ベストカー本誌の過去記事から名企画・歴史的記事をご紹介する「ベストカーアーカイブ」。今回は2013年9月の「クルマ界のドーピング伝説」をプレイバック!(本稿は「ベストカー」2013年9月10日号に掲載した記事の再録版となります)
文:片岡英明
ちょまっっそれって反則じゃないの!!? 過剰なまでのスペック・装備で圧倒的なパワー&トルクを見せつけた市販国産車列伝【ベストカーアーカイブス2013】
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■三菱 6代目ギャランVR-4(1987年登場)
三菱 6代目ギャランVR-4(1987年登場)
刺激的な加速を見せつけるギャランの筆頭にあげられるのが1987年秋に登場したFF2世代目のイメージリーダー、VR-4だ。デザインは今見てもカッコいい。くさび形のセダンボディはイタ車のようにキュートである。
VR-4は最先端のハイテクメカもテンコ盛りだ。フルタイム4WDにABSを組み合わせ、4輪操舵の4WSも採用した。箱根のワインディングロードを何度も走ったが、卓越したスタビリティ能力が光った。受注生産の形で「RS」が用意され、WRCでも切れのいい走りを披露した。
エンジンもワクワクするほど刺激的だ。2Lの4G63型直列4気筒DOHCターボは205psで登場したが、途中で220psにパワーアップ。最終的には240psに達した。ターボが稼働すると豪快な加速に移り、一気に景色が変わる。この4G63型のターボは実用域のトルクが太く、痛快な加速を引き出しやすかった。
昭和の時代、小型車のなかでは間違いなく最強だった。2Lモデルとは信じられないほどシビレる加速を見せつけたのだ。
■トヨタ 70スープラターボA(1988年登場)
トヨタ 70スープラターボA(1988年登場)
セリカの兄貴分となるスープラはルックスがいいだけでなく走りの実力もメチャ高かった。特にノーマルモデルでも充分に速かったが、あきれるほど速かったのが70系スープラの特別仕様として500台が限定発売された3.0GTターボAである。これは当時、全盛を誇ったグループAレースのホモロゲーション取得のために送り出されたエボモデルだ。
3Lの7M-GTE型直列6気筒DOHCエンジンに専用のターボユニットを組み合わせ、最高出力は30psアップの270psを発生した。最大トルクも当時国産車最高となる36.5kgmと分厚い。今では珍しくないが、当時は200psオーバーのクルマは数えるほどしかなかったから恐怖を感じるほどの加速を見せつけたのである。
ノーマルの7M-GTE型DOHCターボでもパワフルと感じていた。が、専用チューニングを施したターボAの加速は、そのはるか上をいく。瞬時のタイムラグの後、パワーとトルクが弾けるドッカンターボだったが、身体をグッと持っていかれるほど強いGを感じることができた。
■トヨタ 初代アリスト(1991年登場)
トヨタ 初代アリスト(1991年登場)
初めてステアリングを握った時、「こんな速いセダンがあるのか」と感嘆したのが初代アリストだ。当時、上品で気持ちいい走りの代表だったのがジャガーだが、ジウジアーロがデザインしたハイエンドスポーツセダンのアリストは、和製ジャガーケンジントンと呼ばれ、青年実業家から走り屋のアダルトまで、多くの人を魅了した。
ハードウェアはクラウンマジェスタから流用も、2ウェイツインターボで武装した3Lの2JZ-GTE型直6DOHCはクラス最強の280ps/44.0kgmを絞り出した。
その鮮烈な加速フィールは日本車離れしたものだ。このハイパワーを支える足も凄かった。4輪ダブルウイッシュボーンのサスペンションに、ABSとトラコンを組み合わせ、タイヤも前後異サイズ。正確で気持ちいいハンドリングにクルマ好きのダンディはときめいた。
■オーテックステージア260RS(1997年登場)
オーテックステージア260RS(1997年登場)
初代ステージアは7代目ローレルのシャシーを用い、パワーユニットもローレルやスカイラインに積まれ定評のあるRB系の直列6気筒を搭載したワゴン。
ステージアはスポーティ度の高いワゴンだったが、開発陣はもっと暴力的なワゴンを開発したかったようだ。オーテックジャパンはワゴン版のGT-Rを生み出し、走り屋たちの声に応えた。それが1997年に衝撃のデビューを飾った260RSである。
ボクは邪道だと思った。が、運転してみると、痛快で面白い。何といってもメカは驚異的な速さで世界をアッといわせたR33スカイラインGT-Rそのものなのだ。
