BMWの超高性能セダン「M5」のビッグマイナーチェンジモデルに、小川フミオが試乗した。長年、ラインナップされているM5ならではの魅力とは?
過激すぎるM5コンペティション
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BMW製のロケットセダン「M5コンペティション」に試乗した。BMWといえば、ずっとスポーツセダンで通してきたものの、昨今の「3シリーズ」や「5シリーズ」などがだいぶ“おとなっぽく”なり落ち着いてしまったのではないか? という旧来のファンが間違いなく喜ぶはずの、かなり走りの楽しいモデルだった。
2017年に登場して、2020年6月に本国でマイナーチェンジを受けた現行M5は第7世代になる。4ドアセダンのかたちをしているのが信じられないほどのスポーツドライビングが体験出来た。同時にスタイリッシュでもあり、そんじょそこらのセダンでは満足しないひとに、勧めてみたいモデルだ。
ベースは欧州でベストセラーのプレミアムミドルクラス、5シリーズ。それもあってか、公道では意外なほどジェントルだ。しかし、サーキットに到着して、赤い「M」ボタンをひと押しすれば、性格が豹変する……はず。ただし、残念ながら筆者は公道でしか試乗出来なかった。
M5コンペティションが搭載するV型8気筒ガソリンターボ・エンジンは、最高出力460kW(625ps)、最大トルク750Nmというすさまじきパワーを炸裂させる。
5mをほんの少しだけ切る全長のボディに、4.0リッターを超えるV型8気筒ガソリンターボ・エンジンを搭載し、あふれるばかりのパワーを4輪駆動システムで受け持つ。メルセデスAMGの「E63S 4MATIC+」と正面からぶつかるモデルだ。
昨今のメルセデスAMGモデルは、概して足まわりが硬く、スポーツ走行むきのキャラクターがより強調されているように思える。
それでも、“競争”を意味する“コンペティション”というサブネームが与えられるだけあって、M5コンペティションはスポーティさで上をいっている。
後輪駆動も選べます
“ウルトラ”と、つけたいほどクイックなステアリングをはじめ、アクセルペダルの踏みこみに対しての素早い加速、ボディのロールを抑えた足まわり、そして強力なブレーキ……と、スポーツセダンの条件をほぼ満たしている。髙性能ぶりを副詞でさらに補うとしたら"猛烈に”という言葉が合う。
ステアリング・ホイールはわずかに切っただけでも、即座にボディが反応して動く。最初乗ったとき、びっくりするかもしれない。それぐらいすばやい。けれど、すぐに慣れるだろう。慣れれば、からだと車体が一体化したように感じられてくる。そこがM5の美点だ。ダイレクトな感覚ゆえ、ほかのセダンに乗り換えると、つまらなく思えてくるほどである。
高速での追い越しでは、ちょっと踏んだだけで、まさにロケットのようなかんじで速度を上げる。車内の騒音レベルは低いし、乗り心地は意外なほど快適なので、加速していくときの速度感はちょっと希薄かもしれない。
M5コンペティションには、ドライブモードに「トラック」(サーキット)がもうけられている。そして、DSC(ダイナミックスタビリティモード)を長押しすると、走行安定性に寄与するDSCシステム(横滑り防止装置)がカットされるとともに、後輪駆動も選べるようになる(通常は4WD)。サーキットを楽しむモードだ。
ふつうの道では、「ロード」あるいは、よりビシっとした乗り味が好みなら「スポーツ」を選ぶ。そのとき、より細かく、「エンジン」「シャシー」「ステアリング」「ブレーキ」の設定を変更できる。「ステアリング」と「ブレーキ」は「コンフォート」か「スポーツ」。あとのふたつはさらに「スポーツプラス」がくわわって3段階から選択して組み合わせていく。
36とおりの組み合わせから選ぶセッティングのうち2つは、車両が記憶してくれる。ステアリング・ホイールの赤い「M」ボタンを左親指で押すと「M1」、右親指は「M2」と2パターンを気分や状況ですぐに選べるのが特徴だ。
M5コンペティションは、M5より車高を7mmほど落としたうえで、サスペンション・システムのスプリングとダンパーの設定も、サーキット走行を視野に入れたコンペティションモデル専用になっている。「M8グランクーペ」とダンパー設定は共用とのことで、スポーツ性と快適性の両立をうたう。
さきに触れたとおり、3段階あるダンパーのチューニングでもっとも硬い設定を選んでも、路面からの突き上げが激しく感じられることはなかった。タイヤはフロントが275/35ZR20で、リア285/35ZR20なので、かなり幅広で、かつ扁平。それゆえ、すこしゴツゴツとしている。けれども乗り心地には影響しない。サスペンション・システムがうまく機能しているのだ。かんぺきともいうべきフラットな乗り心地に感心した。
4ドアセダンとしての実用性は十分
M5といえば、1985年に登場した初代は、「M1」用の6気筒ユニットを搭載していた。M1は、BMWがモータースポーツのために開発したスポーツカーだ。しかし当時、生産体制の不備があって思うような成績を残せなかった。そのクルマのために開発されたエンジンなのだから、初代M5はおおいに話題を呼んだのを記憶している。
V8エンジンに代わったのは、1996年登場の第4世代から。5.0リッターV8という大きなエンジンをフロントに載せるようになって、だいぶ印象が変わったのをおぼえている。直線道路でやたら速く、ドイツのアウトバーンで乗るのがもっとも向いているクルマだなあと思ったものだ。
最新のM5は、ところが、どこにエンジンが載っているかわからないぐらい、大きなエンジンをフロントに搭載していることなど忘れさせる。カーブでもライントレース性はよく、速度を上げていっても外側へとふくらもうとなどしない。
足まわりはびしっとしていて、車体のノーズが上下に動くピッチングのような動きも皆無だ。それでいて、大排気量V8ならではの大トルクで走らせる気持ちよさがしっかりある。
ひとりで運転席に座っていると、全長4965mmもある4ドアセダンをドライブしていることを忘れてしまう。でも実際には、4ドアセダンとしてもちゃんと使えるのだ。
後席の空間は、広々として余裕がある。シートに身を落ち着けていると、路面からの突き上げは、皆無。オシリにも足裏にも響いてこない。スーパースポーツのように走りながらも、後席もちゃんと使える。意外なほど実用性が高いのである。
メルセデスAMG「E63S 4MATIC+」が搭載する4980ccV型8気筒ガソリンターボ・エンジンは450kW(612ps)の最高出力を発生し、4輪を駆動する。この点ではM5に近い。こちらもすばらしいスポーツセダンである。ステアリング・ホイールを切ったときは、ボディがロールしていく様子が手にとるようにわかる。それだけでも感心してしまう。
価格で比較すると、メルセデスAMG「E63S 4MATIC+」は1867万円。それに対してBMW「M5コンペティション」は1877万円。真っ向勝負である。でも、よりダイレクトなドライブ感覚はM5コンペティションならではだ。また、スポーツセダンのお株は、アルファロメオ「ジュリア」に奪われた感があると思っているBMWファンにも、このクルマを試してもらいたい。4ドアのスポーツカーだから。
文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.)
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みんなのコメント
とおっしゃる方がいらっしゃいますが、
新グリルになった新顔を、けちょんけちょんに言うのでしょうね(苦笑)
せいぜい高速を暴走するくらい。
日本にはもったいない車だよ。