EVだけの火も煙もないキャンプイベントを開催
EVこそアウトドア・カーライフを楽しむベストチョイスだ そう断言せずにはいられないほど、EVの魅力や可能性を感じさせてくれたイベントが、「EVサマーキャンプ2024」である。
キャンプでPHEV・EVが大活躍! 給電機能で野外シアターやかき氷屋、車載1500W電源も
「EVサマーキャンプ2024」とは、その名称のとおりEVオーナーによるEVを使用したアウトドア・イベント。今年で3度目の開催となり、2024年8月3~5日に静岡県富士宮市のキャンプ場「TREE LINE chillax field」において開催された。
一般的にキャンプというと、テントを張って火をおこし、薪をくべて食事を作るといった作業を思い浮かべるけれど、この「EV Summer Camp 2024」は「オール電化」のキャンプであることが最大の特徴。参加車両をEV(一部PHEVやHEVも含む)としたことで、車両に蓄えることのできる豊富な電力を利用し、さまざまな遊び方を楽しもうというもの。
なんといってもEVはエンジン車と違って発電するためにアイドリング状態を保つ必要がないから、排気ガスや騒音といった問題が存在しない。参加者は愛車のそばにテーブルを並べ、AC100V電源を取り出して調理や音楽を楽しんだり、暑くなったらエアコンを使用して車内で涼んだり。夜間はテントを張るもよし、快適に車中泊を楽しむもよしと、エコでクリーン、さらにお手軽に楽しめるというEVならではの新しいアウトドア・カーライフが繰り広げられていた。
2泊3日のスケジュールで開催された「EVサマーキャンプ2024」を主宰しているのは、ヒョンデEVIONIQ 5(アイオニック5)のオーナーズクラブ。EVならではの魅力を発信したいと、アウトドア好きなメンバーで始めたイベントに、年々参加者が増えているそうだ。
「私がIONIQ 5を購入したことがきっかけで、IONIQ 5のオーナーズミーティングとして開催したのが始まりです。そのとき集まったメンバーが、電気自動車ならではのカーライフをもっと発信したいという想いを抱いていたことから、昨年の第2回は参加資格をIONIQ 5オーナーだけでなく、他メーカーのEVやPHEV車両に広げました。そして今後にEV購入を予定している人も、ぜひ気軽に遊びにきてほしいと声がけを行ったのです」。
そう話してくれたのは、IONIQ 5(アイオニック5)のオーナーズクラブで代表を務める、辻榮 亮(つじえ りょう)さん。ほかに日産リーフとe-NV200も所有しており、EV生活を満喫するために移住を決意。新築したご自宅には、太陽光発電やV2H(ヴィークルto ホーム)を導入しているという筋金入りのEVフリークである。
「以前はガソリン車の、それもスポーツモデルを乗り継いでいました。ただ年々環境問題が注目されていくなかで、これからはEVだなと思って購入してみたら、想像していた以上に面白かった。EVならではの魅力や可能性がたくさんあることに気づいたんです。そんなとき、ヒョンデがIONIQ5というEVを日本市場に導入すると聞いて、すぐに購入を決意しました」。
日本市場へ再上陸したヒョンデは、新しい販売形態としてディーラー展開をせず、オンラインでの販売を基本としている。そのため、オーナー同士の情報交換や交流を行う場所を作りたいと、辻榮さんはSNS上で「IONIQ情報館」をスタートさせた。そこで知り合った仲間が中心となって、この「EV サマーキャンプ」を開催しているんだとか。
当初はIONIQ5に関する情報交換の場だったミーティング(オフ会)は、やがてEVならではの楽しみかたを広めたいという趣旨が加わり、環境に優しくオール電化でオートキャンプを楽しもうという内容に繋がっていった。そして3度目の開催となった今年は、なんと50台を超えるEVが集結しただけでなく、第一回からイベントに参加しているヒョンデの日本法人、ヒョンデ・モビリティ・ジャパンがさらにパワーアップ。新型車「IONIQ 5N」の体験試乗会が行われるなど、最大で2泊3日のスケジュールを誇るビッグイベントへと成長している。
EVがいままでとはまったく異なるカーライフを実現してくれる
そんなEV サマーキャンプに、EVタイムスの取材班が到着したのは、第2日目の朝。ちなみにイベントスケジュールを記しておくと、第1日目は主に前夜祭。18時の受付開始時刻に合わせて参加者(車)が集まり、会場内にて愛車の横にテントを張り、あるいは車中泊で思い思いの時間を過ごしたそう。
