この記事をまとめると
■クルマづくりにおいてライバル車の分析は重要な作業だ
市場を切り開いた偉大なクルマが敗北! 「後出しじゃんけん」でバカ売れしたクルマ4選
■各社は「リバースエンジニアリング」という手法でライバル車を研究している
■「テスラはロックがかかっていて分解できない」という噂の真相についても言及する
クルマづくりにおいて競合車の分析は欠かせない
自動車に限った話ではないが、資本主義経済において商品を作るためにはターゲットユーザーを想定することがほとんどであり、当然ながらライバル商品というのは数多く存在しているものだ。それはサービスの提供でも、工業製品たる自動車でも同様だ。
自社製品を十分に販売させようと思ったら、ユーザーの嗜好を調査すると同時に、ライバルを分析することは必須だ。そして一般論としてはライバルを上まわる機能を持たせることがヒットには欠かせない。
たとえば、ユーザーの嗜好が経済性重視で、ライバルの価格が100万円、燃費性能が29.0km/Lであれば、99万円で30.0km/Lにすれば販売台数は伸びるであろうと予想できる。自社の都合で価格や燃費性能を定めていては、こうはいかない。このようにターゲットとなる数字を定めるにあたり、ライバルの分析は欠かせない。
もちろん、クルマの機能というのは単純に数値化できるターゲットばかりではない。「しっとりとした乗り心地」だとか「所有したくなるスタイリング」、「降りたくなくなるほどの快適性」といったテイストの部分でもライバルモデルを参考にしつつ、自社が目指すターゲット性能を決めていくものだ。
そして、ライバルモデルがどのようにしてその性能を実現しているのかを調べるための手法のひとつが「リバースエンジニアリング」と呼ばれるものである。
ライバル車を購入し“ネジの一本まで”調査
具体的にはライバル車を購入してきて、徹底的にばらしてネジの一本までどのようなものが使われているのかを調査する手法だ。これによって製造方法、設計思想、部品サプライヤー、素材などさまざまなことが分析できる。あえて設計図を作成することで、ライバル社の設計の狙いなどが見えてくることもあるという。
こう聞くと、リバースエンジニアリングというのはパクリの手法と思うかもしれないが、そうではない。たしかに、他社製品と同じものを作ってしまえばパクリ商品となってしまうし、それはパテントなどに抵触する違法行為だ。リバースエンジニアリングというのは、あくまでもライバルの製品をばらすことで、なんらかのヒントを得ようという行為であり、少なくとも分析すること自体は違法ではない。むしろパテントを回避するために活用されていたりすることもあるという。
かつて、トヨタが世界の高級車ブランドを震撼させたという初代セルシオは、多くの自動車メーカーが、リバースエンジニアリングでバラバラにしたともっぱらの噂だった。いまでもCセグメントのベンチマークと呼ばれるフォルクスワーゲン・ゴルフはフルモデルチェンジをすれば各社が購入して研究・分析しているという話も聞こえてくる。ただし、どんな他社製品をリバースエンジニアリングしたか明言する自動車メーカーは基本的にはなく、あくまで噂話の域をでない。
そんな噂のひとつに、テスラのモデルは遠隔操作でロックされてしまうのでバラすことができないというものがある。たしかに、車体側に通信機能を持たせているクルマであれば、なんらかの異常を検知してシステムをロックさせることは技術的に可能だ。
しかしながら、世の中にはテスラのクルマを分解調査して、そのリポートを販売している会社もある。テスラはロックがかかるので、リバースエンジニアリングが不可能というのは、そういう部分はないとはいえないが、多分に都市伝説的な要素が大きそうだ。
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