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人気はあれど「沢山売れる」クルマじゃない! 日産が赤字で苦しいなか「フェアレディZ」の新型を発売するワケ

掲載 更新 17
人気はあれど「沢山売れる」クルマじゃない! 日産が赤字で苦しいなか「フェアレディZ」の新型を発売するワケ

 伝統ある名車の新型発表に日米のファンは湧いた

 日産がフェアレディZをフルモデルチェンジすることを発表した。2020年10月4日までは、ニッサンパビリオン(期間限定のエンターテインメント施設)にてプロトタイプが展示されたので、その姿を目に焼き付けたというファンも少なくないだろう。初代フェアレディZ(S30)や280馬力規制の元となった4代目モデル(Z32)のスタイリングをモチーフとしながら、確実に新しいZカー像を具現化した姿は、なかなかに好評のようだ。

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 それにしても、2019年度の決算では当期利益で6712億円もの赤字を計上した日産が、マスマーケットを狙えることが考えづらいフェアレディZのフルモデルチェンジを敢行するというのは驚きだ。もちろん、自動車の開発スケジュールというのは数年前に決定しているので、ここまでの状況になるとは思っていなかったのかもしれない。とはいえ電動化やCO2排出量規制が最優先される時代に、V6ツインターボでマニュアルトランスミッションを組み合わせるというパワートレインのスポーツカーを新規で起こしてしまうというのは、ビジネスとして挑戦的過ぎる印象もある。

 もっとも、スタイリングやインテリアを見ればわかるように、新型フェアレディZ(プロトタイプ)が基本的に現行フェアレディZ(Z34)のプラットフォームをベースにしていることは間違いない。もしかするとプロトタイプは従来型プラットフォームに新しいスタイリングのボディを載せただけという可能性もあるが、おそらく新型Zはプラットフォームをキャリーオーバーで活用していると考えて間違いないだろう。

 また、エンジンについてもV6ツインターボとしか発表されていないが、スカイライン400Rなどでおなじみの「VR30DDTT」を搭載すると予想されている。悪くいえば、ありもので作ったニューモデルといえるが、それはスポーツカーという数が出ないクルマをペイするためには、手堅い手法ともいえる。

 そもそも初代フェアレディZのエンジンだって日本仕様は「L20」で、セドリックやスカイラインに先行して搭載されていた。そうしてメカニズムにおいては社内の資産を活用することで「手の届くスポーツカー」として大ヒットしたのだ。このような歴史を考えると、新型フェアレディZにも、手の届くスポーツカーという伝統を期待したくなる。そしてプラットフォームなど開発コストのかかる部分をキャリーオーバーしたということは、価格面での原点回帰が期待できるというものだ。

 ファンから支持されるには長年販売し続けることも大事

 それにしても、なぜ日産はこの時代にフェアレディZをフルモデルチェンジする必要があるのか。そこはブランディングという視点から考えると理解しやすい。おそらく北米を軸に日産ブランドを再構築しようと考えたときに、ポジティブなイメージを抽出すると、初代フェアレディZによって培った「スポーツ」というキーワードが浮かび上がってきたことは想像に難くない。

 スポーツイメージのある自動車メーカーというと、モータースポーツ活動を積極的にやっている必要があるように思うかもしれない。だが、市場というのは意外と冷静なもので、いくらレースで結果を残していてもスポーツカーとしてカタチにしていなければスポーツイメージというのは印象に残りづらい。

 逆に、スポーツカーを出し続けていれば、たとえモータースポーツ活動を継続していなくても、そのブランドにスポーツイメージは強く残り続ける。そして、フェアレディZは4代目(Z32)から5代目(Z33)のときにわずかに空白はあるものの、イメージとしては50年間継続しているスポーツカーである。その価値は計り知れないほど大きい。

 これほどの歴史を持っているスポーツカーというのは意外に少ない。かのポルシェ911にしてもデビューは1964年であり、いまとなってしまえばフェアレディZの1969年とさほど変わらないといえるのだ。もちろん、日産がメインターゲットとしているであろうアメリカにはシボレー・コルベット(初代の誕生は1954年)やフォード・マスタング(同1964年)という伝統的なスポーツカーもあるわけで、半世紀以上という積み重ねがあってこそ同じ土俵で戦えるともいえる。

 いずれにしても「継続は力なり」といったところだろうか。フェアレディZを出し続けることは日産のブランディングにおいて、ほかのブランドと差別化する重要なポイントになるのである。それがフェアレディZのフルモデルチェンジという判断につながったと考えるのが妥当だ。

 しかし、フェアレディZのフルモデルチェンジはブランドイメージを向上させることが目的で、赤字覚悟なのかといえば、おそらくそんなことはない。前述したようにプラットフォームはキャリーオーバーで、エンジンなどのパワートレインも社内リソースを活用したものだとすれば、採算分岐点は意外に低く抑えることができているだろう。つまり、しっかりと儲かる、いまどきの言葉でいえば持続可能性のあるスポーツカーに仕上がっていると考えられるし、そうであってほしい。新型フェアレディZが赤字に終わるようであれば、日産からスポーツカーの火が消えてしまいかねないからだ。

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みんなのコメント

17件
  • 日産の言う説明はどうであれ、
    負債を返済出来れば成功と思われる。

    私はこの戦略は負債が増えて
    更なる日産危機の上塗りと考える。

    まずは役員、社員の報酬を削減から始める
    のが先。
  • どのモデルも当分は新型を投入できない中でハリボテでも出せば注目されるからだろ。
    ここにきて過去作オマージュの理由も表面でファンサービス装って結局は投資家様へのアピールってだけ。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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