思えば遠くへ来たもんだ!
マイクロ・デポのタコちゃん(岡本和久代表)が、猛暑による過労(推測)で入院し、大貴族号(先代マセラティ・クアトロポルテ)の車検完了時期が見えなくなったと思ったら、直後に奥様(タコヨメ)から「車検完了してます!」と連絡が入り、練馬のマイクロ・デポ本社で車両を受け取ることができた。
【画像】フロアMTの魔力!B210サニークーペ(とセダン) 全3枚
ひょっとしてタコちゃんは、大貴族号の整備が終わった瞬間に倒れちゃったりしたのだろうか……(想像)。ああ自動車ラスト・ロマン。涙が出る。
マイクロ・デポからの帰路、大貴族号で環八・井荻トンネルを走りながら、これまで乗ってきたクルマたちが、走馬灯のように蘇った。18歳で自動車免許を取ってから早46年。私にとって大貴族号は、55台目の愛車。思えば遠くへ来たもんだ。
私が最初に乗り回したクルマは、父が姉のために買った中古の『ダットサン・サニークーペGL』(3代目のB210型)だった。私と姉とで共同で乗りなさい、ということになったのである(自分は一銭も出していないので、愛車リストには入っていない)。
それは真っ赤なクーペで、妙にお尻が高く、そのお尻がスパーンと切り落とされたようなフォルムだった。今思えば、あのお尻はコーダトロンカだったのかもしれないが、そんなオシャレな用語とは3万光年くらい離れた、いかにも安っぽいクルマだった。今見ればレトロでカッコいいかもしれませんけど、当時私は「ものすごく不格好だなぁ」と思っていた。
『俺たちの旅』って感じのクルマ!
エンジンは1200ccのA12型、ミッションは4速MT。クーラーなし。今なら「スパルタンなライトウェイトクーペ!」みたいなことになるかもしれないが、当時は、いかにもニッポンの貧しい若者が乗りそうな、『俺たちの旅』って感じのクルマだった。
そのサニークーペに乗るまで、私は特段クルマ好きではなかった。免許を取ったら、お尻の高い不格好なクーペより、母の日産ローレル(3AT)でゆっくり走ろうかな、くらいに思っていた。
思えば私が通った教習所の教習車は、日産セドリックのコラムMT車だった。フロアMTじゃないよ、コラムMTだよ! ハンドルの付け根左側にレバーが生えてて、それを押したり引いたりしながら、上や下へ動かして変速するんだよ! 今じゃそんなもんが存在したことも知らない人が多いでしょ? あれを思い出すと、自分がものすごい年寄りみたいな気分になる。MTの変速がカッコイイ的な思いもゼロだった。
しかしサニークーペはフロアMTだった。床から生えてるレバーを操作して変速するのは、おっさん臭いコラムMTに比べると、だいぶカッコいいような気はした。なんとなく。
とにかく全開! ひたすら全開!
免許取得当日の夜。彼女のいない私は、妹を助手席に乗せて首都高に突入した。1980年当時の教習所はまだ高速教習もなかったから、高速道路を走ったのはそれが最初だった。
首都高は複雑すぎてまったくワケがわからず、死ぬかと思った。妹はもっと怖い思いをしただろう。ごめんなさい。
しかしその後、関越や東名など普通の高速道路を知って、私は狂った。直線番長のスピード狂になったのである。
サニーで高速道路を走ると、アクセルを床まで踏みつけないと気が済まない。とにかく全開! ひたすら全開! コーナリングがどうこうみたいな難しいことは一切頭になく、高速道路の直線を見ると血が騒ぎ、狂ったようにアクセルを踏み込んだ。
私がカーマニアになったのは、あのサニークーペが原因だ。サニーは最後までカッコ悪かったし、愛情みたいなものは芽生えなかったけど、あのクルマが私に、アクセル全開の快楽を教え込んだ。
それは決してサニークーペの魔力とかではなく、あえて言えば、『フロアMTの魔力』だったかもしれない。うお~ん。
(つづく/隔週金曜日掲載、次回は8月21日金曜日公開予定です)
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