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機能美のワークスマシン クライマックスのTVRグランチュラ(2) 今も一目置かれる理由

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機能美のワークスマシン クライマックスのTVRグランチュラ(2) 今も一目置かれる理由

最初に製造されたワークスマシン

シャシー番号7 C 238のTVRグランチュラ Mk2は、最初に製造されたワークスマシンで、1960年10月にAUD 100のナンバーを取得。1961年に、スネッタートン・サーキットでのレースへ参戦したと考えられている。結果はリタイヤだったが。

【画像】ル・マン頓挫のクラブマン・レーサー グランチュラ Mk2 21世紀のTVRたち 全105枚

スポンサーはアーノルド・バートン氏が営む衣類事業で、ドライバーはジョン・ウルフ氏だったようだ。過去が定かではない理由は、ウルフは別のシャシー番号7 C 345も運転した可能性があるためだ。

そのナンバーは126 ROで、グッドウッド・サーキットでのイベントを戦っている。しかし明確な記録はなく、写真も僅かしか残っていない。少なくとも、AUD 100のナンバーだった7 C 238も、レースを戦ったことは事実だ。

その後、英国スポーツカー選手権を含むレースへ挑戦していた、マイケル・サージェント氏が1961年に購入。この時点では、MGAエンジンへ置換されていた。1964年からはウィリアム・ビル・クック氏が所有し、1996年にジム・ローリー氏へ転売された。

クラブマン・レーサーらしく凛々しい佇まい

「極めてオリジナルのままで、1971年まで手は加えられていませんでした」。とローリーが振り返る。本来のナンバーは、どこかの時点で紛失しており、NFO 983のナンバーで再登録された。走行距離は、約5600kmだったとか。

2013年に、レストア職人のイヴァン・ダットン氏が購入。1961年仕様へレストアされ、欧州各地のクラシックカー・イベントで勇姿が披露された。現在のオーナーも、積極的にサーキットへ足を運んでいるらしい。

グレートブリテン島南部、ビスター・モーションのテストコースに佇むグランチュラ Mk2は、クラブマン・レーサーらしく凛々しい。前後のオーバーハングは短く、ルーフは小ぶりなドーム型。アルミ製の燃料キャップが、機能美を増長する。

リアのホイールアーチには、控えめなフィン。ダーク・ブルーのボディにイエローのストライプは、サージェント時代に施されたもの。通称「ウォブリーウェブ」ホイールに、ダンロップのレースタイヤという、1960年代初期と変わらぬ姿に気持ちがうずく。

低い位置へ収まるクライマックス・ユニット

ボディのフロント部分を持ち上げると、1216ccのクライマックス FWEユニットが顕に。2基のウェーバーキャブレターが大きく見えるほど小柄で、低い位置へ収まっている。整備性は、いかにも良さそうだ。

ドアを開くには、運転席側のサイドウインドウを開き、チェーンを引っ張る必要がある。比較的小柄な筆者は、ロールケージが張り巡らされていても、さほど苦労せず乗り込める。現代的なスパルコ社製のバケットシートが、身体へフィットする。

シートベルトは6点式で、正面には3スポークのマウントニー社製ステアリングホイール。タコメーターは7800rpmからレッドゾーンで、スピードメーターは時速120マイル(約193km/h)まで振られている。補機メーターやスイッチが、整然と並ぶ。

フォルクスワーゲン・ビートル由来のサスペンションと、短いホイールベース、高回転型のクライマックス・ユニットという組み合わせへ萎縮していたが、心配不要だった。クラッチは繋ぎやすく、シフトレバーは引っかかりがあるものの正確。扱いやすい。

血気盛んな雰囲気 絶妙なバランス

天気は徐々に回復し、アスファルトが乾いてゆく。数周のウォームアップで、しっかり能力を探れるほど親しくなれた。クライマックス・エンジンは、4000rpmを過ぎた辺りから本来の能力が見えてくる。

コーナーからの立ち上がりは、極めてエネルギッシュ。4速MTのギアが唸る。排気音も美しいわけではないが、血気盛んな雰囲気はTVRらしい。回頭性は極めてシャープで、ステアリングには鮮明なフィードバックが伝わる。

レシオはクイックすぎず、過度な緊張感はない。切り込んでいくと、絶妙なバランスが顕になる。リアタイヤは徐々に外へ流れ出し、意欲的なコーナリングを試みたくなる。

もちろん、ドリフトを抑えた大人な走り方も得意。LSDの効きは強く、ステアリングとアクセルの操作には明確さが求められるものの、ドライバーは自信を抱きやすい。近年でも、優れたレーシングカーとして一目置かれる理由がわかる。

ポテンシャルを充分に発揮できなかったTVR

半世紀前の英国には、少量生産のスポーツカーメーカーが複数存在した。その多くと同様に、限られたリソースしかなかったTVRが、ポテンシャルを充分に発揮できなかったことは残念でならない。

グランチュラはMk3へ進化し、1962年のル・マンへファクトリーチームは参戦するものの、3周でリタイアに喫する。TVRが再びフランスのミュルザンヌ・ストレートを突っ走ったのは、その41年後。ブランドの未来は、現在も宙に浮いたままだ。

協力:ペンディン・ヒストリック・カーズ社、ジム・ローリー氏、ロブ・ペニントン氏

TVRグランチュラ Mk2(1960~1961年/公道仕様)のスペック

英国価格:1045ポンド(新車時)/4万5000ポンド(約878万円/現在)以下
生産数:約400台
全長:3505mm
全幅:1625mm
全高:1219mm
最高速度:162km/h(予想)
0-97km/h加速:10.8秒(予想)
燃費:−km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:660kg
パワートレイン:直列4気筒1216cc 自然吸気SOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:96ps/7000rpm
最大トルク:−kg-m
ギアボックス:4速マニュアル(後輪駆動)

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