そして2日目、早朝から真夏の日差しが照りつけるなか、本格的に「EV Summer Camp」がスタート。会場には、IONIQ 5やKONAのヒョンデ勢を筆頭に、テスラ・モデル3やモデルX、S、BMW i3、BYDドルフィン、日産リーフといったEVが並べられた。
そして、EVオーナーのカラフルなテントと向かい合うように出展されたのが、ヒョンデ・モビリティ・ジャパンがプロデュースしたEV屋台である。V2L用コネクターで最大1600Wの電力を取り出すことができるIONIQ 5を活用し、「ヒョンデEVラーメン」や「EVかき氷」といった軽食をふるまった。発電機による騒音や排気ガスの心配をすることなく、オートキャンプ場で手軽に調理が楽しめるのは、電力をまるっともち込めるEVならではの魅力といえるだろう。
やがてお昼を過ぎると、隣接する駐車場を拠点とした「IONIQ 5N」の体験試乗会が始まった。IONIQ 5の高性能版であるIONIQ 5Nは、システム最大出力650馬力というスーパースポーツ。当然ながら公道ではその性能のごくわずかしか味わえないだろうけれど、EVオーナーにとって現在もっとも関心の強い車種であることを示すように、試乗枠は募集開始早々に埋まってしまったという。
実際にIONIQ 5Nのステアリングを握ったEVオーナーに話を聞いてみると、ベース車両のIONIC 5と比べてN専用仕立てとされた脚まわりは路面をがっちりと捉え続け、驚くほど高い走行安定性を感じさせたそう。公道試乗とあって、電気によるブースト機能である「N Grin Boost(NGB)」を堪能することはできなかったが、それでも右足に少し力を込めれば、後続のクルマはあっという間にルームミラーから姿が消えてしまうほどの加速力を誇る。
また、車内に響くエンジン(風)サウンドといったギミックについても、おおむねIONIQ 5Nは好印象で迎えられたようだった。
今回は「EVサマーキャンプ2024」に参加していたEVオーナーに、実際にEVを購入してみての感想も聞いた。どうやら、内燃機関車では決して味わうことができなかったカーライフを、心の底から楽しんでいるようだった。
CAR:TESLAモデル3 OWNER:ぶんさん 2022年9月に納車されたあと、通勤や週末のドライブにと毎月およそ2500kmを走っているという、ぶんさん。もとから備わっている走行性能の高さはもちろんのこと、ソフトウェアのアップデートにより洗練されていく様子が、従来の自動車とは異なる魅力だという。
テスラは一充電あたりの航続距離が長く充電スポットも拡充しているため、時間の使いかたを工夫すれば自宅が集合住宅であっても不便は感じないそう。
CAR:BMW i3 OWNER:石井浩一さん 趣味としてアウトドアを楽しんでいる石井さんは、クルマのなかで冷蔵庫を使いたいという思いも引き金となってEVを購入。日産リーフを4台も乗り継ぎつつ、並行してBMW i3も所有している。
現在のi3は2019年に購入した42kWh仕様。EVでありながら、BMWらしい駆け抜ける喜び、運転する楽しさがある点が魅力とのこと。今回は友人の米山さん、桑原さんと参加していた。
CAR:ヒョンデ KONA OWNER:TSUBASAさん 人生初の愛車に、ヒョンデKONAを選んだというTSUBASAさん。きっかけは旅行で韓国を訪れた際、街なかを走るKONAのスタイリングに惹かれたという。
帰国後に調べたところ、このKONAが日本にも導入されると知ってすぐにオーダー。旅行先で見かけた車両と同じボディカラーが設定されていたことも決め手となったそう。現在は週末を中心に、ドライブや買い物といった比較的近郊で使用しているが、今後はロングドライブも楽しんでみたいそう。
EVというと、航続距離や充電インフラなどから都市部での使用に特化した車両であるようなイメージを抱きがちだけれど、大量のエネルギー源である電気を抱いたまま移動できる点は、アウトドアにおいては大きな武器となる。なんといっても環境への影響を気にすることなく、冷暖房機器や調理器具など電化製品を使うことができるのだ。夜はエアコンの利いた車内で車中泊とするならば、複雑なテントを張ったりする必要もない。
今後も自動車メーカー各社から発売が予想されるEVだが、さらなる普及のカギとなるのは航続距離やアフターサービスといった点よりも、「EVサマーキャンプ」のようにアウトドア・カーライフを気軽に楽しめる、EVならではの資質にあるのかもしれない。
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