■ルイ・ヴィトンとの異色コラボが生んだ価値
2000年代後半、自動車業界では環境性能と高級感を両立させる新たな価値が模索されていました。
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そうした流れの中で誕生した1台が、後のデザインやブランドイメージにも影響を与えることになるコンセプトカーでした。それが、インフィニティが発表した「エッセンス」です。
このモデルは、2009年にスイスで開催された「ジュネーブモーターショー2009」で初めて一般公開されました。さらに翌2010年には日本で行われた「東京コンクール・デレガンス」にも展示され、国際的にも注目を集める存在となりました。
エッセンスは、日産が展開する高級ブランドであるインフィニティの技術と美学を凝縮したクーペタイプのコンセプトカーです。
特に2009年はブランド創設から20周年という節目の年であり、それを記念する象徴的なモデルとして開発されました。
そのため単なるショーカーにとどまらず、ブランドの理念や未来像を体現する重要な役割を担っていました。
このクルマの大きな特徴のひとつが、ルイ・ヴィトンとの協業です。クルマとファッションという異なる分野の融合により、これまでにないラグジュアリーな価値を表現しています。
特にトランクスペースには専用設計のスーツケースが収まるように作られており、実用性と芸術性を両立させた試みとして印象的です。
この取り組みは、1908年にルイ・ヴィトンが高級リムジン向けに特注ラゲッジを提供していた歴史へのオマージュともいえます。
ボディサイズは全長4720mm×全幅1960mm×全高1310mmと、日産「GT-R(R35)」に近い全長を持ちながら、それを上回るワイド&ローなスタイルが特徴です。
ホイールベースは2800mm、乗車定員は2人とされています。スポーツカーらしい基本構成でありながら、どこか優雅さを感じさせるスタイルも大きな魅力です。
外観デザインは「Dynamic Adeyaka(艶やか)」というテーマのもとで造形されています。
流れるようなボディラインは、日本の書道における力強い筆づかいを思わせ、フロントからリアにかけて描かれる曲線には自然の波の動きが取り入れられています。
こうした表現により、人工的な工業製品でありながら、どこか有機的で生命感のある印象を与えています。
一方、内装は左右非対称の大胆なレイアウトが採用されています。シートの間に配置された大きく湾曲したセンターコンソールが運転席と助手席を明確に分け、ドライバー側は黒、助手席側は赤を基調とすることで、それぞれ異なる空間体験を提供しています。
この設計は、ドライバー中心のスポーツカーとしての性格と、同乗者へのもてなしの両立を狙ったものです。
パワートレインにも先進的な技術が投入されています。3.7リッターV型6気筒ツインターボエンジン「VQ37型」に加え、新開発の「3D型」モーターを組み合わせたハイブリッドシステムを採用し、システム全体で最高出力592馬力という高いパフォーマンスを実現しています。
環境性能と走行性能の両立を目指した構成は、現在の高性能ハイブリッド車の先駆けともいえるでしょう。
このようにエッセンスは、市販化を前提としないコンセプトカーでありながら、その影響力は小さくありません。
実際に、そのデザイン思想は2016年に登場したインフィニティ「Q60」2代目モデルに受け継がれています。ショーカーとして提示されたアイデアが量産車へと反映される好例といえるでしょう。(くるまのニュース編集部)
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