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特効薬となるか!? 高齢者免許更新の新制度は事故対策に効果あり?

掲載 更新 13
特効薬となるか!? 高齢者免許更新の新制度は事故対策に効果あり?

 高齢運転者による交通事故防止対策として導入される免許更新試験の方針が3月に固まった。これまで75歳以上は免許の更新時に実車指導を受けるだけだったが、違反歴がある場合は実車による技能試験が課せられ、この新制度は2022年6月までに導入することが決まっている。

 高齢化社会が進むなかで、今日本が直面している大きな問題のひとつが高齢者による交通事故。そのため、高齢者の運転免許更新はいままでも講習は行われてきたわけだが、今回の新制度とは具体的にはどのような内容なのか?

まだ6割が後席シートベルト未着用 着けて!! 着けないと自分以外に迷惑が!!

 そして、高齢ドライバーの事故対策の特効薬となるのか? モータージャーナリストの岩貞るみこ氏に解説してもらった。

文/岩貞るみこ
写真/AdobeStock(トビラ写真=BlueBeans@AdobeStock)

【画像ギャラリー】免許を「取り上げる」ことがないように……高齢者免許更新の新制度を考える

■高齢者免許更新の新制度は池袋での死傷事故が関係している!

これまでの現行制度でも75歳以上は認知機能検査を受けたうえで、必要な場合は実車指導を受けるという形だった(Monet@AdobeStock)

 高齢運転者の交通事故対策は、世界で一番早く超高齢化社会を迎える日本の喫緊の課題だが、この度、改正道路交通法の内容が固まった。

 現行制度では70~74歳は、高齢者講習(講義・運転適性検査・実車指導)を受けることになっている。また、75歳以上は認知機能検査を受けたうえで、

1)認知機能低下のおそれがない人は、70~74歳と同じ講習
2)認知機能の低下のおそれがある人は、高度化講習(個別指導が追加)
3)認知症のおそれありの人は、医師の診断を受けたうえで、大丈夫なら高度化講習を受ける

 と、分けられていた。実車指導は指導を受けるだけなので、ひらたく言えば全員が免許証の更新ができるのだ。

 今回、75歳以上の人に対して、認知機能検査を受ける前に運転技能検査が新設された。指導ではなく検査なので、合格しなければ認知機能検査に進めない。つまり、今までより現状にあった仕組みになったというわけだ。

 新設された理由のひとつには、池袋で起きた自動車暴走死傷事故が大きく関係している。加害者は認知機能こそ問題がなかったものの杖をつかなければ歩けないほど脚部に問題があり、正常に運転できる状態だったかどうか世間から疑問視されたからだ。

 警察庁はこれまで認知症に特化した対策をしてきたが、修正が必要となったのである。

■ふるい落とすのではなく自分の運転技術を認識してもらう

まだ運転できる人には、自分の実力を認識したうえで安全に運転してもらおう(ohayou!@AdobeStock)

 新設された運転技能検査の内容は、指定速度による走行、一時停止、右折・左折、信号通過、段差乗り上げ。いずれも、きちんと履行できなければ大きな事故につながりかねない項目で、約7分程度のコースである。

 私も一度、検査コースを走らせていただいたことがある。初めて走るコース、初めて乗るクルマ、隣には厳しそうな教官。これだけで緊張するが、やることはいつもの運転と同じなので、普段どおりに運転していればそんなにヘマをやらかすことはない。

 普段、あまりやらないのは、試験項目の最後にある「段差乗り上げ」くらいだろうか。これは、「踏み間違いに気づいた時に、すばやくペダルを踏みかえてブレーキを踏んで止まれるか」を確認する項目である。

 試験では、クリープでは前に進まない程度の段差部分に前タイヤをあてて停止し、アクセルを踏んで乗り上げたらすぐにブレーキを踏んで止まるというもの。止まるまでに1mを超えたら減点になる。けれどこれも、普通のドライバーならきちんと止まれる内容だと感じた。

 この運転技能検査は一発勝負ではなく、更新期間満了までであれば何度でも挑戦することができる。前述したとおり、乗りなれていないクルマに乗れば緊張するし、検査を受ける教習所の広さやまわりを走る教習車の有無などを考慮したこともある。

 ただ、最大の理由は、何度か注意したのちに法規を守った運転ができるようになれば、運転を継続させてあげようということからだ。

 この検査は、厳しくふるい落とすのではなく、公共交通機関のない地域に住んでいる人のなかで、まだ運転できる人には、自分の実力を認識したうえで(ここ大事)安全に運転してもらおうということなのである。

■全ての高齢者が技能検査を受けるわけではない

信号無視や踏切不停止などの違反者が対象となる(chihuahua55@AdobeStock)

 新たな制度は2021年6月までに導入される予定だが、もちろん、これですべての問題が解決したわけではない。なぜならば、この運転技能検査は、75歳以上の全員が受けるわけではないからだ。受けるのは、75歳以上のなかでも過去3年間に一定の違反行為のあるドライバーだけなのである。

 一定の違反行為は、信号無視、通行区分違反、踏切不停止等・遮断踏切立ち入り、交差点右左折方法違反等、交差点安全進行義務違反等、横断歩行者等妨害等など走行に関係するもので、シートベルトの未着用、駐停車禁止違反などは含まれていない。

 一定の違反行為のある人のみにした理由は、75歳以上の高齢運転者のうち、過去3年間に何らかの違反歴がある人は、重大事故率が全体の約1.8倍になる。

 さらに、前述した一定の違反歴で絞り込むと、重大事故率は全体の約2.1倍になる。つまり、より事故を起こす可能性のある運転者を重点的に絞り込んで検査を行おうというわけだ。

■内容はこの後も検討され対策は継続されていく

受講者を絞り込むもうひとつの理由は教習所の受け入れ体制にある(Monet@AdobeStock)

 絞り込むにはもうひとつ理由がある。それは、教習所の受け入れ体制だ。すでに「高齢者講習の予約がとれない」という声はあちこちから聞こえているように、今、増えている高齢運転者に対して、教習所の数が足りなくなっているのである。

 教習所は少子化の影響もあり、毎年1割のペースで減っている。特に地方部ではこの動きが顕著で、年間予想対象者数212.5万人の全員を受け入れることができないのである。そこで一定の違反者に絞り込むことで、対象者数を15.3万人にしたというわけだ。

 甘い、という声が聞こえてきそうだが、受け入れ体制がなければどうにもならない。それに厳しいことを言えば、運転がまともにできないのはなにも高齢者だけに限った話ではなく、ペーパードライバー含め全年齢で運転技能の有無があるかを確認することが、本当は必要だとも言える。

 なお、今回、同時に、視野欠損を起こして信号機などを見落とす危険性の高い緑内障の検査も導入すべく検討されていた。しかし、全国一律で正確にできるシステムが確立されていないという理由で、不採用になっている。

 最終的に決定された内容は、現時点で、というだけでありこの後も検討は続けられる予定である。

【画像ギャラリー】免許を「取り上げる」ことがないように……高齢者免許更新の新制度を考える

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みんなのコメント

13件
  • いくら生活のためと言っても、運転能力ないなら返上じゃなく、剥奪。当然、車も買取。国も補助金付けてやってね。
  • 今までの単なるお茶濁しみたいなほとんど効果のない制度を踏襲するなら全く意味がない。
    運転に適性のない落とすべき対象者はどんどん落としてほしい。
    新制度導入後、ダイナミック入店が激減すれば効果があったと言えると思う。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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