDドーントレス急降下爆撃機24機による激しい爆撃を受けることになりました。この集中攻撃により「飛龍」は爆弾4発の直撃を受け、航行不能に。必死に復旧作業もむなしく、艦長の加来止男大佐や山口少将と共に海に沈むことになりました。

 こうして日本海軍はミッドウェー海戦で大敗を喫することになりました。しかし、このとき「飛龍」が一矢報いた空母「ヨークタウン」は修理のため、真珠湾に向けて曳船に引かれて航行中に潜水艦「伊一六八」の魚雷攻撃により、沈没。これがミッドウェーの戦いで沈没した唯一のアメリカ空母となりました。

 前述したように、この敗北の後でも太平洋方面に展開する海上兵力では、なお日本軍のほうが優位にありました。さらに、「飛龍」の奮戦のおかげで、空母1隻と多くの艦載機と搭乗するパイロットを失ったアメリカ海軍も、しばらく空母の集中運用はできませんでした。

 いわばこの戦いの後の立て直しが重要だった訳ですが、この「飛龍」の奮戦は戦況に大きな影響を与えることはできませんでした。

 結局日本軍は続く1942年8月から翌年の2月まで続いたガダルカナルの戦いで、ソロモン諸島の勢力圏維持に執着したあまり、アメリカ軍相手に多大な消耗戦を強いられ多数の艦艇や輸送船を喪失します。

 さらに、同戦いに関連したソロモン諸島方面での航空戦で、生き残った空母艦載機のパイロットを陸にあげ、消耗戦を演じたため、開戦以来の優秀な艦載機パイロットも殆ど失うことになります。この敗北は決定的で日本軍は一気に敗色濃厚となりますが、その後も立て直すあてのない絶望的な戦を長く続けることになりました。

※一部修正しました(6月18日12時10分)(凪破真名(歴史ライター・編集))

文:乗りものニュース 凪破真名(歴史ライター・編集)

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みんなのコメント

109件
  • sno********
    ほしいな。
    飛龍艦長は加来止男大佐。
    軍政家としてもかなり優秀だった。
    この時指揮を取った山口多聞少将は、第二航空戦隊司令官。
    こちらは、将来の連合艦隊司令長官と言われるくらい優れていた。
  • afp********
    「運命の5分間」は責任逃れの虚構というのが、最近の研究者によって明らかにされている。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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