■アルファロメオ「新型コンパクトSUV」発売!
歴史は長く、知名度もあり、ブランドイメージも決して悪くないのに、なぜか浮き沈みが激しいブランドの1つが、イタリアの「アルファロメオ」でしょう。
【画像】超カッコいい! これがアルファロメオ「新型コンパクトSUV」です!(90枚)
直近はスポーツイメージに加えてプレミアム路線を打ち出し、独自のFR(後輪駆動)プラットフォーム「ジョルジオプラットフォーム」を武器に、セダンの「ジュリア」やSUVの「ステルヴィオ」を発表。
「75」以来となる待望の後輪駆動アルファロメオセダンの登場に期待が高まりましたが、販売の方はどうも大成功とは言い難いのも事実です。
そのような状況では、ブランドを維持するためにはビジネスを支える車種も大事です。
こうしてステランティスグループのリソースを上手に活用して開発されたモデルが、SUV第2弾となる「トナーレ」と、今回紹介するSUV第3弾となる末っ子の新型「ジュニア」になります。
新型ジュニアはBセグメントのプレミアムコンパクトSUVで、「ジュリエッタ」や「MiTO」の後継と言う位置づけ。
アルファロメオのボトムレンジを支えるモデルとなり、ブランド初のBEV(エレクトリッカ)とハイブリッド(イブリダ)の二本立てとオール電動車のラインナップです。
ちなみに今回試乗したモデルはハイブリッドになります。
新型ジュニアのエクステリアは、兄貴分のイメージを踏襲しながらも、三眼ヘッドライトや新意匠のグリルなどにより、クラシカルでありながら先進性も備えます。
SUVにしては低めの車高で、クーペの後部をスパッと切り落としたボディ形状(コーダトロンカ)などにより、スポーティハッチのような雰囲気も。
パッと見るとボリューム感があるように見えますが、実際のボディサイズは全長4195mm×全幅1780mm×全高1585mmとなっており、国産車で言えばレクサス「LBX」に近いサイズ感です。
インテリアは、二つのひさしを持つメーターや丸形の吹き出し口、コクピット感覚を上げる高めのセンターコンソールなど、「昔のアルファロメオで見たことあるかも」と思わせるようなデザインですが、フル液晶メーターやインフォテイメントシステム、更には電気式のシフトレバーなど、現代のクルマらしくデジタルがフル活用されています。
また車内の居住スペースはフロント側をメインとしていますが、リアシートもボディサイズを考えると足元/頭上ともに大人でもそこまで不満がでないレベル。ただし黒系のインテリアとグラスエリアが小さいので、閉塞感は強めです。
■乗るとちゃんと「アルファロメオ!」
パワートレインは、直列3気筒の1.2リッターターボエンジン(136ps/230Nm)+モーター内蔵の6速DCT(21.8ps/51Nm)+リチウムイオンバッテリーで構成されます。
このメカニズムはステランティスのリソースをベースに、アルファロメオ流の“味つけ”を行ったもの。
単なるアシストだけでなく、極僅かですがEV走行も可能で、言うなれば「限りなくフルハイブリッドに近いマイルドハイブリッド」と言った感じです。
実は筆者はこの試乗の前に、同ユニットを搭載したプジョー「5008」(改良型:日本未導入)にフランスで試乗していました。
大柄ボディの3列シートSUVを過不足なく走らせるパフォーマンスは体感済みでしたが、ジュニアのそれはスペック以上に元気な印象です。
発進時は基本EV走行で、すぐにエンジンは始動。そこからはハイブリッド走行ですが、アシストはメリハリがあります。
ちなみにプジョーのそれはどちらかと言うとシームレスな印象だったので、これは意図的な演出なのかもしれません。
モーターアシスト効果により、低回転から排気量を感じさせない豊かなトルクを発揮しますが、そこからアクセルをグッと踏み込むと3000回転前後から力強さが増し、6000回転のレッドゾーンまでシッカリ回ってくれます。
もちろん、エンジンとモーターの連携やエンジン再始動時のショック、回生ブレーキの制御・フィーリングには粗削りな部分もあり、走行状況によってギクシャクするシーンもありますが、総じて言うと「ハイブリッドでも楽しくなければ」と言うアルファらしいフィーリングに“味つけ”られています。
3気筒とは思えない雑味の少ないスッキリしたサウンドも予想外の驚きでした。
プラットフォームにはステランティスの「eCMPプラットフォーム」を採用し、サスペンションはフロント・ストラット、リア・トーションビーム式です。
これはプジョー208やフィアット600ハイブリッドなどと共用しているモノですが、サスペンションのセットアップが違うだけでなく、実は構造やジオメトリーもジュニア専用仕立てとなっています。
その走りは基本的にはスポーティですが、ジワーッとロールをさせながら軽やか&自然に曲がる印象です。
もう少し言うと、クルマの動き自体には自由度を持たせつつも、絶妙な所でそれをピタ―ッと抑える絶妙な塩梅でコーナリングを披露します。
同じFFのアルファロメオで例えるならば、ステアリングを切るとヨーがギュッと立ち上がる解りやすいスポーツの「155スポルティーバ」ではなく、いなしの効いたしなやかスポーツの「155スーパー」のようなイメージでしょうか。
そのため新型ジュニアは、個人的には目を三角にして走らせるより、7~8割の所で走らせるのが一番気持ち良いと思います。
乗り心地はやや硬めの味付けで大きな段差の乗り越え時はショックを伝えますが、それ以外は想像以上にしなやかな足の動きも相まって、ファミリーカーとしても十分活用できる快適性と言えるでしょう。
※ ※ ※
そろそろ結論に行きましょう。
実は正直に言ってしまうと、新型ジュニアの試乗前は「他のクルマと共用部分が多すぎて、アルファとは名ばかりなのでは?」と疑っていたフシもありましたが、乗るとちゃんとアルファロメオでした。
聞く所によると、新型ジュニアの走りのセットアップはアルファロメオ開発陣の中でもエースが担当したとか。
恐らく、限られた材料でアルファロメオにするためにはこの“味付け”がキモであり、そこに関しては今までのモデル以上に知見・ノウハウが注ぎ込まれたと予想します。
そんな新型ジュニアの価格は420万円から468万円と、現在の為替の中でかなり戦略的な設定となっています。
アルファロメオに興味はあるけど、自分事ではないと思っていたあなた、小さいけど元気で楽しいジュニアは、ズバリ「自分事になれるアルファロメオ」だと思います。(山本シンヤ)
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みんなのコメント
やめようぜ。
156前期の様な素敵なデザインの車をだしてもらいたいね。