意のままに気持ちよく曲がり、加速すると後ろのクルマはアッという間に視界から遠ざかる。しかもワゴンだから実用性能は文句なし。荷物はたくさん積めるし快適性も高い。コイツは異次元の超速ワゴンだった。
■ダイハツストーリアX4(1998年登場)
ダイハツストーリアX4(1998年登場)
発表前に資料を見た時、「ホントなの?」と半信半疑だった。エンジンがなじみある1L 3気筒ではなく4気筒DOHCターボだったからだ。しかも軽自動車よりちょっと大きい713ccの排気量なのに120ps/13.0kgmのスペックだった。だから間違いだと思ったのである。
が、すべて真実だ。掟破りがとおったのはX4が全日本ラリー選手権に参戦するために企画されたクルマだったからだ。ドーピング違反はこれだけじゃない。驚いたことに調整ナットを回してブースト圧を高めることができた。
乗ってみると4000回転以下だとからっきし元気がなかった。が、ここを境に豹変。その加速フィールは恐怖で顔が引きつるといえばわかってもらえるだろうか? まさにジキルとハイドだ。
が、慣れてくると高回転域をキープしての走りが楽しく、病みつきになる。
■トヨタブレイドマスターG(2007年登場)
トヨタブレイドマスターG(2007年登場)
兄弟車の先代オーリスと同じだろう、とタカをくくって驚かされたのがブレイド。
プラットフォームなどは共用だが、内装の質感など一歩上をいく。もちろんサスペンションは別物だし、走りの実力も段違いだった。「トヨタ版ゴルフGTI」だと驚嘆させられたのがブレイドマスターGである。
ノーマルのブレイドは直4の2.4Lだが、ブレイドマスター系はマークXジオやヴァンガードなどが積むポート噴射の2GR-FE型V6、3.5L DOHCエンジンを搭載。カローラサイズのクルマに280ps/35.1kgmの強心臓を組み合わせたのだから遅いはずはない。
アクセルを踏み、右足に力を入れると猛然とダッシュする。しかも無段変速機のCVTだからシームレスな加速フィールだ。
ブレイドマスターGの凄いところは軽やかな操縦安定性に加え、乗り心地も悪くないこと。オーリスだと思ってカモろうといたずら心を出すと痛い目に遭った。
■トヨタ80系マークII/チェイサー/クレスタ2.5GTツインターボ(1990年登場)
トヨタ80系マークII/チェイサー/クレスタ2.5GTツインターボ(1990年登場)
ハイソカーブームが巻き起こったバブル期は、セダンが高性能エンジンを積んだ時代でもある。羊の皮を被った狼が数多く登場し、スポーティクーペやスペシャルティカーを叩きのめした。速く見えないのに駿足を誇った韋駄天がマークII/チェイサー/クレスタの3兄弟だ。
1988年デビューの8代目マークIIは、1990年のマイチェンで2.5Lを仲間に加えた。NAエンジンも用意されているが、主役はツインターボで武装した1JZ-GTE型直列6気筒DOHCを積む2.5GTツインターボだ。パワースペックは280ps/37.0kgmを誇示する。
一見、速そうに見えなかったこのセダンが積んだ2.5Lのツインターボはパワフルだった。回転の上昇とリンクしてパワーとトルクが一気に盛り上がり、矢のような加速を見せる。
フットワークとハンドリングもスカイラインに負けてなかった。
■三菱 リベロGT(1995年登場)
三菱 リベロGT(1995年登場)
三菱を代表する4WDスポーツのランエボはWRCで勝つために開発され、たゆまぬ進化を続けてきた。このランエボのスピリットを受け継ぎ、ランサーGSRのメカニズムを用いた兄弟車がランサーのワゴン仕様として登場したリベロ。そのイメージリーダーとして誕生したのがDOHCターボとフルタイム4WDで武装したリベロGTだ。
直4、1.8Lの4G93型DOHCターボはマイチェンで215psにパワーアップ。4代目ランサーGSRでは195psだったが、リベロGTはこれより20psもパワフルだったのである。
ちなみに5代目ランサーGSRでも205ps。実用性を売りにするワゴンに最強のスペックを与えた。このこだわりに三菱エンジニアの意気込みと強いプライドが感じられる。
実際、走りは刺激的で、スポーツワゴンの代表であるレガシィより理屈抜きに面白かった。ジャジャ馬に感じるところもあるが、刺激はビンビン伝わってきた。
■ドーピングこそが正義!! ドラッグレースの猛者たち
ここではドラッグレースなどのモンスターマシンを紹介。
2011年のグッドウッドフェスティバルに登場した800psのST205セリカ。F1マシンに勝った!
