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アメ車への固定概念を覆すスーパーカーあらわる──新型シボレー・コルベット・コンバーチブル試乗記

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アメ車への固定概念を覆すスーパーカーあらわる──新型シボレー・コルベット・コンバーチブル試乗記

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快作である

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コルベット史上初のミドシップで、コルベット史上初のリトラクタブル・ハードトップでもあるコンバーチブルに、箱根と箱根から都内にいたる高速道路で試乗し、モーレツに感動した。それゆえ、筆者も世界の中心に向かって叫びたい。

新型コルベット・コンバーチブルは快作だぁぁぁぁ。
新型コルベット・コンバーチブルは快作だぁぁぁぁ。
新型コルベット・コンバーチブルは快作だぁぁぁぁ。

と、山々に反響させたいほどに。以下、もうちょっと具体的に申し上げる。

フロント・エンジンからミドシップへ。1953年のデビュー以来、8代目にして歴史的大転換を遂げた新型コルベットのキーを受け取ったのは箱根の山のなかだった。

日本仕様は右ハンドルである。これもコルベット史上初で、それというのもエンジンをドライバーの後ろに移動したことでフロントが空っぽになり、前輪を動かすステアリング・シャフトの位置の左右の設定の自由度が上がったからだ。

そのことを、筆者は本年5月の最後の週末、富士スピードウェイでのイベントで実車を見て知っていたはずなのに失念していた。

いざ乗り込もうと、つい左側にまわってしまったのです。エア・ダクトのフィンの内側に隠されたドア・ノブがすぐに見つかったのはヨカッタけれど、いかにも軽い樹脂(プラスティック)パネル製のドアを開けると、あらら、運転席がない……。

頭をポリポリかきながら、右側にまわってドアを開けて乗り込む。すでにこのとき、ハードトップは格納してある状態だったこともあって、ミドシップとしては、乗り降りはラクラクである。

8代目コルベットを示す略称C8は、これまでのアルミ製の梯子型フレーム構造ではない。アルミ・ダイカスト(鋳造)のパーツを組み合わせてキャビン部分を構成している。見た目はモノコックとも呼べるけれど、GMは主な剛性は車体中央のバックボーンに担わせていると主張している。それにより、両サイドの敷居を低くすることができ、おかげでミドシップ・スーパーかーとしては乗降性がよいのだ。

ボディの外板はコルベットの伝統通り、強化プラスティック(樹脂)である。リア・バンパーのビームにはカーボン・ファイバーを採用している。これは業界初だという。前後のトランク・リッドはその名も「フロート」という、超軽量が特徴の樹脂を使っている。

コクピットは眼前に液晶のスクリーン。左手に、インフォテインメント用のスクリーンがドライバーを囲むようについている。これぞ現代的ともいえるけれど、未来っぽい。ステアリング・ホイールは、ホイールと呼ぶのがためらわれるほどスクウェアで、つまり四角い。こんなに、フォーミュラ・カーみたいに四角くて、一般道でも運転できるのかしら。と、少々いぶかりつつ、エンジンをスタートさせる。

乗り心地の良さにビックリ!

キュルキュルとスターターが回る音がしたのち、ヴァフォンッ! と、大排気量6153ccのV8自然吸気OHVエンジンが目を覚ます。ここまでは、ごくフツウだ。

でも、エンジンと組み合わされる電子制御の8速DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)のセレクターの形状は独特で、センター・コンソールにある、P、R、N、Dと書かれたそれのうちのDのスイッチを指でひっかけて手前に引っ張る。そうすると、液晶メーター上にDの文字が浮かび、準備OKとなる。ささやかながら、コルベットならではの様式が設けられている。スポーツカーはパーソナルな乗り物だから、こういう独自の様式は大切であると筆者は思う。

両サイドのドア・ミラーにはリアのフェンダーのダクトがドドンと映り込んでいて、う~む。スーパーカーだ。考えてみたら、ミラーの位置をもうちょっと外向きに調整すべきだった……。気がつかなかったなぁ。ジェット・ファイターもかくやのコクピットにおさまり、筆者は軽い興奮状態にあった。

全長×全幅×全高=4630×1940×1220mmという3サイズはフェラーリ「F8トリブート」と較べると、19mm長くて、39mm細く、14mm高い。つまり、ほとんどおなじといっていい。真横から見たときのシルエットがフェラーリ458系をちょっと思わせるのは寸法が似ていることもあるにちがいない。2722mmのホイールベースは72mmも長い。おかげでシートの前後スライド量はたっぷりしている。

