F1技術規則が大きく変更されグラウンドエフェクトカーが復活した今季、メルセデスは開幕からフロア下のダウンフォースの増減によって車高が高速で変化する”空力由来”のポーパシングに悩まされてきたが、カナダGPの結果からその問題にピリオドを打つことができたと考えている。
ただ、メルセデスが抱える問題が全て解決した訳ではない。フロア下の気流を一定にすべく非常に硬い足回りを持つことで路面の凸凹や縁石にサスペンションが対応しきれず、車高が路面スレスレにまでに下げられたことでマシンが路面に接触し、激しい振動がドライバーを襲っているのだ。
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メルセデスはこの”メカニカルな”問題をバウンシングと定義しているが、これはメルセデスに限定されるモノではない。
バクー市街地サーキットで行なわれたアゼルバイジャンGPではこれが顕著に発生していた。メルセデスのルイス・ハミルトンはレース中やレース後に脊中の痛みを訴えていたが、彼以外にもアルファタウリのピエール・ガスリーやハースのミック・シューマッハーといったドライバーも、ポーパシングやバウンシングによる振動の身体的影響を訴えていた。
こうした現状を踏まえ、FIAもカナダGPに先立って安全上の理由から介入を開始。垂直加速度の測定や許容可能な振動量の定義に向けてデータ収集を行なった。
またカナダGPに先立ち、FIAは技術指令でフロアを強化する2本目のステー追加を許可。ただこの技術指令がステーは1本までとする技術規則に抵触しており、ライバルから抗議を受ける可能性があったため、追加を検討したメルセデスも予選・決勝レースでは使用しなかった。
カナダGPでメルセデスは今季最高位タイの3位、4位を獲得。恐らく今季最もペース面では競争力を発揮したレースとなった。こうした結果を受けてチーム代表のトト・ウルフは、メルセデスは問題の解決から”本来の”マシン開発へ進むことができたと考えている。
「ある意味、ポーパシングとかバウンシングなどといった点で定義づけが出来たと思う。ポーパシングは空力的なマシンの動きのことで、スペインGPあたりで解決できていたし、そのあたりからら調子も上がっていったと思う」とウルフは言う。
「それよりも、マシンの乗り心地の方がドライバーから発言を呼び起こしている」
「マシンがただただ硬すぎるのだ。縁石に乗っても、バンプを通っても(乗り心地は)悪いし、この問題を分析することで、もっとより良く改善できるようになると思う」
「マシンに見られる問題はその硬さだけだ。トップ2とアルピーヌのマシンのスローモーション映像を見てみると、縁石に激しく跳ね返されているのが分かる」
「ドライバーたちから挙がっている不満の声の原因は、マシンの硬さについてなのだ。この衝撃をどう軽減していくか、それが我々の課題なのだ」
「そしてもちろん、サーキットはスムーズであればあるほど良い。縁石が低ければ低いだけ、この問題は少なくなるのだ」
またウルフは、メルセデスはポーパシングを解消したことによって、他ライバルチームと同じマシンセットアップの”幅”を持つことができたと考えている。そして、問題解決からパフォーマンス追求へシフトする中で、様々な車高セッティングでもペースを引き出すことが、レッドブルやフェラーリといったトップ2チームとの差を詰めていくカギになると彼は言う。
「我々はもっとダウンフォースをマシンにつけて、車高が想定よりも低くないマシンでも同様にそれを引き出す必要がある」
「マシン(の車高)が高くなっているのは明らかだ。我々はそこにパフォーマンスを見出す必要がある」
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