12月12日、公式テストが行われている三重県の鈴鹿サーキットで、2024シーズン限りで全日本スーパーフォーミュラ選手権から退くことを表明している国本雄資が、引退記者会見を行った。
2011年に前身のフォーミュラ・ニッポンに参戦を開始した国本は、P.MU/CERUMO・INGINGから出走した2016年にドライバーズタイトルを獲得。その後、KONDO、KCMGとチームを渡り歩き、ラストシーズンとなった2024年はITOCHU ENEX TEAM IMPULへと移籍加入したが、入賞2回にとどまっていた。
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そんな国本は11月29日、自身のSNSで突如としてスーパーフォーミュラからの引退を表明。これを受け、テストの現場でJRP日本レースプロモーションが引退記者会見を設定することとなった。
■「これ以上やっていたら本当にレースが大っ嫌いになってしまう」
会見冒頭で国本は、感謝の言葉を口にした。
「本当にたくさんの方にサポートしていただいて、この14年間、戦うことができました。なかなか結果が出ないなかでも、トヨタやTCD、チームの方々にたくさんチャンスをいただけて、頑張ってこれました。すごく感謝しています」
また、自身の4輪デビューが、当時JRPが運営していたFCJ(フォーミュラ・チャレンジ・ジャパン)だったことに触れ、「当時併催されていたフォーミュラ・ニッポンですごく速かった松田次生選手やブノワ・トレルイエ選手に憧れて、こうやって上を目指すきっかけを作ってくれたJRPにも、すごく感謝しています」と語った。
引退決断のきっかけについて問われた国本は、2024年シーズン開始前にある決意を固めていたことを明かした。
「今シーズンが始まる前に、どこかで期限を決めてやっていかなきゃと思い、結果が残せなかったらやめようと、自分の中では決めていました」
「フォーミュラのレースは精神的にすごくタフだし、結果を残すのはすごく大変なことなんですけど……自分の頑張りと結果がなかなかリンクしないことが、きっかけだったかなと思います。頑張りがなかなか報われなくて、これ以上やっていたら本当にレースが大っ嫌いになってしまうんじゃないかと思ったので、自分のなかで期限を決めて、今シーズンを戦った感じです」
引退会見では途中、“サプライズ”があった。2024年に参戦したドライバー、テストに参加したドライバーや、かつてともに戦い現在は監督やチームマネジメントを務める面々が会見場裏手から登場。引退する国本をねぎらい、その功績を称えた。
このサプライズの“発起人”となったのは、阪口晴南だった。花束贈呈を前に挨拶に立った阪口は、「国本さんの引退に際して、ちょっと秘話を……」と切り出す。
「僕は正直、最終戦前に(国本から、引退の話を)なんとなくは伺っていました。そして(最終戦後の)山本尚貴選手の引退セレモニーでは奥様と表彰台に立って……というシーンがあり、そのときに国本さんが僕だけにしか聞こえない声で『なんか、すごくいいね』とボソっと言ったことをすごく覚えていて。ここまでの功績を残された方なので、国本さんにもこういった場を作れたらいいなと思い、JRPの方にも相談させてもらって、こういう場を作っていただきました」
阪口から花束を受け取った後には、かけつけた全員と記念写真に収まった国本。その後は、トヨタGAZOO Racingのモータースポーツ担当部長、加地雅哉氏からも花束が贈られた。
加地氏はかつてWEC/ル・マンのプロジェクトでハイブリッド・パワートレーンの開発に従事しており、2017年に国本がル・マン24時間に出場した際にも、現場をともにしている。
「すごく真面目な選手で、今シーズンが始まる前に、(結果が出なければ引退するという)決意を語ってくれました」と加地部長。
「今年一年、本当に一生懸命頑張ってくれて、最後に引退しますという話を僕にしてくれたときには、すごく寂しい気持ちと、感謝の気持ちの両方がありました。スーパーフォーミュラとしては区切りをつけていただくのですが、今後のドライバー人生はまだまだ先が長いので、これからも一緒にやっていきたいと思います」
スーパーフォーミュラ引退後のキャリアについて国本は、「いまは本当に辞めたばかりで、なんか心がふわっとした感じで、目標もいまは何もない」としながらも、「僕はJRPに育ててもらったと勝手に思っているので、何かお返しができればいいなと思っています」と引退後もスーパーフォーミュラに積極的に関わりたい意向を示している。
2024年に、ともに退くことになった山本は、JRPの要請を受けて今回のテストに帯同している。スーパーフォーミュラをより良くしていきたいという同じ想いを持ち、チャンピオンも経験している国本は、今後どんな形でフォーミュラレースに携わっていくのだろうか。
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