商品改良を受けたマツダ「ロードスター」は、ますます魅力的なスポーツカーになった! 『GQ JAPAN』ライフスタイルエディターのイナガキがリポートする。
新しいマツダ ロードスターの特徴
現代の要求に応えた結果──新型シトロエンC5エアクロス・マックス試乗記
1.概要2.改良の全貌3.特別仕様車「PS」4.走りの進化5.騒音規制適合と音質チューニング6.ジンクグリーンメタリック7.人間中心で磨き上げられた機能8.国内販売実績と変化するユーザー層9.グレード構成と価格10.総評1.概要
6月26日、マツダのロードスターおよびリトラクタブルハードトップモデルのロードスターRFが、商品改良を受けた。
ロードスターは、2シーター、フロントミッドシップレイアウト、後輪駆動(FR)、前後重量配分50:50といったスポーツカーとしての基本原則を守りながら、1gの軽量化にも取り組む「グラム作戦」を展開し、世代を超えて世界中のファンに走る歓びを提供してきた。
自動車を取り巻く環境や安全法規、環境規制が急速に変化する現代において、ロードスターが純ガソリンスポーツカーとしての価値を将来にわたり維持し、さらなる進化を遂げるべく、商品改良が実施された。
2.改良の全貌
今回の商品改良におけるトピックは、新たな特別仕様車「PS」の追加と、魂動デザイン以降では初となるグリーン系となる新塗装色「ジンクグリーンメタリック」の採用だ。
さらに、年々厳格化される車外騒音規制へ対応しながらも、ライトウェイトスポーツカーとしての生命線である走る楽しさを妥協しないための技術的アップデートが施されている。具体的には、加速応答改善制御やヒール&トゥアシスト制御の導入、さらにはレブリミット直前まで出力を絞り込まない新たなエンジン制御ロジックなど、マニュアルトランスミッション車を中心としたドライビングフィールの向上が図られた。
また、安全法規や利便性への配慮として、新たなシート安全基準に適合させるためのヘッドレスト形状の最適化や、マツダコネクトにおけるスマートフォン連携機能のタッチパネル操作対応など、多角的なリファインも実施。
商品改良モデルの予約受付は発表と同時に開始され、実際の発売は2026年9月上旬、新色のジンクグリーンメタリックについては10月上旬からの生産開始が予定されている。
3.特別仕様車「PS」
新設定された特別仕様車「PS」は、ソフトトップモデルの「S Special Package」をベースに開発され、「MODERN SHARPNESS」をデザインコンセプトに掲げている。
工業製品のプライマーから着想を得たボディカラーと、シルバーのアクセントを掛け合わせることで、独自の世界観を構築した。
外観において目を引くのは、インシュレーターが追加されたグレーのクロス製ソフトトップであり、これにブラック塗装が施されたRAYS社製の16インチ鍛造アルミホイールが組み合わされる。
ブレーキシステムには、フロントにシルバー塗装が施されたBrembo社製のベンチレーテッドディスクおよび対向4ピストンキャリパーが備えられ、前後ともに大径ブレーキローターを採用した。
室内では、シートにスエード調表皮である「レガーヌ」を採用。随所にグレーのステッチをあしらう。エアコンルーバーの加飾は外側をブラック、内側をシルバーとすることでコントラストを強調し、かつ空調ダイヤルやエンジンスタータースイッチリングをブラックに統一。
また、走りのメカニズムとしてビルシュタインのダンパーとフロントサスタワーバーが標準装備され、後述する専用のサスペンションチューニングと相まって、ダイレクトで安心感のあるハンドリングを実現したとうたう。
4.走りの進化
マツダは、2025年に限定生産された「MAZDA SPIRIT RACING ROADSTER」の開発を通じて、多くの走行データや最先端の制御技術を蓄積してきた。
今回の商品改良では、サーキットで磨き上げられた知見や制御ロジックが量産モデルへ投入されている。
特に、新設定の特別仕様車「PS」および既存のソフトトップモデル「RS」においては、16インチタイヤの特性変化に合わせてサスペンションの全面的な専用セッティングを実施。専用設計されたビルシュタイン製ダンパーの採用により、タイヤ剛性の変化に細かく追従し、応答性と安定性を高次元でバランスした。
