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どっちが前で、どっちが後ろ? かわいさ炸裂!「フィアット600ムルティプラ」は、イタリアが生んだ元祖小型MPVだった【世界の名車・珍車図鑑】

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どっちが前で、どっちが後ろ? かわいさ炸裂!「フィアット600ムルティプラ」は、イタリアが生んだ元祖小型MPVだった【世界の名車・珍車図鑑】

世に名車といわれるクルマは数あれど、ひらがな発音は同じだが意味はまったく逆の「迷車」ないしは「珍車」といわれるクルマたちも、130年以上におよぶ自動車史においては少なからず存在している。
でも迷車・珍車と呼ばれるクルマには、不思議な魅力があるのも事実。それぞれにコアなファンがいたりもするようだ。
そこでKURU KURAでは、歴史に名を残した迷車・珍車をご紹介するコーナーを企画。今回の主役として選んだのは、珍車と括ってしまうのがもったいないほどに魅力的な一台でもあるクルマ。おそらくは世界初の小型車ピープルムーバーだった「フィアット600ムルティプラ」である。


デザイン立国イタリアだからこそ生み出された、高機能ピープルムーバー

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前世紀末、1998年に登場したフィアットのMPV「ムルティプラ」は、その個性極まりないスタイリングとシート配置から今なお語り草となっているが、実はその約30年前に、同じ「ムルティプラ」の名を冠する偉大な先達があった。
1956年1月、ベルギーのブリュッセル・モーターショーにてワールドプレミアに供されたフィアット「600ムルティプラ(Multipla)」は、英語の「Multi Place」から命名されたという車名が示すとおり、現在では定石となっている1BOX/3列シート様式のピープルムーバーの先駆けともいえる、極めて画期的かつアイコニックなモデルだった。


1955年に登場し、のちにイタリアの国民車となったコンパクトカー「600(セイチェント)」ベルリーナをベースに、全高を約20cmかさ上げ。運転席・助手席をフロントアクスルの上に配置する「フォワードコントロール」とし、ルーフとキャビンをフロントエンドまで延長するという、大規模なデザイン・構造変更が施された。
フロントのドアは、後ヒンジで巨大な開口部を持つものとした上に、助手席側には後席にアクセスするためのリヤドアを設置。いっぽうでリヤエンドのスタイリングに変更はなく、テール周辺の意匠はあえて600ベルリーナと共通する流麗なデザインを踏襲していた。


フォワードコントロールという考え方自体は、第二次世界大戦前のトラックやバスでも既に存在していたほか、同じRRレイアウトの小型車であるフォルクスワーゲンでは、1950年から既に「タイプ2」として同様式の商用バンや乗用バスを生産していたものの、基礎となるセダンモデルのスタイリッシュなデザインをそのまま生かすあたりは、さすがデザイン立国であるイタリアのクルマと感心させられてしまう。
またプラットフォームもベルリーナと共通ながら、乗員スペース確保のために燃料タンクはフロントのトランク内からリヤに移されたほか、前輪への荷重増加に備えてサスペンションは、ウィッシュボーン+横置きリーフからダブルウィッシュボーン+コイルに換装。リヤサスペンションも、ジオメトリーの変更が図られていた。


ユニークなスタイリングは当時でも人気だった?

このユニークな元祖小型MPVは、2列シート版と3列シート版を設定。後者では最大6名の乗車を可能とされ、生産国のイタリアでは、当時はまだ大家族主義と夏のヴァカンツァ至上主義を謳歌している時代だったこともあって、大きなヒットを博すに至ったのだ。
くわえて、イタリアをはじめとするヨーロッパではタクシーとしても重用されたほか、フィアット傘下のトラックメーカー「OM」やカロッツェリア「コッリ」などが、リヤのエンジン上のラゲッジスペースを増やすために、テールエンドをもっと「箱っぽい」スタイルに改装した商用/貨客兼用バージョンなども製作。フィアットの正規モデルとして販売された。


リヤに搭載されるエンジンは水冷直列4気筒OHVで、初期モデルでは排気量633cc・24.5ps。1960年には、600ベルリーナが「600D」に進化するのと同時に、拡大型である767cc・28.5psのエンジンを搭載するなどのマイナーチェンジが実施された改良型の「600Dムルティプラ」に移行。実質的後継モデルの「850ファミリアーレ」が1965年に登場したのちも、1967年ごろまで生産されたといわれている。
特異なスタイリングについて「どちらが前で、どちらが後ろか分からない」などと揶揄され、珍車のたぐいに分類されてしまうことも多いフィアット600ムルティプラながら、この画期的なレイアウトと多様性は当時の欧州マーケットでは大いに評価され、立派なヒット作でもあった。
そして現在、珍車的要素のもとであるユニークなスタイリングが数多くの自動車愛好家の心をつかみ、クラシックカーとしても愛され続けているのである。

文:くるくら
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