現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 「親の送迎車」が凶器に変わる? 98%の小学校で危険運転! 安心が招く通学路の悪夢、カナダ衝撃研究を考える

ここから本文です

「親の送迎車」が凶器に変わる? 98%の小学校で危険運転! 安心が招く通学路の悪夢、カナダ衝撃研究を考える

掲載 更新 6
「親の送迎車」が凶器に変わる? 98%の小学校で危険運転! 安心が招く通学路の悪夢、カナダ衝撃研究を考える

学校前に潜むリスク

 春は交通事故のリスクが高まる時期だ。警察庁は2025年3月、4月から6月にかけて交通事故の死傷者数が増える傾向にあると発表した。なかでも、最も死傷者が多い年齢は7歳だった。新学期が始まり、通学に不慣れな子どもが多いこの時期は、特に注意が必要だ。

【画像】「えぇぇぇぇ?」 これがトヨタ自動車の「平均年収」です! 画像で見る(計11枚)

 子どもの安全を守ろうと、車で送迎する保護者が増える時期でもある。しかし、その

「送迎時の運転」

こそが危険を招いているという。カナダで行われた最新の研究によれば、保護者による運転の多くは

「許容できないレベルの危険性」

を含んでいた。学校前に車が集中することで、むしろ子どもたちを事故のリスクにさらしていると指摘されている。

「反対側降車」の危機構造

 Taylor&Francis Groupが主宰した国際合同研究チームは、2025年4月に学術誌「Traffic Injury Prevention」で研究成果を発表した。カナダの500校以上の小学校から得たデータを分析し、親による送迎時の危険運転が、皮肉にも通学中の子どもを危険にさらしている実態が明らかになった。

 研究によれば、

・二重駐車
・交通違反

などの危険行為は、朝の登校時間帯に98%の小学校で確認された。こうした違反が日常的に発生していることが浮き彫りになっている。

 調査は、カナダ国内七つの自治体にある552校を対象に実施された。最も多く見られた危険行為は、

「道路の反対側で子どもを降ろす」

ことである。その結果、子どもが車の直後に道路を横断し、事故に巻き込まれるケースが少なくないという。

 研究チームは、送迎時の安全意識の欠如が交通弱者に直結するリスクを警告している。とくに歩行中の児童や自転車利用者が巻き込まれる事故の発生率は、危険運転によって45%増加するとして、事態の深刻さを訴えている。

通学路対策を迫る環境改善ニーズ

 研究チームは、子どもの乗降用に専用スペースを設ける案を提案した。また、障がいのある子どもをもつ家庭のために、バリアフリー対応の駐車区画の整備も求めている。

 アルバータ州カルガリー大学の研究員であるトナ・ピット氏は、Taylor&Francis Groupのプレスリリースのなかで、次のように言及している。

「結果は、スクールゾーンにおける危険な運転行動のレベルと種類が許容できないことを示しています」

さらに、ピット氏は次のようにも警鐘を鳴らす。

「危険な行動は二重の悪影響を及ぼす可能性があります。交通弱者を巻き込む衝突事故が増加し、スクールバスの積極的な利用が阻害される可能性があります」

学校周辺の混乱ぶりについては、保護者や地域住民、教師など関係者から以前から声が上がっていた。とくに登校時間帯は、交通が錯綜しやすいとされる。

「この研究はそれを少し定量化するのに役立ち、ランダムに選ばれた日にほぼすべての学校で何らかの危険な運転行動が発生しているのを観察しています」(ピット氏)

こうした分析を踏まえ、研究チームは

「学校周辺の物理的な環境を見直す」

ことが、深刻かつ緊急の課題である危険運転への有効な対策になりうると結論づけた。研究チームによれば、危険運転の発生率は容認できる水準を大きく上回っているという。その頻度とパターン、さらに運転行動が起きやすい空間特性を理解することが、学校や教育委員会、自治体による介入策の立案に資するという見解である。

