■カスタムグレードが迫力顔に一新!
モデルチェンジには、外観を含めて車両を大幅に造り替える「フルモデルチェンジ」と、改良を加える「マイナーチェンジ」がありますが、2022年10月にマイナーチェンジをおこなったダイハツ「タント」は、前年同月の2021年10月)と比べて3倍以上となる1万4981台が届け出されました。
フルモデルチェンジでは売れ行きが大幅に増えることもありますが、マイナーチェンジで販売台数が大きく伸びることは異例ともいえます。
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タントのマイナーチェンジが成功したことで、軽自動車の販売ランキングも変わりました。2022年9月まで軽の販売ランキングは、1位がホンダ「N-BOX」、2位はスズキ「スペーシア」、3位がタントでしたが、それが10月以降にタントが追い上げた結果、2022年通年の軽自動車販売ランキングは、1位がN-BOXで、2位はタントになったのです。
2023年に入ってもタントの販売は順調。1月は前年同月の1.8倍、2月も1.4倍が届け出されました。この販売増加はフルモデルチェンジに匹敵します。
ちなみに現行タントは、2019年7月に発売されましたが、この直後から販売が伸び悩んでいた背景があります。
届け出台数が最も増える8月から12月は2018年では1万800台、2019年の同期間では1か月平均で1万5800台と前年とくらべて1.5倍となりましたが、ダイハツの狙った販売実績には届きませんでした。
その根拠は先代型の売れ行きにあります。先代タントは2013年10月に発売され、2014年には1か月平均で約1万9500台を届け出しました。N-BOXを抜いて、軽自動車を含めた国内販売ランキングの総合1位になったのです。
しかし現行タント(4代目)は前述の通り伸び悩み、発売直後でも先代型の約80%しか売れませんでした。
そこでフルモデルチェンジの直後に、モデル末期に設定するような格安の特別仕様車まで追加。それでもタントの売れ行きは伸びず、2020年の軽自動車販売ランキングは、N-BOXだけでなくスペーシアにも抜かれて3位に留まりました。
コロナ禍の影響も受けましたが、新型車の対前年比がマイナス26%になったのはショックでした。
タントは2021年の軽自動車販売ランキングで3位でしたが、2022年には、10月に実施したマイナーチェンジの効果により、前述のように2位に浮上できたのです。
フルモデルチェンジの直後に伸び悩んだ車種が、その後のマイナーチェンジで大幅に回復するケースは珍しく、何がタントの売れ行きを伸ばしたのでしょうか。
販売店に尋ねると、以下のような回答がありました。
「タントのマイナーチェンジでもっとも効果的だったのはフロントマスクの変更です。とくに『カスタム』グレードは、マイナーチェンジでメッキパーツが多く採用され、存在感と引き締まり感が強まりました。
以前のカスタムの穏やかな表情にも独特の雰囲気がありましたが、マイナーチェンジを受けて先代型からの乗り替えを決めたお客さまも多いです」
以前のフロントマスクについては、ダイハツの開発者も以下のように述べています。
「現行タントのフロントマスクは、発売時点では、大人っぽい上品さを大切にデザインし、『ムーヴキャンバス』にも近かったです。
このデザインの人気がいま一歩だったので、マイナーチェンジでは、カスタムを迫力の伴った精悍な顔立ちに変更しています。一方、標準ボディは従来と同じく上品に仕上げました」
■個性派に人気のSUV風「ファンクロス」とは?
タントの売れ行きが伸びた理由として、デザイン以外には何があるでしょうか。改めて販売店に尋ねました。
「SUV風の『ファンクロス』を加えたことも大きいです。今はN-BOXやスペーシアにもカスタムが用意され、人気のシリーズですが、別の個性を希望するお客さまもおられます。
その点でタントファンクロスは、『スペーシアギア』ともデザインが異なるため、個性を求めるお客様に人気です」
タントが好調な理由として、先代型が数多く販売されたことによる膨大な乗り替え需要も挙げられます。現行型はフロントマスクなどが受けず、先代型の豊富な乗り替え需要を温存していたため、マイナーチェンジの成功で売れ行きが一気に伸びました。
またマイナーチェンジの前は受注が一時的に下がり、2022年6月のタントの対前年比はマイナス36%でした。7月も18%、8月は再び38%の減少です。この時期の反動で、マイナーチェンジ後の売れ行きが増えた面もあります。
このタントの販売推移から分かるのは「クルマは顔が命」ということです。受注を終了したトヨタ現行「アルファード」も、2015年の発売時点では姉妹車の「ヴェルファイア」のほうが多く登録されていました。
その後、2017年のマイナーチェンジでアルファードがフロントマスクの存在感を強め、売れ行きを伸ばしてヴェルファイアを抜いたのです。
さらに時代を遡ると、トヨタ2代目「セルシオ」も1997年のマイナーチェンジでヘッドランプの周辺を精悍な印象に変更して、後期型で販売不振を解消させました。2代目の後期型は現在の中古車市場でも人気の存在です。
また、1991年に発売されたトヨタ9代目「クラウン」は、リア側のナンバープレートを下げてリアバンパー中央に配置。テールランプの形状も角を落としたデザインを採用したら売れ行きが伸び悩みました。
そこで従来型と同じようにテールランプはエッジの効いたデザインとし、ナンバープレートポケットもテールランプの間に戻すと、販売も回復したのです。
この後もクラウンはテールランプの中央にナンバープレートを装着していましたが、さすがに販売実績が下がってきました。そこでSUVに切り替わった現行型の「クラウンクロスオーバーは」、リアナンバープレートを久しぶりにバンパーへ移しています。
※ ※ ※
タントが売れ行きを3倍に増やした理由は、ファンクロスの追加を含む「顔」の変更でした。
クルマは嗜好品的な性格を備えるため、開発費用や製造費用、価格が不動産の次に高い商品なのに、売れ行きはデザインの小さな違いにも左右されます。危うさの上に成り立つ商品でもあることも、クルマが奥の深い魅力を持つ所以なのでしょう。
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みんなのコメント
それに、小回りも効いて経費も安くあがるし本人が良いと思って乗るのだから他人がとやかく言う事では無いです。
見栄張って良い車に乗って借金地獄になるよりずっとマシなんじゃないですか?