エンジン制御の領域においても、MT車を対象にアップデートを敢行。アクセル操作に対する反応の速さを徹底的に突き詰めた「加速応答改善制御」が新たに導入され、日常の市街地走行における扱いやすさから、ワインディングロードでのリニアな加減速にいたるまで、ドライバーの右足の動きとシンクロする軽快な走りを実現したという。さらに、減速時のシフトダウンを滑らかにする「ヒール&トゥアシスト制御」も組み込まれた。
また、従来のモデルではレブリミットに近づくにつれて出力が緩やかに制限される傾向があったものの、今回の改良ではレブリミット回転直前まで出力を絞り込まずに最高出力を維持して走行できるよう制御を変更した。
5.騒音規制適合と音質チューニング
最新の車外騒音規制への適合は、スポーツカーの開発において高いハードルとなるものの、マツダは「走る楽しさは絶対に譲らない」の強い意志のもとでこの課題をクリアした。
規制に適合させるため、まずトレッドゴムの硬度やトレッドパターンを最適化した新たな静音タイヤを開発し、車外へ放射されるロードノイズを大幅に低減させた。一般的にタイヤの静音化は路面からのダイレクトなインフォメーションを希薄にさせる懸念があるものの、マツダはタイヤの特性変化に合わせて電動パワーステアリングの制御を最小限に抑える最適化を行うことで、ロードスターならではの軽快感やコントロール性を損なわないハンドリングフィールを維持した。
さらに、排気系ではサイレンサーを大型化することで車外騒音を大幅に抑制しているが、これに伴ってRFモデルではトランク深底部の寸法が一部見直された。
しかし、音量を下げるだけではスポーツカーとしての情緒が失われてしまうため、吸排気系に専用設計のレゾネータやリブを新設。ドライバーの耳に心地よく響く音質へのチューニングが施された。1.5リッターエンジンは軽快に気持ちよく吹け上がる音色を、2.0リッターエンジンはパワーを感じさせる力強い音色を、必要以上に音圧を上げることなくクリーンに響かせるロジックがつくり上げられている。
さらに、エンジンの吸気音を直接車内へと導くことでエンジンの状態をドライバーへと伝える「インダクションサウンドエンハンサー(ISE)」が、今回の改良によってソフトトップモデル全車へと標準装備した。
6.ジンクグリーンメタリック
ND型ロードスターの登場から11年目を迎え、デザイナーの瀬能海翔を中心とするチームが提案したのは、ロードスターの歴史において約10年以上ぶりとなる待望のグリーン系ボディーカラー「ジンクグリーンメタリック」の新規採用だ。
このカラーは、高い耐久性を持たせるための防錆塗料である「ジンククロメートプライマー」の色や、独特な鈍い質感から着想を得て開発されたという。
一般的にグリーンは、新緑や大自然といったネイチャーなイメージに偏りがちであるものの、マツダは都市のモダンな建築群の中でも、深い自然の陰影の中でも等しく美しく映えるクールな印象を追求するため、塗料の層にブルーのマイカを配合。これにより、低明度でありながらもしっかりとした彩度感がキープされ、ソリッドライクでありながらも光の当たり方によって表情を変える、重すぎない絶妙なメタリックカラーが誕生した。
これはマツダの「魂動デザイン」が始まって以来、初となるグリーン系への挑戦だった。
7.人間中心で磨き上げられた機能
今回の商品改良では、8.8インチのセンターディスプレイにおいて、Apple CarPlayおよびAndroid Autoの接続時に限定してタッチパネル操作機能が新たに追加された。
これにより、スマートフォンアプリのナビゲーションやオーディオ操作を、より直感的に素早く行うことが可能となり、利便性が向上している。
また、安全性の領域では、「危険な状況に陥ってから対処するのではなく、事故につながる前の段階から安全について考え設計する」といったマツダ独自の安全思想「MAZDA PROACTIVE SAFETY」に基づき、さらなる強化を実施。
今回の大きな変更点として、将来的なシート安全基準の改定を先取りし、追突時の乗員保護性能をさらに高めるべく、ヘッドレストの高さおよび形状の最適化が図られた。
これに加え、前方の車両や歩行者、自転車を検知して衝突の回避や被害軽減を図る「スマート・ブレーキ・サポート(SBS)」をはじめ、後方検知機能(SBS-R)、後進時左右接近物検知機能(SBS-RC)を全車に標準装備。