学校前Uターン82%の衝撃

 子どもの通学に自家用車を使う割合は、年々大きく増加している。たとえば米国では、1969年から2009年の間に47.5%増加した。一方で、徒歩や自転車といったアクティブな通学手段は減少傾向にある。カナダの「児童の積極的移動の安全と環境調査(CHASE)」によれば、同国の通学児童の45.8%が何らかの車両を利用して通っている。

 今回の研究では、学校周辺の道路環境に対する現地監査も実施された。対象となったのは校舎正面玄関の両側で、授業開始の20分前から5分前までの時間帯に、交通の流れと運転行動を観察した。

 調査の結果、すべての小学校で少なくとも1件以上、交通安全に影響を及ぼす危険運転行為が確認された。とくに目立ったのが、学校前で子どもを降ろした後、保護者がその場でUターンして帰るケースである。この行為が混雑や渋滞の一因となっていた。

 また、都市ごとに特定の行動が偏る傾向も見られた。Uターンの発生率が最も高かったのはトロントで82%に達した。一方、学校入口の視界を遮る違法駐車はピール地域で多く、全体の75%を占めた。

 さらに、車内での携帯電話の使用やメッセージ送信といったながら運転も問題となっている。全体の平均では20%だったが、カルガリーの学校では38%と突出して高かった。

保護者不信が招く送迎依存

 今回の研究では、スピード違反は調査対象に含まれていなかった。だが、危険運転の種類が最も少なかった学校群では、隣接道路の制限速度が比較的低かった。

 また、これらの学校では正門以外に車を停められる場所がほとんどなかった。いわゆるスクールゾーンによる交通規制が、有効な対策であることが改めて裏づけられた。

 道路整備や乗降場所の設置、横断歩道警備員の配置といった対策は、一定の効果を持つ。ただし根本的な課題は、保護者が

「自ら送迎しなければ安心できない」

と感じている点にある。スクールバスや公共交通による通学でも安心できる環境の整備が、今後の都市計画に求められている。

関連タグ

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油7円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

