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思い込みも武器のひとつ。タイヤ内圧ルール。日本メーカー全員ポイント獲得/MotoGPの御意見番に聞くタイGP

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思い込みも武器のひとつ。タイヤ内圧ルール。日本メーカー全員ポイント獲得/MotoGPの御意見番に聞くタイGP

 10月27~29日、2023年MotoGP第17戦タイGPが行われました。日本メーカーが好調を見せたほか、優勝争いも手に汗を握る展開でした。また、レース後にはタイヤ内圧違反で初のポジションダウンが出たり、話題のあるラウンドとなりました。

 そんな2023年のMotoGPについて、1970年代からグランプリマシンや8耐マシンの開発に従事し、MotoGPの創世紀には技術規則の策定にも関わるなど多彩な経歴を持つ、“元MotoGP関係者”が語り尽くすコラム第22回目です。

2024年シーズンのMotoGPテスト日程が発表に。最高峰クラスは2月にマレーシアとカタールで実施

※ ※ ※ ※ ※ ※ 

--前回は最初からとび出して逃げ切りを図ったホルヘ・マルティン選手が最終ラップで捕まってまさかの5位転落、そしてヨハン・ザルコ選手のMotoGPクラス初優勝と言うドラマチックなレースでしたが、今回も最後まで誰が勝つのか分からないスリリングなレース展開でしたね。

 いや、まさに「手に汗握るレース」ってこういう事だよね。最終コーナーを回った3台がゴールした瞬間に、思わず「よっしゃー!」と声が出てしまったよ。別にマルティン選手のファンという訳でもないのにね(笑)

 しかし、ブラッド・ビンダー選手の背後からの執拗な圧力に耐えかねて、一時は先行を許したけれど、なんとか抜き返して僅差での優勝は見事だったね。

--オーストラリアではトップを走っていて転倒リタイア、インドネシアでは悪夢の最終ラップで5位転落と、速いのにレースではツキが無い感じでしたから、久々のパーフェクトウインですね。

 パーフェクトウインは日本GP以来かな。今回はレースのほとんどをリードしていたけれど、それほど余裕があったわけでは無くて、レース中に30秒台が一度も出ていなかった。

 こういうタフなレースで逃げ切って勝つというのは、本人としてもすごく嬉しかったんじゃないかな。いつもより喜び方が半端なかった(笑)

--しかしブラッド・ビンダー選手の圧の掛け方も容赦なかったですね。スプリントでも2位と今回は非常に好調でしたが、日本GPで投入したカーボンシャシーも好調の要因なんでしょうか。

 ビンダー選手はデビューイヤーと翌年に1回ずつ優勝しているけれど、このところご無沙汰しているので、この間のザルコ選手に続いて久々の優勝かと思ったけれど、それほど甘くは無かったね。とは言ってもライダーも乗れていたし、少なくともこのコースではハードウエア的にはドゥカティと遜色ないレベルに仕上がっているように見えたね。

 相棒のジャック・ミラー選手が今一つ元気が無いというか、余り上位に来る事が無いので、好調の要因がマシンなのか人なのか判断し辛いところでは有るけどね。カーボンシャシーは本人もメリットを感じているようだから、好調の要因のひとつにはなっているだろうね。新しい武器はプラシーボ効果も期待できるしね。

--プラシーボ効果って何ですかそれ(笑)

 ほら、ダニ・ペドロサ選手がワイルドカードで出場して4位になったレースを憶えているだろ?

 あれが刷り込みになっていて、それほど差は無いのに「何か良くなったような感じがする」、というのはあり得るんだよ。今回のレースではバニャイア選手が久しぶりにフロントフォークにウイングを装着していただろう?

 一方のマルティン選手はずっと付けっぱなしで外したのを見たことが無い。という事は、マルティン選手にとっては非常に効果がある良いものなのか、或いはコースに合わせて選択する必要が無いという程度のもののどちらかという事なんだ。

 ところが同じマシンに乗るバニャイア選手にとっては、マルティン選手との違いは常に意識しているから、自分のマシンのセットアップが決まらない原因はアレかも、と『モノ』に原因を求める傾向が有るんだよ。ちょっと脱線したけど、ライダーにとって『モノ』の要素は結構大きくて、思い込みもひとつの武器になるという事やね(笑)

--プラクティスではアプリリアのふたりが好調だったので、このコースはアプリリア向きなのかなと思いましたが、そういう訳でも無かったですね。

 前半はエンジンパワーとブレーキングで勝負するパートで、インフィールドは中・高速コーナーが組み合わされたテクニカルなパートになっているので、それぞれのマシンのアドバンテージが発揮できるようになっている。言い換えると、トータルではそれぞれのアドバンテージは相殺されてしまい、マシンの差が出にくいコースと言えるのかもしれない。

 その証拠に、今回のレースのトップから最後尾までのタイム差に注目すると、通常は30~40秒くらいは離されるのに、20秒ちょっとと非常に少ないんだ。と言っても、これがコースのレイアウトによるものなのか、タイヤが要因なのかは判断しにくいけれどね。去年からシリーズに組み込まれた新しいサーキットだし、去年は雨だったから比較する対象が無いんだよ。

 という事で、敢えて定義するならマシンの総合力で一歩抜き出ていると思われるドゥカティ向きというのが結論だけど、レース結果を顧みると残念なことにアプリリアにとってはむしろ不向きなコースだったという事になるね。

--たしかにマーベリック・ビニャーレス選手は序盤でリタイアしていますし、アレイシ・エスパルガロ選手もどんどん順位を下げていましたね、最後は盛り返していましたが……