背後に縦置きされるGMのスモール・ブロックV8は、1気筒あたり2バルブのクラシックなOHV、といっても、直噴でVVT(可変バルブ・タイミング)、アクティブ・フューエル・マネージメントを備え、低負荷時にはV8の半分がお休みして燃費を稼ぐ。その一方、スポーツ・ドライビングに備えてオイルの供給はドライ・サンプ方式を採用している本格派だ。

103.25×92.0mmというでっかいボアをもつ大排気量のV8OHVは11.5という高圧縮比から、502ps/6450rpmの最高出力と637Nm/5150rpmの最大トルクを生み出す。数値的には高回転型みたいだけれど、フツウに走っていると、2000rpmに達する前に、8速DCTが自動的にススッとシフトアップしていく。50~60km/hで走行していると、タコメーターの針は1500rpm近辺にある。そこから軽くアクセル・ペダルを踏み込むと、ふぉおおぉぉぉっという男性バスのまろやかで魅力的な、吸気音を思わせるエンジン音が聴こえてくる。フランク・シナトラみたいな美声だ。2000rpmを過ぎたあたりでシフトアップするから、あっという間の出来事のはずなのに、ずいぶんブレスが長く感じる。

本国ではオプションの「マグネティック・セレクティブ・ライド・コントロール」という名前の可変ダンピング・システムを日本仕様では標準装備する。タイヤは、フロント245/35ZR19、リア305/30ZR20と前後異径の異サイズのミシュラン・パイロット・スポーツ。超ワイドで、超ロー・プロファイルのZR規格であるにもかかわらず、フェラーリも採用している磁力で瞬時に減衰力を切り替えるこの可変システムもあって、いや、なによりミドシップ化により、車体の動きが根本的におさえられるようになっている。乗り心地はもう、フロント・エンジン時代のそれまでのコルベットとは異なり、もちろん硬めではあるけれど、しなやかで、微妙な上下動とか雑味とか、そういうものがいっさいない。

いわゆるドライブ・モードにはツーリング、スポーツ、レース・トラックの3つの設定があり、ステアリング、サスペンション、エンジン/シフト、ブレーキ・フィーリング、エンジン音を制御する。後ろにいくほどに、ステアリングは重く、乗り心地は硬く、ほとんどロールしなくなって、エンジンは鋭く、エンジン音は大きくなる。

世界中のスポーツカー・エンスージアストを覚醒させるはず

箱根の山の中を走っていると、屋根が空いているから、高原のスカッとした冷気を感じる。アクセルを踏み込むと、背後から6.2リッターV8OHVの咆哮がライヴで聴こえてくる。3500を超えると、シャーンという金属音に変わる。ちょっと単調な気もするけれど、シナトラの独演会なのだ。それは、そういうものであろう。

オープンにしていても、サイド・ウィンドウをあげていると、外気はほとんど入ってこない。ふと、ミラーにリアのウィンドウが残っていることに気づく。ドア側の電動スイッチで、これを下げる。でもって、両サイドの窓も下げる。冷気が心地よい分量だけ入ってくる。ガス・ペダルを開ける。シナトラが大音量で歌う。

わはははは。思わず笑い声を発してしまう。すばらしい! 猛烈な加速にもかかわらず、車体はきわめて安定している。最新のエアロダイナミクスがダウンフォースを生み出し、同時にキャビンへの空気の流れを制御してもいる。

人馬一体は、マツダ「ロードスター」の専売特許だけれど、全幅が1940mmもある大きな馬がドライバーと同化している。フロントが先に動くとかリアがあとからついてくるとか、ではなくて、私がコルベットになっている。アイ・アム・ザ・コルベット・コンバーチブル。

レース・トラック・モードだと、タイヤの接地面をフルに使い切っているような感覚があって、スーパーカー度が1段上がる。ただし、ブレーキング時に、バフォンバフォンと自動でダウンシフトしないし、パドルでこれを試みても、電光石火のダウンシフトは、OHVゆえなのか、どこかのんびりした印象がある。そういうものをお望みなら、本年10月に、2023年モデルとして本国で発表された高性能版の「Z06」の上陸を待つ必要があるかもしれない。

ネットで検索すると、くおおおおおおおおおおっというレーシング・カーさながらの高周波サウンドを聴くことができる。新開発の5.5リッターV8はDOHC、自然吸気で、フラット・プレーンのクランクをもち、670hpを8400rpmで絞り出す。

C8はこれまでのアメリカ車観を完全にひっくり返し、眠りかけていた世界中のスポーツカー・エンスージアストを覚醒させることになるだろう。

文・今尾直樹 写真・安井宏充(Weekend.)

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3件
  • 固定概念・・・固定観念~既成概念~ ンッ! 固定概念アッポーペン!
  • 恐るべくスカスカ軽薄記事。
    価格1,600万円も超えるモデルのレビューとして体をなしていない
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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