「タクシー運転は最短3日でOK」の裏側──なぜ「充足率85%」の現場が“質より量”を求めるのか? 高齢者・外国人に頼る“プロの定義”とは
「タクシー運転は最短3日でOK」の裏側──なぜ「充足率85%」の現場が“質より量”を求めるのか? 高齢者・外国人に頼る“プロの定義”とは
Merkmal
強風時の「車ドア事故」が急増する理由──時速140kmの猛烈な風が引き起こす横転、JAF実験が示す開閉不能の危機とは
強風時の「車ドア事故」が急増する理由──時速140kmの猛烈な風が引き起こす横転、JAF実験が示す開閉不能の危機とは
Merkmal
「SOS」点滅しても気づかない? なぜタクシーの「緊急サイン」は機能しないのか──西鉄バスジャック事件から25年、今も残る“周知の壁”
「SOS」点滅しても気づかない? なぜタクシーの「緊急サイン」は機能しないのか──西鉄バスジャック事件から25年、今も残る“周知の壁”
Merkmal
「そりゃ減るわけがない」 トラック「荷待ち・荷役時間」わずか1分減の現実――国交省「いじめっ子放置」政策が生んだ致命的盲点とは
「そりゃ減るわけがない」 トラック「荷待ち・荷役時間」わずか1分減の現実――国交省「いじめっ子放置」政策が生んだ致命的盲点とは
Merkmal
常磐自動車道が全線開通するまで「34年」もかかった根本理由
常磐自動車道が全線開通するまで「34年」もかかった根本理由
Merkmal
子供を守り、事故に巻き込まれない、本当の安全運転とは何か?
子供を守り、事故に巻き込まれない、本当の安全運転とは何か?
LEON
「安全運転 = お得」な時代がやって来る? 眠れる巨大市場「SDカード」経済圏とは何か? 安全運転で割引ザクザク? 事故率低下にも期待の現実
「安全運転 = お得」な時代がやって来る? 眠れる巨大市場「SDカード」経済圏とは何か? 安全運転で割引ザクザク? 事故率低下にも期待の現実
Merkmal
バスの「トランクに人閉じ込め」も 置き去り事故は運転手の“思い込み”が原因? 装置だけでは「防げない」
バスの「トランクに人閉じ込め」も 置き去り事故は運転手の“思い込み”が原因? 装置だけでは「防げない」
乗りものニュース
なぜ起きた?東北道逆走死亡事故… 注目される「平面交差」って何? 事故から学ぶ対策とドライバーの心得は
なぜ起きた?東北道逆走死亡事故… 注目される「平面交差」って何? 事故から学ぶ対策とドライバーの心得は
くるまのニュース
中国CRRCが日本車を駆逐? ジャカルタ通勤鉄道での「E235系失注」が示す、日本の護送船団方式の限界
中国CRRCが日本車を駆逐? ジャカルタ通勤鉄道での「E235系失注」が示す、日本の護送船団方式の限界
Merkmal
防衛省が超音速ミサイル「ASM-3」に見捨てた根本理由――カタログ・スペックで優れるのになぜ?
防衛省が超音速ミサイル「ASM-3」に見捨てた根本理由――カタログ・スペックで優れるのになぜ?
Merkmal
東京都は「わずか800m」になぜ巨費を投じたのか? 異例の費用対効果が示す「多摩都市モノレール延伸」への周到な布石
東京都は「わずか800m」になぜ巨費を投じたのか? 異例の費用対効果が示す「多摩都市モノレール延伸」への周到な布石
Merkmal
災害時のトイレ問題、「8割の自治体」が無計画? トイレトレーラーが拓く命を守る新常識とは
災害時のトイレ問題、「8割の自治体」が無計画? トイレトレーラーが拓く命を守る新常識とは
Merkmal
率直に問う EV愛好家は本当に「クルマ好き」と呼べるのか?
率直に問う EV愛好家は本当に「クルマ好き」と呼べるのか?
Merkmal
走る太陽光発電「ソーラーロード」知ってる? オランダで成功、中国で盗難…日本で普及しない理由と隠されたコストとは
走る太陽光発電「ソーラーロード」知ってる? オランダで成功、中国で盗難…日本で普及しない理由と隠されたコストとは
Merkmal
うぉっ、バイク飛び出してきた!←「自動ブレーキ効きますか?」 クルマの安全装備の“死角”を突く性能試験導入へ 何が変わる?
うぉっ、バイク飛び出してきた!←「自動ブレーキ効きますか?」 クルマの安全装備の“死角”を突く性能試験導入へ 何が変わる?
乗りものニュース
運転中に眠気を感じたら「なる早で仮眠」だけが唯一の安全策! ただし「寝過ぎ」も逆効果! 研究による仮眠の「最適時間」とは?
運転中に眠気を感じたら「なる早で仮眠」だけが唯一の安全策! ただし「寝過ぎ」も逆効果! 研究による仮眠の「最適時間」とは?
WEB CARTOP
徐々に現実味を帯びてきた自動運転技術! 一般道より高速道路が優先される理由とは?
徐々に現実味を帯びてきた自動運転技術! 一般道より高速道路が優先される理由とは?
WEB CARTOP

みんなのコメント

6件
  • ちょび太
    学校以外にも、雨の日の駅への送迎や、スーパーへの買い出しなど、近くに止める事に必死
    利便性最優先で、迷惑やリスクを考えられない可哀想な人達
  • not********
    家の前の狭い道、その道の先に幼稚園かあって、朝は大きなミニバン(大きいミニって変な話だけど)が道を占領して幼稚園に爆走していく。ある日仕事に行くので歩いていたところ、後ろから子供のワイワイ騒ぐ声が聞こえたと思ったら、幼稚園への送りのミニバン、追い抜きざまに後席の窓から顔を出した園児二人「邪魔だ〜どけやこらあ〜(笑)」とこちらに笑いながら言ってきた、同時に中から母親の「こ〜らっ(笑)」って声も聞こえてきた。こういうの幼稚園に苦情行くべきなんだろうか?
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村