●F1より速い800psセリカ……2011年7月、英国グッドウッドのヒルクライムで最速タイムを出した6代目セリカ。カローラWRC搭載の直4、2Lターボをスーパーチャージャーで過給、800psまでパワーアップ。同時に出走したF1マシンにも勝っている。
●650psの3代目シーマ……2000年のボンネビルで320km/hを記録した最高速仕様。650ps/83.7kgmのインディ用V8、4L DOHC搭載。
●1000psの2代目アリスト……D1GPに参戦した猪瀬徹の2006年時のマシン。直6、3Lツインターボの2JZ-GTEエンジンをフルチューン仕様にし、1000psにまで到達させた2代目アリスト。あり余るパワーからコースが見えなくなるほどの白煙を発生させて走行会を一時中断させたこともある。
●HKSドラッグ80スープラ……直6、3Lターボに強度アップのスリーブを打ち込んで4.2Lにしてターボを2基がけし、推定1400psのパワーを誇る。
●500psターボのキザシ……2010年のボンネビルで元『ロード&トラック』誌のサム三谷氏がF/BGCクラスで327km/hの最高速世界新記録を達成したキザシのスペシャル仕様。
500psのターボを積み327km/hを記録したボンネビル仕様のキザシ
【番外コラム01】モンスター田嶋のドーピングマシン
モンスター田嶋のドーピングマシン
市販車のチューニングでも数多くのドーピングモンスターマシンを製作してきた文字どおりのモンスター田嶋氏だが、歴代パイクスピーク参戦マシンのなかで最もドーピング度が高かったのが2007~2008年に参戦した時のXL7の「ヒルクライムスペシャル」だ。V6、3.6Lツインターボをミドに搭載し、4輪駆動させる怪物マシンで、1007ps/102.0kgmのパワー&トルクは歴代最高をマークしていた。
【番外コラム02】編集部ウメキのR30スカイラインRSターボ
ドーピング続きで最後はブローして果てたウメキの愛車、R30RSターボ(右)
懐かしのRSターボとの日々はもうまさに「ドーピングの日々」。最初のドーピングは定番のブーストアップ。HKSのVVCを取りつけてステアリングコラムに大型のブースト計。カリカリとVVCを捻ってブーストを上げればもう別世界!! プシューというターボ音を響かせて走りまくっていたら、ある日バックミラーが真っ白に。いわゆるひとつのエンジンブロー。
修理に入れたのはもちろんチューニングショップ。どうせエンジンバラして組み直すのだからと、2.1Lにボーリングしてハイコンプピストン組んで実馬力240psにドーピング!! こいつは速かった。排気量上げたもんだから下のトルクも出て乗りやすくて峠でも負け知らず。
でも夢のような日々は短く、お次はタイミングチェーンのテンショナーが「ガラガラガッシャ~ン」という音とともにはじけ飛んでジ・エンド。山手通りをアンダーパスする最深部でレッカーを待ったのはけっこう辛かった。ドーピングは確実に身体を蝕むと思い知ったのでした。
(写真、内容はすべて『ベストカー』本誌掲載時のものですが、必要に応じて注釈等を加えている場合があります)
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今の車で言うとどの車に相当するのか例えてくれればわかりやすい