冬本番を迎え、寒くなってきた日本列島。年末の前に北日本と西日本の日本海側では大雪の注意が促された。そこで寒い日々が続くなか、どうすれば車内をいち早く暖めることができるのか、解説する。
文/高根英幸
アイキャッチ画像/Seventyfour – stock.adobe.com
写真/Adobe Stock、ベストカーWeb編集部
まずはスイッチオフ!? 極寒時にいち早く暖房を利かせる技を伝授!!
■なぜ車内の温度が上がるのに時間かかるのか
エアコンの暖房は、空気を冷やして除湿してから温めるので、エアコンのスイッチをオフにした状態よりも温風の温度が上がるのに時間がかかる(Cautivante.co – stock.adobe.com)
寒い朝にクルマで出掛ける際には、外気温よりも車内の温度が低下していることも珍しくない。そのまま乗り込んで走り出してもクルマは機能するが、ドライバーを含む乗員は寒さに震えることも。
ドライバーは寒さで身体が縮こまって、運転操作や安全確認のミスにつながれば、取り返しがつかない事態に陥る可能性だってある。指先がかじかんでステアリングを握る力が入らないことだってあり得る。
しかしハイブリッド車を含むエンジン車の場合、エアコンの暖房についてはその熱源としてエンジンの冷却水を利用している。つまりエンジンが暖まらないと温風は出てこないのだ。
ACと表示されるエアコンのボタンでコンプレッサーを作動させなくても、暖房は使えるのはそのためだ。ちなみに暖房時にエアコンを使うのは温風を作るためではなく、まずは空気を冷やして除湿(熱交換器が結露することで空気から水蒸気が除去される)してから温めることで、車内の湿度を下げて窓が曇ることを防いでくれるからだ。
つまりエアコンを使っても使わなくても、暖房はエンジンが温まるまでは機能しない、ということだ。欧州車、特にドイツ車や北欧のクルマは始動後数分で暖房が強く効くように設計されているが、日本車はそこまで暖房の機能が重要視されていない。寒冷地仕様はバッテリーやオルタネータ、ヒーターコアの容量を増やしているが、冷却系の配管構造はそのままだからヒーターが効き始める時間は早くはならない。
それを踏まえて暖房を一刻でも早く使用することを考えるなら、エンジン始動直後からエンジン回転を高めに維持するために低速ギアに固定して走行することが効果的だが、それでは冷間時からエンジンの負担が大きく、摩耗などの原因にもなるし燃費も低下、触媒の温度も不十分で排気ガスの浄化も十分に働かないなど、弊害が大きすぎる。
そのため、寒冷地などではリモコンエンジンスターターで外出前にエンジンを始動させて暖房が効く状態にしてから乗り込むユーザーも少なくない。しかし、それも燃料の無駄遣いに繋がるし、首都圏のユーザーならそこまでする必要はないのではないだろうか。
なるべく早く暖房自体を効かすには、エアコンのスイッチをオフにすることだ。それにより空気を冷やす行程は省かれるから温風の温度は上がりやすい。ただし窓は曇りやすいので、曇り始めたらすぐにエアコンを入れて視界を確保することが重要。
人間の呼気には相当な水蒸気が含まれているから、暖房と共に呼気で湿度が上昇すると曇りやすくなる。ドライバーだけの乗車でもマスクをすることで呼気の水蒸気の放出をマスクが防いでくれるから、曇りにくくする効果も期待できる。
■冷却水利用のヒーター以外を利用するワザも! 冬の車内を快適にすごすには?
バブル期のトヨタ・マークII3兄弟などにはメーターカウル部分にすぐに温風が出る電熱線を使ったハンドヒーターが備わっていたが、今はその役目はステアリングヒーターに取って代わっている。
シートヒーターは採用車種が広がっているが、こちらも電熱線やカーボンヒーターを利用しているので、すぐに暖かくしてくれる。背中や腰、腿などを温めると身体全体が温まりやすく、快適性は一気に高まる。
それでもシートヒーターを装備していないクルマや、厚着していてシートヒーターの暖かさが伝わりにくいという人には、USB給電のヒーター入りマットやヒーター付きの膝掛けなどを利用することをお勧めしたい。これは手軽にUSBで給電できるもので、暖かさや消費電力を調整できる。
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消費電力が低いため暖房能力も限定的だが、単なる膝掛けで体温を保温するよりは確実に温まるし、暖房が効くより早くヒーターは発熱する。
膝掛けであればお腹周りや肩など寒さを感じる部分に掛けることで重点的に温めることもできる。ただしあまり大判のものは運転の妨げになることもありえる。
身体が温まって外そうと思っても、USBソケットを装備しているクルマならそのまま利用できる場合も多いが、中にはクルマと接続するだけの機能で供給できる電力が低い仕様もあるので気を付けたい。その場合、当然のことながらほとんど暖かくならないことになる。
アクセサリーソケットから給電して利用するならシガーライタータイプの充電器(DC-DCコンバーター)を使うことになるが、これも出力できる電流は仕様によって異なるので購入する際には注意しよう。
そもそもUSBのタイプAでは給電できる電力に限りがある(5V2.4Aの12Wが通常の上限)から、それほど熱くはならないので、過剰に期待してヒーターユニットを多く備えている毛布を利用しても、発熱することはできないから、効果は期待できない(助手席や後席で寒がりの同乗者がいるなら、これはこれで役には立つ)。
■モバイルバッテリーも使える? 気になる寒い季節でのバッテリーの負担と対策
冷間時に電力を使うことでクルマのバッテリーの負担が気になる方もいるだろう。確かに始動直後は、スターターモーターで大量に電力を消費し、バッテリーは次の始動に備えて電力を蓄える必要があるが、エンジンが動いている間は、発電機の電力で電装品も動作しているので、よほど大量に電力を消費している状況ではない限り、バッテリーの電力を消費することはない。
それでもモバイルバッテリーを利用すれば、その分クルマのバッテリーは早く電圧が復活する。アイドリングストップ車のバッテリーを長持ちさせたいなら、モバイルバッテリーを併用するのも手だ。
バッテリーが上がってエンジンが始動不能になった際に利用するジャンプスターターでモバイルバッテリーとしても使える製品があるから、これを普段はモバイルバッテリーとして利用し、常に充電レベルをある程度キープしておき、万が一のバッテリー上がり(自分のクルマ以外も救援できる!)に備える方法もある(筆者は実践している)。
冬道ドライブで遠方へ、あるいはウインタースポーツを楽しみに行くなら、大型のポーターブルバッテリーを積んでいくこともお勧めしたい。キャンプではもはや定番になりつつあるアイテムだが、クルマに積んでおくと何かと役に立つハズだ。
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