さらに、夜間の圧倒的な視認性を確保する「アダプティブ・LED・ヘッドライト(ALH)」や、設定した速度での追従走行をアシストする「マツダ・レーダー・クルーズ・コントロール(MRCC)」が、グレードやメーカーセットオプションに応じて展開される。
8.国内販売実績と変化するユーザー層
マツダの国内ブランドビジネス統括本部の神田篤より示された販売データによると、現代におけるロードスターの市場ポジションはユニークであり、かつ盛り上がりを見せている。
一般的にスポーツカーセグメントは、新型の発売初年度から2年目にかけて販売のピークを迎え、その後は徐々に下降していくライフサイクルをたどるのが通例とのこと。
しかし、現行の4代目(ND型)ロードスターは、35周年記念車の導入効果なども大きく寄与し、発売から実に11年目となる2025年において、過去最高となる年間10,002台の登録実績を記録した。
顧客の年齢構成比を見ると、全体の中心となっているのは50代(34%)であり、40代以上が全体の約7割を占める。しかし、特筆すべきは過去6年間における20代以下の若年層の販売台数が約2倍に増加している事実だ。さらに、20代の購入者における女性比率は年々上昇しており、2020年の年間56台から、2025年には291台へと約5倍に急増、過去6年間で女性比率が10%以上も高まっている。
さらに中古車市場(ND型)においては、購入価格のハードルの低さから20代以下の割合が28%へとさらに高まっているという。
9.グレード構成と価格
商品改良を経た新しいマツダロードスターの価格体系は、付加された機能や規制適合に伴うコストを反映し、現行モデルから値上げされた。
ソフトトップモデル(SKYACTIV-G 1.5搭載)のうち、もっともピュアな軽量感を味わえるエントリーモデルの「S」は、現行の¥2,898,500から¥2,959,000へと変更された。主力グレードとなる「S S-package」は¥3,087,700から¥3,146,000へ、「S L-pkg」は¥3,498,000から¥3,553,000へとなった。ベージュ幌とタン内装を組み合わせた「S L-pkg V Section」は¥3,553,000から¥3,608,000となり、今回新たに設定された注目の特別仕様車「PS」は、充実した走行装備とRAYSホイール、ブレンボのブレーキを標準装備しながら、¥3,663,000と競争力の高い価格が設定された。サーキット走行までを見据えた最上位スポーツモデルの「RS」は¥3,679,500から¥3,740,000へ、モータースポーツのベース車両となる「NR-A」は¥3,064,600から¥3,124,000へとそれぞれ改定されている。
リトラクタブルハードトップのRFシリーズも、同様の改定を実施。ベーシックモデルの「RF S」は、現行の¥3,796,100から¥3,850,000へ、本革シートを備えた「RF VS」は¥4,154,700から¥4,213,000へと変更。そして、2トーンルーフやアルカンターラとナッパレザーのRECAROシートを標準装備する最高峰の「RF RS」は、¥4,308,700から¥4,367,000へと変更されている。
10.総評
新しいマツダロードスターは、発売から10年以上が経過したND型の熟成のモデルイヤーにありながら、目覚ましい進化を遂げた。
2026年5月31日に開催された「軽井沢ミーティング2026」において、熱狂的なファンへいち早く披露された際にも、会場からは「新色のジンクグリーンメタリックは深い緑色で、光の当たり方で色味が変わる、今までにないシックでお洒落な感じ」「発売開始から10年以上経っても途切れることなく新色や新しい提案を出してくる、マツダのロードスターにかける熱い想いがしっかりと伝わってくる」といった、称賛の声が多数寄せられたという。
最新の環境規制や安全法規という、スポーツカーにとって時に逆風ともなり得る時代の要請を、マツダはエンジニアリングと人間中心のデザインアプローチによって、ロードスターの本質である「走る歓び」をさらに研ぎ澄ますための機会へと変えてみせた。
特別仕様車「PS」の追加や制御技術のアップデートは、熟年層から急速に拡大する若い世代まで、幅広いオーディエンスに対してオープンスポーツを操る幸せを提供し続けるに違いない。
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