スバルの新組織“スポーツ車両企画室”設立のねらいとは
スバルは2026年6月6日、富士スピードウェイで開催された「スーパー耐久」シリーズ第3戦「富士24時間レース」の会場でメディア向けのラウンドテーブルを開催。同社の取締役専務執行役員最高技術責任者(CTO)である藤貫哲郎は、2026年4月1日付で商品革新本部内に新設された“スポーツ車両企画室”のねらいを明らかにするとともに、MT車3モデルを2027年までに市場投入する計画を明らかにしました。
【画像】超カッコいい! スバルが2027年に向けて開発中の3台のMT車を写真で見る(25枚)
なぜスバルは新しいMT車3モデルを開発しているのでしょうか? その背景を深掘りします。
スバルが“スポーツ車両企画室”という新組織を設立した最大のねらいは、これまでの自動車業界では常態化していた「モータースポーツ(レースの現場)」と「量産車開発部門」との間にある見えない壁を取り払い、既存の価値観にとらわれずにピュアに走りを楽しめるエモーショナルなクルマづくりをスピーディに実現することにあるといいます。
現在の合理化された緻密な量産開発体制は、エンジニアたちが深い会話を交わさずとも精巧な車両が完成するシステムが出来上がっている一方、部署間のコミュニケーションが不足し、セクショナリズムという壁を生みやすいという課題が背景にありました。
先日、新設された“スポーツ車両企画室”は、そうした垣根を取り払い、エンジニアたちがかつてのように互いに自由に意見を交わしながら、レースの極限状態で鍛え上げられた高度な最新技術や車両制御を、ダイレクトに量産モデルへフィードバックするための戦略的な組織として位置づけられています。
そんな新組織が主導するプロジェクトの初陣として明かされたのが、2027年までに順次市場投入される予定の3台のMT車。ベールに包まれたシルエット写真とともに公開されたその内容は、スポーツカー復権を願うスバルファンの知的好奇心を強烈に揺さぶる内容となっています。
写真の左側に映るのは、スバルのモータースポーツ史においてさまざまな成功を収めてきた“TY85型マニュアルトランスミッション”を復活させて搭載する「WRX」です。
これまでの“TY75型マニュアルトランスミッション”で懸念されていた高出力への対応力をクリアすべく、次世代モデルでは歴代の「WRX STI」を支えた高強度であるTY85型の生産ラインを再整備した上で再び利用。将来の出力向上にも対応できる基盤を整えるといいます。
写真の真ん中に映るのは、軽量なFRスポーツカーというポテンシャルをさらにブラッシュアップし、レース直系の技術がフィードバックされた「BRZ」のコンプリートカー。
そして写真の右に映るのは、「ジャパンモビリティショー2025」で公開された「パフォーマンスB STIコンセプト」の市販モデルである新型「5ドアハッチバック」です。
なお新型「5ドアハッチバック」は、あえて装備を極力シンプルに抑えることで、若い世代でも手の届きやすいエントリー向けスポーツ車両というキャラクターが与えられる見込みです。
効率最優先の時代にスバルがMTにこだわる理由とは
今回発表された3台の走りの方向性を支えるのは、364馬力を発生する“FA24”型エンジンを搭載したスバルの「スーパー耐久」参戦マシン「スバル ハイパフォーマンス X バージョンII」。
このマシンは、過酷なレースデータを元に3速~6速のギヤを変更した上で、金属表面を効率的に強化する“Wショットピーニング処理”を施した結果、実証データでギヤ強度が22%も向上したといいます。また、過酷なレースとテストから得られた電子制御アシスト技術なども市販車にフィードバックされる見込みです。
シフトダウン時にエンジン回転数をミリ秒単位で完璧に自動同期させる“レブシンク(Rev Sync)”や、アクセルペダルを床まで全開で踏み込んだ状態のままクラッチを切ってもスムーズに変速できる“フラットシフト(Flat Shift)”、さらには、電子制御LSDと連動して4輪駆動のトルク配分をリア寄りに最適化する電子制御システムなどが、次世代の市販MT車には実装される見込みとなっています。
今回はあくまでコンセプト段階のアナウンスということもあり、具体的な価格などは提示されませんでしたが、3台は一部の愛好家に向けた限定のスペシャルモデルではなく、誰でも手に入れられるカタログモデル(市販車)としての登場が計画されているようです。
自動車業界は効率最優先のエコカーや電気自動車、あるいは自動化への移行が急速に進む中、クラッチペダルを持つMT車はどんどん姿を消していっています。そんな逆風の中でスバルが3台のMT車を同時開発しているという事実は、大きな驚きといえるでしょう。
この大胆なプロジェクトを支える技術的な支点は、スバルが「スーパー耐久」シリーズなどのレース現場を通じて磨き上げている、高度な“4輪車両運動制御技術”の進化にあります。
レースという極限領域において、エンジニアたちがワイワイ、ガヤガヤと意見を交わしながら「ドライバーが最も安心して全開で踏み切れる制御とは何か?」を突き詰めた結果、導き出されたのが今回の3台だといいます。
単にノスタルジーに浸るためのMT復活ではなく、最新の先進安全装備“アイサイト”とMTをハイレベルで協調させ、現代の厳しい安全基準をクリアした上で、乗り手の身体感覚とミリ秒単位でシンクロする—そんな新時代の操る楽しさを構築できる確信がスバル側にあるようです。
* * *
部署の垣根をすべて取り払い、楽しいクルマを真面目につくるというスバルのブレないクルマづくりへの原点回帰。このモータースポーツ直系のピュアなパッションは、今後の国産スポーツカー市場に対する強烈なカンフル剤となりそうです。(VAGUE編集部)
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みんなのコメント
一般ユーザーが思っている安価: ~200万
これくらい差があると思う