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マツダSUVに熾烈な生存競争 違い出せるか CX-30、3、5の個性と苦悩

掲載 更新 32
マツダSUVに熾烈な生存競争 違い出せるか CX-30、3、5の個性と苦悩

 2019年10月に登場した小さめのミドルSUVであるマツダCX-30の販売は、2500台の月間販売目標台数に対し発売から5月までの販売台数の合計は約2万3000台(月平均約2800台)と、新型コロナウイルス禍の影響も考えればまずまずの好調である。

 そのいっぽうでマツダにはCX-30を基準にすると下にコンパクトSUVのCX-3と上にミドルSUVのド真ん中となるCX-5がある。

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 CX-3は一時消滅の危機にあるという情報もあったが、新エンジンを追加するなど今後存続することが明らかになった。

 現在のマツダではSUVが販売の中心になっているが、「CX-30とクロスするところもある2台は共存できるのか?」を考察する。

文:永田恵一/写真:MAZDA

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CX-3とCX-30の成り立ち

 CX-3とCX-30が共存できるのかを考える前に、それぞれを簡単に紹介しておこう。

 2015年2月に登場したCX-3はキャビンやラゲッジスペースといったスペースをほぼ気にせず、スタイルを流麗にすることに注力した現在のマツダ2ベースのコンパクトSUVである。

 登場当初はマツダ2のものに対し最大トルクを太くした1.5Lディーゼルターボのみの設定だった。

CX-3は2015年2月にデビュー。デビュー時はSKYACTIV-D 1.5だったが、2018年5月にSKYACTIV-D 1.8に変更されるなど細かく改良されている

 CX-3もスカイアクティブ戦略後のマツダ車らしくほぼ毎年何らかの改良を受けている。

 そのなかでも大きかったのは2017年の2Lガソリンの追加と2018年に行われたディーゼルターボの1.5Lから1.8Lへの変更を含んだビッグマイナーチェンジである。

 また2020年5月にはFFなら200万円以下の車両価格となる1.5Lガソリンモデルも追加されている。

 CX-30は全長4395×全幅1795×全高1540mmというタワーパーキングにも入るミドルクラスとしては小さめのSUVで、成り立ちとしては新世代のプラットホームを使うマツダ3のSUV版的存在である。

CX-30はクーペタイプのクロスオーバーSUVとして2019年10月から日本で販売開始。電気自動車のMX-30はこのCX-30がベースとなっている

 エンジンはCX-3と同じ2Lガソリン、1.8Lディーゼルターボ、点火にプラグも使うガソリンエンジンながらディーゼルエンジンのように圧縮着火とすることで動力性能と燃費を高次元でバランスさせたという2LのスカイアクティブXという3つを設定する。

 スカイアクティブXを別にすれば、CX-30最大の魅力はスタイルとクオリティの高いインテリアだろう。

CX-3とCX-30は共存できるのか?

 まずCX-3とCX-30の車格をトヨタのSUVで例えれば、CX-3がライズ(やや異なるところもあるが)、CX-30はC-HRに相当し、車格としては十分な違いがある。

 しかしCX-3の2Lガソリンと1.8Lディーゼルターボを買う場合に、「新車を買うならこのくらいは欲しい」と感じるそれぞれFFのプロアクティブSパッケージの価格は現在2Lガソリン/248万6000円、1.8Lディーゼルターボ/278万9600円だ。

CX-30は内装材などにもこだわったインテリアが好評。クーペタイプながら全高はCX-3とほとんど変わらないため、快適性も充分にある

 いっぽう同じエンジンを搭載するCX-30でCX-3のプロアクティブSパッケージとそう変わらない装備が着く2Lガソリンの20SのFF/239万2500円、同等以上の装備が着く1.8LディーゼルターボのXDプロアクティブ/288万7500円だ。

 つまり2LガソリンはCX-30のほうが安く、1.8LディーゼルターボでもCX-30はCX-3より約10万円高いだけと、これではCX-3がよほど好きかボディサイズの制約のある人以外はCX-30を選ぶ方が自然だ。

CX-30の次世代ガソリンエンジンSKYACTIV-Xは2020年から販売開始。クリーンディーゼルとの価格差が大きく販売面では苦戦している

 しかし5月に追加された1.5LガソリンはFF車なら上級の15Sツーリングでも199万1000円と、先行者追従型のアダプティブクルーズコントロールが付けられないなどの条件はあるにせよ、ここまで安ければ街乗り中心のコンパクトSUVという明確なキャラクターができた。

 それだけに1.5Lガソリンの追加がCX-3のポジションをハッキリさせ、CX-30との差別化に大きく貢献していると言える。

CX-3はライバルSUVに比べて割高なイメージがあったが、200万円以下から購入できる15Sの追加(2020年5月)により存在価値と大きな武器を手に入れた

プラットフォームはコンパクトカーのマツダ2だから広々しているわけではないが、ライバルに比べてインテリアの質感は高い

■CX-3価格帯
・ガソリン:189万2000~288万3200円(1.5L)/248万6000~314万800円(2L)
・ディーゼル:249万2600~341万5800円(1.8L)

■CX-30価格帯
・ガソリン:239万2500~335万3880円(2L)/329万4500~403万6980円(2L SKYACTIV-X)
・ディーゼル:288万7500~362万8880円(1.8L)
※両車とも特別仕様車含む

