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軽トラからカプチーノ……日本の軽自動車が広大な国でなぜウケる? 「25年ルール」で解禁となった軽がアメリカへ流出中!

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軽トラからカプチーノ……日本の軽自動車が広大な国でなぜウケる? 「25年ルール」で解禁となった軽がアメリカへ流出中!

 今、アメリカでは、25年経って輸入が認められた1995年以前に製造された日本車がブームになっているが、そのなかでも軽自動車が人気というのに驚かされる。

 そもそも軽自動車は、日本同時の軽自動車規格の枠にハマった日本独自のガラパゴス的な自動車で、日本の国土の25倍もあり、道路も広く、駐車場も止めるスペースを気にすることのないアメリカなのに、なぜ人気なのか? まさに摩訶不思議だ。

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 なぜアメリカで日本の軽自動車が人気なのか? 筆者がLAのイベントや軽自動車を販売している業者に話を聞きながら、その理由を探ってみた。

文/加藤久美子(Kumiko Kato)
写真/加藤博人(Hitoto Kato)

[gallink]

■アメリカ人にとって軽自動車とはどんな存在なのか?

カリフォルニアナンバーを付けているホンダアクティトラック

 11月初旬、ベストカーwebにて、第16回JCCS(日本旧車集会)の様子をお伝えしたが、そのJCCSにも近年は軽自動車の参加が増えている。車種はスズキ・カプチーノ、ホンダ・ビート、オートザムAZ-1などのオープンモデルや、アクティ、キャリイなどの軽トラだ。

 主催者によると軽自動車の参加は近年とても増えているとのこと。ちなみに、JCCSは参加条件にいろいろな基準があり、そのなかのひとつに『1995年以前に製造された日本車』という項目がある。

 実はこちら3~4年前まで『1985年以前に製造された日本車』であった。それが日本車好きな人々の要望によって、1985年→1995年に延長された。25年ルールでアメリカに輸入されて合法的に登録された軽自動車の参加がどっと増えた、ということも理由のひとつだろう。

 アメリカ人にとって軽自動車とはどんな存在なのだろうか? もちろん、アメリカに「軽自動車」という規格があるわけではないので、それほど興味がない人にとっては「日本のコンパクトカーのなかでも特に小さいクルマ」という程度の認識を持つ人が大半だと思われる。

 しかし、アメリカの日本車ファンの間ではすでに「Kei-CAR」「kei-tora」などという呼び名が浸透しており存在感や注目度は抜群だ。「Kei」という言葉は認知されており、クルマ好きの間ではJDMの人気カテゴリーとして定着しているのだ。

 なお、アメリカでは「Kei-CAR」のサイズ感を説明する際small(スモール)ではなく、tiny(タイニー)と呼ばれることが多い。タイニーはスモールよりも小さいものを指すが、単に物理的な小ささだけではなく「ちっちゃくてかわいい、愛らしい」という意味を込めて使われる。

 アメリカではカローラやRX-7(FD)、32GT-Rですら「コンパクト」というカテゴリーになるので、軽トラはまさに「タイニー」に相応しい、アメリカには存在しない小さくて愛らしい存在なのだろう。

■注文に対して納車が追い付かない! 軽トラ人気急上昇

日本で使われていた軽トラは、新車の時から錆び防止の加工などがきちんとしてあって感心するほどだという

 軽トラが人気の理由。それは実用性と見た目のかわいらしさ、ごくごく小さな車体でありながら、機動力があり、また荷物がたくさん積めること。

 もちろん日本の実用車としての優れた品質、整備性の良さ、汎用性がありタフでハードな作業も難なくこなす。操作性に優れており燃費もいい……

 軽自動車を数多く扱うアメリカの中古車販売業者は軽トラ人気の理由を以下に分析する。

 「日本の軽トラが大人気で、注文に対して納車が追い付いていません。人気の理由は小さいボディに使いやすい荷台がついており機動性は最高です。そして、品質も素晴らしく、またアフターパーツの入手がしやすい。

 構造がシンプルで耐久性があるので25年~30年以上前のクルマでも全く問題なく使い続けることができます。これが、軽トラが支持される理由でしょうね。実用性を重視して買う人もいれば、これぞ日本車! これぞJDM! というイメージで日本車らしい、珍しいスタイルだから買う人もいます。

 なお、日本からの中古車に対して全般的に言えることですが、走行距離が短いこともクルマの価値を高めています。日本で30年使われている軽トラであっても驚くほど走行距離が少ない。

 輸出業者に聞いたことがありますが軽トラは日本では年を取った夫婦が農作業に使うことが多いそうですね。家と農場との往復に使うことが主なのであまり遠出をしないのでしょうか。高速道路も十分走れるパワーはありそうですが。

 また、新車の時から錆び防止の加工などがきちんとしてあって、毎回、軽トラを見るたびに感心します。そうそう、あとは日本から輸出する際、業者がクルマをキレイにしてくれるんですがこれが本当に助かります」

 実際に数か月前に軽トラを購入したカリフォルニア州の女性は農場で使っているという。

 「農場を見回るのにとても便利です。これまでは電動カートを使っていましたが軽トラにしてから作業効率がグンと上がりました。登録から25年を過ぎたクルマでも力強くグングン走ります。また5速MTというのもいいですね。運転が面白いです。長年AT車しか乗ってこなかったのでとても刺激的です。

 あの形がいいですね。収穫した農作物などをさっと荷台に載せられます。アメリカのピックアップトラックは大きすぎて、また荷台の位置が高く積み込むのも一苦労ですが軽トラックは荷台の位置が低く、三方向から詰めるのが凄いです。

