少し前の話になるが、ボクはある光景に遭遇した。
かいつまんで言うと、あるスーパーカーオタクがスーパーカーの写真を撮っていただけではあるが、その知識レベルがハンパではなく、さすがのボクも驚かされたという話だ。
その日、ボクは神戸に行った
突如、彼女や妻に「オレ、ランボルギーニ買う」と言ってみたら?
その光景に遭遇したのは神戸、そして旧居留地だ。旧居留地には多くのブランドショップが居を構え、それらショップを訪れる人々が高級車やスーパーカーに乗って訪れることが多いように思う。
旧居留地の一つの特徴として、「パーキングメーターが設置されていること」が挙げられる。
パーキングメーターとは、設置されたパーキングメーターにコインを入れることで、合法的に路肩にクルマを駐車できるシステムだ。
ボクはこのパーキングメーターをよく利用する。
その意図としては、「通常の駐車場にクルマを入れると、隣のクルマからのドアパンチを食らう可能性があり、それを避けたいから」である。
もちろん、パーキングメーターにも危険性がないわけではない。
路肩には自転車や人が通行しているし、そういった人々の持つバッグがクルマに接触するかもしれない。
はたまた、クルマに腰掛け、あたかも自分のクルマであるかのように自撮りする観光客だっているだろう。
だが、居留地の場合だと、高級ブランドが立ち並ぶという立地もあり、道行く人々のモラルも高く、比較的安全な部類であるとボクは考えている。
だが、そこで事件は起こった。
その日、ボクはランボルギーニ・ウラカンを路肩に駐車していた(もちろんパーキングメーター利用である)。そして戻ってくると、ボクのウラカンの前後にはフェラーリ488スパイダー、そしてアストンマーティン・ヴァンキッシュが停まっていた。
やはりボクと同じように、駐車場には入れたくないスーパーカーオーナーも多いようである。
もちろん、それは問題ではない。
問題は、並んだ3台のスーパーカーを撮影している「カメラ小僧」たちである。
その3人組のカメラ小僧たちは、一心不乱に並んだスーパーカーの写真を撮っていた。それ自体は微笑ましい光景だ。
ただ、彼らはあまりにクルマに近づきすぎている。彼らも用心し、カメラバッグが車体に触れないように気を使ってはいるが、室内までも覗き込むようにして撮影しており、「もし手が滑ってカメラでもボディに落としたら」と不安にかられる。
ボクはこういったとき、カメラ小僧の邪魔はしない。自分のウラカンをアンロックすればカメラ小僧たちはボクのクルマから離れるだろう。
だが、それでは彼らの楽しみを奪ってしまうことになるとボクは考えていて、通行人のフリをして彼らに近づくことが多い(カメラ小僧に近づくのは、”もしも”が起こった際、彼らをすぐに捕まえられるように、である)。
そしてその日もカメラ小僧たちにさりげなく近づいた。
そこでボクが耳に挟んだ彼らの会話は恐るべき知識の一端を表しており、たとえばこういった話が聞こえてきた。
「このアストンマーティン・ヴァンキッシュには、オプションのフィオグラフ・キルトが装着されている」
「フェラーリ488スパイダーのボディカラーは、ロッソ・ムジェッロよりも薄く見えるため、ロッソ・フィオラノだろう」
「ランボルギーニ・ウラカンの前後バンパーに装着されているカーボンパーツは、純正オプションには存在しないはずだ」
これらは彼らの会話のごく一部でしかないが、とにかくこういった感じでカメラ小僧たちの会話は濃いことこの上ない。
現在は「好き」をお金に換えることができる時代だ
そこでボクはこう思った。
彼らは将来、大物になるかもしれないな、と。
一昔前であれば、いかに豊富な知識をもっていたとしても、それを披露する場は限られていたし、耳を傾けてくれる人もいなかった。
だが、今は違う。
SNSや動画配信によって、自分の知識や、自分の「好き」を幅広く発信できるし、多くの人が興味を示してくれるだろう。
そして、それによってお金を得ることだって可能な世の中だ。
彼らほどの情熱そして知識があれば、きっと自分でお金を稼ぎ、そのお金で好きなスーパーカーを買うことだってできる。
彼らが自分の「好き」で稼ぐ方法を、一日も早く見つけることを願ってやまない今日このごろだ。
[ライター・撮影/JUN MASUDA]
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