■CX-3の2020年の販売台数
◎1月/287台 ◎2月/376台 ◎3月/527台 ◎4月/154台 ◎5月/155台

■CX-30の2020年の販売台数
◎1月/2949台 ◎2月/3707台 ◎3月/5643台 ◎4月/1278台 ◎5月/959台

CX-5の成り立ち

 CX-30とCX-5の共存を考える前に、CX-3とCX-30と同様にCX-5を簡単に紹介しよう。

 現行型で2代目モデルとなるCX-5は2017年の登場で、機能面は基本的にマツダのスカイアクティブ技術を全面的に盛り込んだ第一号となった先代CX-5を踏襲しており、いわばマツダ3の先代モデルとなる3代目アクセラを「オーソドックスなSUVにしたもの」というポジションにある。

 現行CX-5は2Lガソリン、2.5Lガソリン、2018年に加わった2.5Lガソリンターボ、2.2Lディーゼルターボという4つのエンジンを搭載する。

 新しさは薄いものの、全体的な仕上がりは良好なだけに2020年も5月までの販売は月平均約2300台と着実に売れているのも納得できる。

マツダのイメージを変えた初代CX-5の後を受けて2017年2月から販売開始された現行。内外装、走りのすべての質感が大幅にアップ

CX-30とCX-5は共存できるのか?

 まず車格としてはどちらもミドルSUVながら、冒頭に書いたようにCX-30は小さめ、CX-5はド真ん中とCX-3とCX-30同様にトヨタのSUVで例えればC-HRに相当するCX-30、RAV4に相当するCX-5と明確に差別できている。

ディーゼル同士を比べると、CX-5の2.2Lに対してCX-30は1.8Lとなる。CX-30の車重は軽いが、2.2Lの圧倒的なトルクによる爽快感にはかなわない

 次にそれぞれの価格を見ていこう。

 なおCX-30のスカイアクティブXに関してはまだ生まれたての技術というのも考慮する必要があるにせよ、現状では「燃料コストを含めた燃費と動力性能は2.2Lディーゼルターボに劣り、フィーリングも騒音関係が未成熟。価格は2.2Lディーゼルターボより高価で、クルマそのものにスポーツ性などの魅力も特にない」というのが率直な印象だ。

SKYACTIV-Xはマツダ3に初搭載され、マツダのSUVでは唯一CX-30に搭載されている。ディーゼルの出来がいいだけに状況は厳しい

 そのため新しもの好きやマツダファン以外には勧められず、一般ユーザーの選択肢に入れにくい。

 まず2LガソリンFF同士で装備内容の近いCX-30とCX-5を比べると、CX-30は20S/239万2500円、CX-5は20S/261万8000円と、まあ車格の違い相応といえるだろう。

 しかし比較対象をディーゼルターボのFF同士に変えると、装備内容が近いのはCX-30 XDプロアクティブ/288万7500円、CX-5 XDスマートエディション(最近加わった特別仕様車)/297万円と、約9万円しか変わらない。

 CX-30とCX-5を比べると車格による乗った印象の違いは明確で、動力性能は排気量の400cc差だけでなくエンジンのコンセプトもありCX-30では話にならない。

 乗り心地も乗り心地もリアサスペンションがCX-30/トーションビーム、CX-5/マルチリンクとなるだけにCX-5の圧勝だ。

CX-5のXDは大トルクによる加速感もさることながら、足回りのチューニングもしっかりとされているのでハンドリング、乗り心地ともCX-30を凌駕

 それだけにディーゼルのCX-30とCX-5に関しては、CX-3とCX-30の2Lガソリンや1.8Lディーゼルターボ同士と同様に内外装などでCX-30に惚れ込んでいるか、ボディサイズの制約でもない限り、CX-5を選ぶほうが自然だ。

 そのため「CX-30とCX-5の共存は総合的に見ると微妙」というのが結論で、ユーザーもそのあたりをよく見ているため、登場から3年の経ったCX-5が販売で意外に健闘しているのではないだろうか。

■CX-30価格帯
・ガソリン:239万2500~335万3880円(2L)/329万4500~403万6980円(2L SKYACTIV-X)
・ディーゼル:288万7500~362万8880円(1.8L)

■CX-5価格帯
・ガソリン:261万8000~296万4500円(2L)/284万9000~397万1000円(2.5Lターボ)
・ディーゼル:293万7000~408万6500円(2.2L)
※両車とも特別仕様車含む

■CX-30の2020年の販売台数
◎1月/2949台 ◎2月/3707台 ◎3月/5643台 ◎4月/1278台 ◎5月/959台

■CX-5の2020年の販売台数
◎1月/2740台 ◎2月/2982台 ◎3月/4196台 ◎4月/947台 ◎5月/831台

まとめ

 一時は現行モデル限りという噂もあったCX-3だが、延命措置的な1.5Lガソリンの追加があったこともあり、次期モデルもあるようだ。

 CX-3の次期モデルが現行モデルのスペシャリティなSUVというコンセプトをどうするのか定かではないが、決して大きくないマツダのなかでミドルクラスまでのSUVが3台あること自体も現状を見ると車種が多過ぎる感も否めない。

 そう考えるとミドルクラスまでのマツダのSUVは今後価格を含めた慎重な商品戦略が必要なのではないだろうか。

マツダは現在日本でCX-3、CX-30、CX-5、CX-8という4タイプのSUVを販売している。写真の3列シートSUVのCX-8が日本のフラッグシップだ

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