この記事をまとめると
■長距離運転などで運転手に襲いかかる「腰痛」
「骨盤を立てる」と何が変わる? マツダが「シート」に命をかける理由
■腰が痛くなる人に共通する姿勢やシート調節の際に重要な部分を紹介
■純正シートが合わなければ社外品のシートも選択肢のひとつ
腰痛と向き合いながら愛車との時間を過ごすために
長時間運転などで腰の痛みを感じる人は少なくない。が、「たいしたことない」で済ませてしまう人が大半だ。
最悪、治療も必要になるというのに……。放置すれば悪化しても、治ることはないのが腰痛。
その仕組みを理解して、予防・改善策に取り組んでほしい。
ストレスが引き起こす腰痛の負のスパイラル
ほとんどの人は、クルマに乗る際、シートを意識することはないだろう。しかし、長時間座り続けていて腰に痛みを感じた経験のある人は多く、慢性化している人も少なくない。
それは、立っているときよりも座っているときのほうが腰に負担が加わっているため。また、座った状態は、腰だけでなく、内臓も圧迫すると言われている。ちなみに、長時間座って生じる「お尻」の痛みは、狭い空間で同じ姿勢を強いられることによる血行不良が原因で、いわゆる腰痛とは分けて考える必要がある。
腰痛は何らかの原因で腰の神経が刺激されることによって引き起こされ、慢性化しやすい点も特徴だ。
腰痛を感じて、余計な負荷をかけまいと、身体を長時間動かさないでいると、それが精神的なストレスに。精神的ストレスが続くと、今度は痛みを抑制する脳の働きが機能しなくなって神経が過敏になり、より腰痛を感じるようになり、さらに身体を動かさなくなってしまうという腰痛の悪循環が引き起こされるのだ。また、痛みのことばかり考えていることも、ストレスになって慢性化の原因になると言われている。
最悪、身体を動かせないほど激しい痛みを覚えるケースもあり、この場合は、医療機関に相談して、適切な対処が必要になる。
不適切な座り方で崩れる背骨のS字ライン
もう少し詳しく腰痛のメカニズムについて説明しよう。
腰痛に大きくかかわっている身体の部位が、一般的に「背骨」と言われている脊椎(せきつい)だ。背骨は、身体を重力から支える役割を担っていて、頭蓋骨の後頭骨から骨盤まで約30個の椎骨(ついこつ)によって形成されている。
背骨の骨と骨は関節で繋がっていて、その間には緩衝材の働きをする椎間板(ついかんばん)がある。背骨は成長に伴って徐々に曲がりはじめ、やがて緩やかなS字のカーブを描き、これは人間の二足歩行に必要なバランスをとるための形状となっている。
こうした背骨の構成ゆえ、たとえば、シートの座り方が悪かったりすると、椎体が椎間板を圧迫するカタチに。神経が刺激されて腰痛が生じるのだ。
そして、圧迫が長期間続けば、やがて椎間板は退化して真っ平らに。最悪のケースになると、その中の髄核=ずいかく(椎体と椎体の間でゴム製ボールのようにクッションの働きをしている粘着性の物質)が、流れ出してしまう、いわゆる“椎間板ヘルニア”を発症するのだった。
普段、何気なく行っているシートに座るという行為は、じつは非常にデリケートで、気を遣わなければいけないことを認識する必要がある。
S字ラインのキープと骨盤を立てる意識
では、腰痛にならないためのドライビングポジション(運転姿勢)をとるにはどうすればいいか? 細かく言い出せばキリがないが、ここでは大事なことだけ覚えておいてほしい。
なににも増して意識すべきは、背骨(脊椎)が本来描いているS字ラインのキープだ。S字ラインを正しく保つことで上体の重さが均等にかかり、椎間板への椎体の圧迫、つまり、神経が刺激されることによる痛みが防げるのだ。
具体的には、シートの座面と背もたれの間にお尻を密着させて深く座ること。そして背筋を伸ばすこと。日本人は背骨が前方に向かって大きく湾曲した “猫背”の人が多く、腰痛の原因のひとつになっていると言われているが、その矯正も行うことができる。
もちろん、体格などに適した正しい背もたれの角度調整も必須で、必要以上に倒した、ふんぞり返った運転姿勢は最悪。腰痛云々を語る以前に、運転操作自体に問題があるのはおわかりいただけるだろう。
加えて、「骨盤を立てる」意識も大事だ。骨盤を立てるとは、骨盤がシートに対して水平の位置にあり、前傾でも後傾でもなく、体重が左右均等に乗っている状態のこと。腰をはじめとした身体への負荷を抑えることが可能。これもシートに深く腰かけ、背筋を伸ばした姿勢で骨盤は自然に立つという。
今回の取材でお話をうかがった国産スポーツシートのトップブランド、ブリッド株式会社の代表取締役社長・高瀬さんいわく、「腰痛防止にも効果のある運転姿勢はキチンとしていて、見た目にも美しい。たとえば、パトカーを運転している警察官が参考になると思います」。
何はさておき正しいドラポジ
(1)ヘッドレスト
目と耳の上端を結んだ線の延長線上にヘッドレストの中心がくる高さに上げておくのが、正しい運転姿勢をとったときのヘッドレストの位置。調節機構を積極的に利用したい。
(2)背もたれ
背筋を伸ばして座ると、背中が背もたれにぴったりと密着した状態になる。当然、背もたれの角度も大事。寝かしすぎるのは、正確な運転操作の妨げになるという点でも最悪だ。
(3)ヒップポイント
シートの座面と背もたれの間に隙間なく深く座るのが基本。逆に浅く腰かけた状態だと背筋を伸ばすことができず、不安定な姿勢に。腰に余計な負荷が加わってすぐに痛くなる。
