F1イギリスGPで自身初優勝を飾ったカルロス・サインツJr.は、決勝レース1周目に発生した多重クラッシュを振り返り、周冠宇(アルファロメオ)のマシンが吹き飛ばされたリプレイ映像をレース再開前はあえて「見ないことにした」と語った。
周のマシンは、ピエール・ガスリー(アルファタウリ)と接触しコントロールを失ったジョージ・ラッセル(メルセデス)にサイドからヒットされ横転。上下逆さまの状態でコース上を滑走し、アビー(ターン1)のグラベルで跳ね上げられタイヤバリアとデブリフェンスの隙間に挟まった。
■【動画】あわや大惨事……F2でクラッシュ発生、ハウガーの車体がニッサニーのコックピットに乗り上げる
クラッシュ直後は、国際映像が周の姿を捉えることはなく安否も心配されたが、そのクラッシュによる赤旗中断中に彼の状態が良好であることが明らかになると、クラッシュ時のリプレイ映像が繰り返し流れた。ドライバーの中には、その映像をスクリーンで目にする者もいたが、サインツJr.は周の安否が確認されたこともあり、映像を見ることはしなかったという。
彼が初めてその映像を目にしたのは、表彰台前の”クールダウンルーム”。そこでいかに大きなアクシデントだったかを理解したという。
「アクシデントは見ないことにしたんだ」とサインツJr.は説明する。
「赤旗が提示されて、赤旗レベルの大きなクラッシュがあったのだろうとは思った。けどテレビは見ないことにしたんだ」
「もちろん、周が大きな問題もなくマシンを降りてきたのを知って信じられないくらい嬉しく思った。でも表彰台に上がる際に(映像を)見た時は、本当にショックを受けたよ、クラッシュも、彼がそこから生還したことも信じられないようなことだった」
またサインツJr.は、今年もFIAはその判断で非難を浴びるケースも散見されるものの、安全性に関してはトップクラスであることに疑いはないと語る。
イギリスGPの週末、併催されていたFIA F2のレース2でも大きなアクシデントが発生していた。ロイ・ニッサニー(DAMS)にコース外へ押し出された際にパンクを喫したデニス・ハウガー(プレマ)のマシンはランオフエリアで止まることなく、その先の縁石でジャンプ。コースを走るニッサニーのヘイロー(HALO)に乗り上げる形で衝突していた。
「(周が)あそこから生還できるだなんて、ただただ信じられないよ」とサインツJr.は言う。
「僕らはFIAを批判することもあるけど、こういうケースではどれだけ僕らを助けてくれているのかを評価する必要がある」
「F2でのクラッシュとそこでヘイローがどう機能したかを見れば、それはふたりの命を救っていることになる。彼らが安全性のために行なっている素晴らしい仕事は評価する必要がある」
レッドブルのセルジオ・ペレスはクラッシュのシーンを目にしたことで、再スタートに向けて気持ちを整理することが大変だったとして、サインツJr.があえて映像を見なかった理由を暗に代弁した。
「アクシデントで起きたことは分かっていたけど、ガレージに戻ってテレビを見ていたらアクシデントが映し出されたんだ」とペレスは言う。
「ショックだったよ。ああいうアクシデントを見るのは久しぶりだし、それを頭から消し去って、自分のやるべきことに集中しようとするのは難しい」
「でもFIAは良くやってくれた。このレベルに(安全性を)持ってくるのには長い年月がかかったからね」
「より改善できると思うし、今回学ぶべきこと、アクシデントを検証しどう改善できるかを確認することで、常に良い教訓を得ることができると思う」
「カメラマンがその辺りにいて、危険に晒されていたかどうかは分からないけど、このスポーツを誰にとっても安全なモノとするために、僕らはそれを検証する」
またペレスは、F1にドライバーの給与制限が導入されようとしている現状において、このようなアクシデントはF1ドライバーが直面し得る危険を再認識させるモノだったと考えている。
「ドライバーの給料に上限を設けるということをみんなが話しているのを聞いたことあると思うけど、僕らは全てのリスクを背負ってショーに出ているんだ」
「だからこの先、このスポーツでそういう話しをするのは良いことだとは思わない。でも一番大事なのは、誰も怪我をしなかったということだけだ」
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みんなのコメント
火災による危険より衝突による危険な可能性のほうが高いから導入自体は正しかったのね