 エスパルガロ選手はなんとか5位でフィニッシュしたけれど、バイクの発する熱で呼吸困難に陥っていて、どうやらビニャーレス選手のリタイアの原因もその辺りにあるらしい。

 と言っても、前回のインドネシアGPでは気温は同じくらいで、湿度と路面温度はもっと高かったから、どうにも腑に落ちない結果ではあるね。ましてやビニャーレス選手は常に3位以内をキープして最終的に2位になっているわけだし。

 あくまでも仮説だけど、空力開発が進んだ結果としてオーバーテイクがしにくいとか、フロントタイヤの過熱とかの問題が発生しているけど、アプリリアにとっては混戦状態になると自身の空気の抜けが悪くなって、熱気がライダーを攻撃する構造なのかもしれない。

 もしかしてこのコースのレイアウトがそれを助長しているとしたら、アプリリア向きどころか、鬼門といっても良いくらいだよ(笑)

--ところで、チャンピオン争いをしているバニャイア選手ですけど、今回やっと予選Q2ダイレクト進出しましたけれど、スプリントではスタートでの出遅れが響いて6位と「らしくない」感じが続いていますよね。

 スプリントではスタートから1コーナーのアプローチに失敗して、反対に良いスタートを決めたマルク・マルケス選手の後ろになったのが敗因だな。彼を抜きあぐねているうちに終わってしまったって感じ(笑) レースではスタートの失敗こそなかったけれど、やはり序盤でマルケス選手に絡まれて、僕的にはなんか不吉な予感がしてたまらなかった。

 というのも、これまでのところマルケス選手は競り合いで転倒するケースが多々あったので、バニャイア選手を巻き添えにしてチャンピオン争いに間接的に絡んでくるのは止めて頂きたいと心底思ったよ。確かに素晴らしい技の応酬で見応えはあったけど、これでチャンピオン争いの行方が決まったらシャレにならんしね。

 まあ、結果的にマルティン選手に逃げ切られて優勝を逃がして、13ポイント差に詰め寄られたけれど、今回の3位は悪くない結果じゃないかな。最後にブレーキング勝負に出て2台をまとめて抜いて前に出たけど、マルティン選手と接触して引いてしまったのは彼の優しさが出てしまった感じだな。これが彼の師匠だったら違った展開になったかもしれないけど(笑)

--話は戻りますけれど、アレイシ・エスパルガロ選手が5位でフィニッシュしたのにリザルトでは8位になっていました。タイヤ空気圧のペナルティという事ですが……

 このルールはライダーにとっては悪法としか言いようがないね。そもそも3秒加算と言うのも今回のように拮抗したレースでは、3グリッド降格のかなりきついペナルティになるし、ペナルティを食らっても、順位に影響なしというケースも出てくるだろうし、適用が進むときっと不公平感が出てくるね。

 このルールが決められた背景は、混戦になるとフロントタイヤの温度が上がって適性内圧を越えてしまうというタイヤそのものの問題が有るわけで、それを回避するために内圧が高くなることを見込んで初期値を低めに設定しているからなんだ。

 同じアプリリアに乗るビニャーレス選手がずっとトップを走っていたので、見込みほど内圧が上がらずペナルティに引っ掛かった事が有ったけれど、初回なので警告で済んだ事例があったね。確かカタルーニャGPの時で、アプリリアが1-2フィニッシュしたのでよく覚えている。

 タイヤサプライヤーのミシュランとしては、レース中にバーストとかチャンクとか発生するのは絶対に避けたいので、譲れないところというのは理解できるけれど、タイヤの構造を基本的に見直すとかのアプローチも並行して進めて、早急にこのルールは廃止して欲しい。と言っても今回に限っては、おかげでヤマハとホンダがひとつずつポジションを上げたので微妙なところではあるんだけれどね(笑)

--そのホンダのマルケス選手、移籍を発表してから不調が続きましたが、今回は終わってみれば日本GPに次ぐ良い結果でしたね。

 スプリントではエスパルガロ選手と絡んで最終的に抜き去って4位、レースでは前半にバニャイア選手と絡み、中盤ではまたしてもエスパルガロ選手とからみ、最後にファビオ・クアルタラロ選手と絡むし、結構な存在感を放っていたよね。

 この結果だけ見ると、「あれ、ホンダのマシンてそれほど悪くないっていうか、それなりに乗りこなせるようになった?」ていう印象を持ってしまうね。

 それにジョアン・ミル選手や中上貴晶選手も地味にポイント獲得してるし、そう思いたいところだけれど、実際のところは先ほどから話しているコースの特徴が影響しているんだと思うよ。

 ま、それはともかくとして今回は日本メーカーに乗るライダーが、全てポイント獲得圏内でレースできたのは良かったな。

--次の3連戦はマレーシアのセパンから始まりますね。ここは日本メーカーのマシンとの相性はどうなんでしょう。

 昨年はヤマハのクアルタラロ選手が3位だったので、基本的には悪くないと思うよ。ここはロングストレート有り、高速コーナー有り、テクニカルなパートも有りで、最近のティルケデザインとはちょっと違っていて、個人的には一番好きなコースなんだよ。

 かつては、ホンダとヤマハで勝ちを分け合っていたようなイメージが刷り込まれているからかもしれないけどね(笑)

 タイトル争いも興味深いけれど、アプリリアのアドバンテージが再び発揮できるかどうかも見どころのひとつじゃないかな。いずれにせよ、いいレースが見られるかどうかは天候次第だね、10月と11月は雨季だし。

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みんなのコメント

1件
  • マルティンは、速いのは認めるけど、レース後カウル壊す行為が頂けない。
    この行為だけでも、昨年、マルティンではなく、バスティアニー二をワークスに選んだのも分かる気がしました。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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