(4)シート高
スポーツドライビングでは、できるだけ低重心のローポジションが望ましいが、一般的に高位置に座ることで腰への負担を軽減することが可能。前方視界をよくすることもできる。
(5)ハンドルとの間隔
両手でハンドルを握り、軽く腕が曲がった状態がもっとも操作しやすく疲れにくい。シートスライドでの前後調整や、背もたれの角度調整などで最適な位置にセッテイングしよう。
「骨盤を立たせる」がマツダ車のシートの基本
正しい運転姿勢を保つための自動車メーカーの取り組みも見逃せない。顕著なのは、長距離移動の快適性も重要視されるドイツをはじめとした欧州系メーカーのシートで、ホールド性の高さや疲労度の少なさで高い評価を得ている。車種や車格(安価・高価)を問わず採用される高品質なシートは、今まで多くの日本車が及ばない部分とされてきた。
しかし、ここにきてシート作りに積極的な取り組みを見せはじめた国産メーカーがある。マツダだ。
注目は、MAZDA 3ほかマツダ各車に採用される次世代車両構造の“スカイアクティブ・ビークル・アーキテクチャー”。「骨盤を立てる」「骨盤をキーにしてクルマをつくる」という発想から生まれた独自技術だ。
話を端折ると、人間が本来備えている高度な能力、「歩行」からヒントを得て完成に至った骨盤を立てるシートの採用が目玉で、その目的は、自分の足で歩いているような、クルマの動きを自分の身体のように感じられる「人車一体感」にあるという。
ボディやシャシー、タイヤなど個々のシステムより、シートを中心としてクルマのアーキテクチャー(構造)全体としてコーディネートしていることが、この新技術の名称の由縁となっている。
今回の腰痛の話とは関係ない話のように思えて、じつは骨盤を立たせることで、背骨が自然なS字ラインを描く点は、腰痛を防ぐ着座姿勢の理想とも符合する。しかも、それをユーザーにとくに意識させることなく、操縦性の向上とも高い次元で両立した。もはや欧州車のシートを超えたと言っても過言ではないかもしれない。
じつは国産車のシートは腰痛を誘発する形状!?
市販車のシートは、さまざまな体型のドライバーに適した着座姿勢を提供するための調整機能を備えている。しかし、日本人は小柄な体型の人が多いため、国産車の場合、ペダルに足が届きやすくするために、シートの座面前方を下方に緩やかに傾斜させて設計される傾向。すると、運転している間に着座位置が前にどんどんズレて猫背になってしまう。
前述したように猫背は疲労や、腰痛を誘発する要因。また、車格の低い車種では、(コストの関係なのだろう)腰まわりのホールド性が甘かったり、クッション性が低いシートが装着されていることが多々あり、正しい着座姿勢を取りにくく、疲れやすかったり、腰痛を引き起こす可能性を否定できない。だからと言って、腰痛になりにくいシートが装備された欧州車やマツダ車などに乗り換えるのは非現実的だ。長期間/長距離走ってヘタったシートでも同じことが言え、正しい着座姿勢の保持は難しい。
そこで問題解決のひとつとして検討したいのが自動車用品店などで手に入る汎用のスポーツシートだ。一般的にバケットシートと呼ばれ、多くの人はレーシングマシンに装着される競技専用品、シェル形状の “フルバケットシート”をイメージするかもしれないが、市販車用として、純正シート同様、さまざまな調整機能を備えたセミバケットシート、スポーツシートと呼ばれるモデルも設定されており、国産は“ブリッド”、輸入品ではドイツ製の“レカロ”がトップブランドとして知られる。
見た目の印象を覆す心地よさと腰痛予防効果
たとえばブリッド。そもそもホールド一辺倒のフルバケットシートが発祥のブランドだけに、多くのモデルが脇や肩、大腿部のサポート部を大きく張り出させた、ホールド性を追求した見た目。一般のクルマ、ドライバーには少々尖りすぎかもしれないと思いつつ、実際に座ってみると、クッションは柔らかすぎず、硬すぎず。適度に身体を包み込んでくれるフィーリングが心地いい。なにより、肝心要の背骨のS字ラインを保持するための運転姿勢を取りやすい。
「人間工学に基づいて、とくに日本人の体格に最適な設計・製品づくりをモットーにしています。確かなホールド性能は従来どおり。“ドライビングポジションをつくる会社”として、スポーツ性能だけでなく、長時間座っていても疲れにくく、腰が痛くならない快適性も追求しています」(前出・同社代表取締役社長 高瀬さん)。
さらに、「純正シートはコストの関係で、内部のウレタンの密度が低めで座ったときに身体が沈みやすいのがウィークポイント。筋肉に負荷がかかって疲れやすく、正しい運転姿勢を維持しにくい」とも。
ブリッドに交換した場合、1脚で最低でも10万円以上の出費は安くはないが、とくに腰痛で悩んでいる人にとってコストパフォーマンスは高いはず。
また、重要保安部品のひとつであるシートの交換は、車検時に気になる部分だが、「ほぼすべてのモデルで衝突実験の数値を出していて、車検対応になっている」点もありがたい。
※本記事は雑誌CARトップの記事を再構成して掲載しております
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みんなのコメント
次がシートを変えること、レカロなどの腰痛対策シートを付ける。が、これも意味をなさない様な乗り方してる人も多い。w
腰よりもお尻の方が痛くなるんだよねぇ~700km超えると。。。