サイズや排気量が小さく、燃費が良ければアメ車は売れるのか?
「サイズがデカすぎる」「排気量がムダに大きすぎる」「燃費が悪すぎる」などといった理由から、日本ではアメリカ車は売れないと言われています。それでは日本車並みのサイズと排気量、優れた燃費性能、適正な販売価格を備えていれば、アメリカ車は売れるのかと言えば、そうとも限りません。
【もはやアメ車じゃない…】これが「サターンブランド」最後のモデルです(写真)
日本とアメリカではクルマに求めるニーズ、嗜好やライフスタイル、商習慣などが異なることから、それらは日本で商業的に成功するための必須条件であって十分条件ではありません。
そのことを如実に物語っているのが、「礼をつくす会社、礼をつくすクルマ」のキャッチコピーで日本に進出したGM(ゼネラル・モーターズ)のサターンでした。
1970年代のオイルショック以降、アメリカ市場を席巻していた日本車に対抗すべく、GMが35億ドルの巨費を投じて立ち上げた新ブランドがサターンです。GMは、日本車やドイツ車を好む裕福なホワイトカラー層をターゲットに、従来のアメリカ車にはない高品質、リーズナブルなメンテナンスコスト、優れた燃費と環境性能を持つコンパクトカーを販売するチャンネルとして、サターンを1985年からスタートさせました。
ブランドの立ち上げに先立ってGMが実施した市場調査によると、アメリカにおける新車ディーラーとセールススタッフのイメージは、「誠実さに欠ける」「信頼できない」「女性のみでは入りにくい」という悪評が多数を占めていました。とくにアメリカ市民のあいだでは、販売時の価格交渉(値引き交渉)によって、購入金額に差が生じることを「アンフェアである」とする意識が強く、ネクタイにスーツ姿といういかがわしい装いで働くセールススタッフとはできれば関わりたくない、という声まで調査結果で明らかになるほどでした。
これを受けてGMは、サターンの販売網を展開する際にイメージアップのためのさまざまな施策を打ちます。たとえば「ディーラー」でなく「リテーラー」と呼ぶようにしたほか、セールススタッフのスーツ着用を禁止しました。代わりに、ポロシャツとチノパンの組み合わせによるカジュアルな制服を導入。これにスタッフの服装を統一したうえで、セールスマンには顧客から声が掛かるまで営業活動を行わないといった接客マニュアルを徹底させました。
1990年代後半に鳴り物入りで日本へ進出
併せてサターンの店舗では、値引きを行わないワンプライス販売を取り入れ、価格交渉に伴う不公平感を払拭したほか、納車時に担当セールススタッフ以下、店舗スタッフが全員揃って納車セレモニーを行ったり、整備時の待合室の充実を図ったりするなど、アメリカの新車ディーラーの常識を覆すようなホスピタリティの高いサービスを展開したのです。
これがアメリカ人ユーザーの心を掴み、口コミによってサターン販売店には大勢の人が押し寄せました。そして、ブランド立ち上げから8年後には50万台目のサターン車がラインオフし、販売は好調を見せるまでに至ります。
サターンの立ち上げ時のラインナップは、4ドアセダンの「SL」と2ドアクーペの「SC」、そして5ドアワゴン「SW」。これら3種類の小型車で、1996年のフルモデルチェンジを機に日本市場への輸出を前提とした右ハンドル車も開発すると、翌1997年から日本での販売も開始しました。
サターン車は、いずれもアメリカ人好みの少々アクの強いスタイリングでしたが、車体は鋼板モノコックを基本としながらも多少の変形であれば復元する樹脂製パネルを外板に採用したことが特徴です。
販売の主力となる4ドアセダンの「SL2」のボディサイズは、全長4520mm、全幅1695mm、全高1385mmとアメリカ車にしては小さく、日本の5ナンバー枠にスッポリと収まります。搭載される排気量1.9リッターの直列4気筒DOHCエンジンは経済性と実用性を重視した設計で、組み合わされるギアボックスは4速ATと5速MT、駆動方式は全車FFを採用していました。
なお、日本発売時のサターンの新車価格は、主力となる「SL2」が150万6000円~190万5000円、2ドアクーペの「SC2」が172万~204万5000円、5ドアワゴンの「SW2」が168万円~197万5000円と、輸入車にしてはリーズナブルな設定で、同クラスの日本車とほとんど変わらない価格で販売されています。
出来は悪くなかったが、それだけでは売れず……
筆者(山崎 龍:乗り物系ライター)は、新車販売されていた当時、「SL2」に試乗した経験があります。そのときの記憶を思い出して書くと、内外装のクオリティは同時期に輸入されたトヨタ「キャバリエ」やクライスラー「ネオン」と比べて明らかに上回っており、アメリカ車らしくシートの作りもしっかりしていて長距離ドライブでも疲労感を感じることはありませんでした。
また、ボディ剛性も高く、足回りは路面の凹凸をよく捉え、走行時も安定していて乗り心地も良好でした。エンジンは若干ノイジーだったものの、低速トルクに余裕があることから加速は鋭く、動力性能は必要にして十分。100km/h巡航時のエンジン回転数は2500rpmほどだったので、燃費は正確に測定しなかったものの、高速巡航時はカタログ値の11.7km/Lを上回ることが期待できるほどでした。
個人のイメージとしては、「なかなか良くできたクルマ」といったものでしたが、好みの分かれるスタイリング以外に突出した個性がなく、同じような価格帯の国産車がひしめき合う日本市場で、あえてこのクルマを選ぶ動機は薄いのではないかとの心象を持ちました。
結果的に筆者の懸念は的中し、鳴り物入りで上陸したサターンでしたが、販売低迷によりわずか4年で日本市場から撤退してしまいます。これは商品として魅力に乏しかっただけではなく、サターンの特色のひとつであったワンプライス販売は当時の日本では馴染みが薄く、顧客目線でのきめ細かなサービスはまさに日本の販売店のお家芸でもあったことから、日本市場ではたいしたアピールポイントにならなかったというのも、苦戦の原因と言えそうです。
日米ではクルマに求められる要件が異なるため、いくら製品の性能や品質が水準に達しており、サービス体制が整っていたとしても、アメリカ市場での成功体験をそっくりそのまま日本に持ち込むだけではうまくいきません。
そのような事実を、身をもって示したのがサターンだったと言えるでしょう。(山崎 龍(乗り物系ライター))
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そりゃ売れないさ