 日本のメーカーは、本当に使う人の立場に立って設計しているのだなあと、いつも驚いています」。

■2021年から「解禁」のダイハツ・ミゼットIIの販売もスタート

1996年から生産されたミゼットIIは25年ルールが解禁されたのでアメリカでの販売、登録が可能になった

 アメリカで人気の軽トラはスズキ・キャリー、ホンダ・アクティ、ダイハツ・ハイゼットがトップ3となっている。このほか、スバル・サンバーや三菱ミニキャブ、それぞれの「ダンプ仕様」「4WD」はとくに評価が高い。

 1991年登録の軽トラが160万円程度で販売されているのも珍しくない。一般的に価格は$6000~$8000が中心で、スカイラインGT-Rのような高騰はないだろう。

 また、なお、購入目的は少々異なりそうだが、2021年に25年ルール解禁となったばかりのダイハツ・ミゼットIIもこれからコレクターに人気が出そうだ。

 ミゼットIIは1996年から生産が開始されたので、早いものでは2021年、今年からアメリカへでの販売、登録が合法となる。

 2つの店舗合計で月に80台ものJDMを販売するヴァージニア州にある中古車販売店「ダンカンインポート」も早々にダイハツ・ミゼットIIの扱いを始めた。

 現在6台所有しているがうち4台はダンカン社長のプライベートコレクションで販売はされていない。販売されている2台は、それぞれ$7990と$11999の価格がついている。

 同社は日産フィガロの専門店としても有名でフィガロだけで在庫は200台以上。軽トラも数多く手掛けてきた。

 ミゼットIIは軽トラとして好まれるというよりも、その独特のデザインや見た目のインパクトでフィガロやパオなどのパイクカーと同様のイメージで好まれるという。つまりコレクターズアイテムとしてとらえられているのだろう。

 ところで、アメリカには「新車の軽トラ」も販売されていることをご存知だろうか? 一般的には「製造から25年経過していれば、アメリカの保安基準『FMVSS』や『EPA』(排ガス基準)の影響を受けることなく、アメリカに輸入して販売、一般オーナーへの登録が可能となる。

 それで、アメリカで販売されている軽トラは1990年~1996年製造までの車両がほとんどなのだが実際は新車の軽トラが販売されるのをたまに見かける。

 これは州によって判断が異なるところもあるようだが、軽トラをゴルフ場の電動カートなどと同様の扱いに限定するならば、25年を経ずとも新車の段階で輸入が可能になる方法で輸入したと思われる。ただし、時速は低速(約40km/h)までしか出ないよう設定する、高速道路には乗れないなど、様々な諸条件がある。

■軽トラ以外は軽オープンカーが人気!

カプチーノやビート、AZ-1の人気も凄いという

 さて、軽トラ以外で人気のモデルと言えば、オートザムAZ-1やホンダ・ビート、スズキ・カプチーノといった「平成ABCトリオ」などのオープンカーだ。前述したJCCSの会場にて、カプチーノで参加しているオーナーに話を聞くことができた。

 こんな小さなクルマに体の大きなアメリカ人が乗って狭くないんだろうかと、素朴な疑問から聞いてみた。

 「見た目は確かにとっても小さいのですが、中に入ってみると意外と狭く感じないんですよ。もちろん運転に支障もありません。2シーターですからね。シートのスライドを一番後ろにすれば全然窮屈ではありませんし、快適に楽しく運転ができますよ。トランクも結構荷物が入りますし、車内にもいくらかは置けます。

 最初は日産フィガロを探していたんです。それでフィガロの在庫があるお店にクルマを見に行ったら、そこにカプチーノがありました。

 なんだこれは!? フィガロよりさらに小さい! 面白い! こんな小さなオープンカーなんて、ユニークなクルマだなあ。なんとも言えない独特のデザインにひと目惚れしてしまいました。フィガロを買うつもりで出かけたのですが、気づいたらカプチーノを買っていました(笑)」。

フィガロを買うつもりでお店に行ったらカプチーノが置いてあり、ひと目惚れして購入したという

大きな身体のアメリカ人が小さい軽自動車に乗っているのがなんとも不思議

POPなカラーリングが目を引くカプチーノたち。なんだかどこかで見たような……

 また、今回訪れた興味深い場所のひとつに「RENT JDM」というショップ&ミュージアムがある。

 こちらは、RX-7(FD)、スカイラインGT-R(R32/R33/R34)、ハコスカ、ケンメリ、スープラ(A80)、NSXなどアメリカで非常に高い人気の貴重なJDMの展示や解説ツアーも行うほかJDMの販売も行っている。

 その際に試乗することも可能だ。このRENT JDMの一角にもキュートでポップなカラーリングのカプチーノがかわいらしく並んでいる。

 オーナーのクレッグさんによると、

 「カプチーノは軽オープンカーのなかでも、一番人気がありますよ。アメリカには存在しないとても小さなオープンカーですが、運転の楽しさと見た目のかわいらしさで幅広い年代で人気があります。みなさん、こんなに小さくてもちゃんと走るオープンカーの存在にまずは驚きますね」。

 アメリカで人気があることが、日本の軽トラや軽オープンの値段を高騰させている? というウワサもあるが、日本が誇る小さな「Kei」が大きなトラックばかりのアメリカでその独自性が評価され人気となっていることは、誇らしく微笑ましくもある。

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みんなのコメント

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  • アメリカでは車検もなく移動距離も多いから驚く程、走行距離がいった車が高値の中古車として販売されている。それでいてトラックは大型で燃費も悪く取り回しも悪い。日本の軽は車検で定期的にメンテナンスも行われているし、近所使いがメインなら走行距離も少ない。ましてや13年超えると税金高くなって手放す車も多いから、アメリカで人気なのは必然だし嬉しいね。
  • 燃費や整備を考えれば自分だけで楽しいサイズ感なんだね
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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