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【たった2年で廃止】なぜ? メルセデス・ベンツのピックアップ「Xクラス」失敗の舞台裏

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【たった2年で廃止】なぜ? メルセデス・ベンツのピックアップ「Xクラス」失敗の舞台裏

Xクラス失敗 やはり、という声が多い?

text:Kenji Momota(桃田健史)

【画像】それでもカッコいい? メルセデス・ベンツXクラスのディテール【画像】 全97枚

「Xクラスが、2020年5月に生産中止が決定」

ドイツの自動車メディアが2020年1月末に伝えた後、欧米メディアの問い合わせに対して、ダイムラー本社が事実であるとを認めた。

2017年に2018年モデルとして発売以来、イヤーモデルとしては2年で廃止となる。メルセデス史上、稀にみる失敗だ。

日本の方は当然、CやEクラスは知っていても、日本未導入のXクラスをほぼ知らないはずだ。Xクラスが、ピックアップトラックだと言われてもピンとこないはず。

メルセデス・ベンツがなぜ、Xクラスを開発し、日本ではXクラスが導入されなかったことについても、理解できないはずだ。

こうした日本人が抱く、Xクラスへの無名度の高さ、または仮にXクラスの存在を知っていたとしても、メルセデスブラントとXクラスとのミスマッチに対する違和感こそが、Xクラス失敗の証明だと思う。

世界中のメディアがXクラスの取り扱いについて、これまで苦労してきた。

Xクラス発表以来、世界各地のモーターショーなどで海外メディアと意見交換すると、「Xクラスという存在自体にかなり無理があるのでは?」という声を多く聞いた。

各国メディアのXクラス試乗記を見ても、「日産車をわざわざメルセデスと名乗ることに対する違和感」を示す、かなり手厳しい内容が多かった。

Xクラス、なぜ中身が日産なのか?

始まりは、2010年。ダイムラーと日産・ルノーアライアンスとの間で交わされた、資本業務提携だ。

「両社が得意とする技術領域を共有することで、Win-Win体制を実現する」として、当時のカルロス・ゴーンとディーター・ツェッチェ両CEOが堅い握手を交わした。

ダイムラーからはインフィニティへのエンジン供給など高級車への各種対応。対する日産からダイムラーには、小型車と商用車の開発技術やエンジン供給を行うとしていた。

その一環が、ピックアップトラック「日産ナバラ」のダイムラーバージョンの企画だ。これが、Xクラスである。

メルセデスのピックアップトラックといえば、2000年代の米ロサンゼルスモーターショーで毎年開催されていた、自動車メーカー各社の北米デザイン開発拠点による将来モデルのイメージコンテストで、ハードなオフロード走行にも耐えゆるスリーポインテッドマークのフルサイズピックアップトラックが発表されていた。

当時、ダイムラーのデザイナーに話を聞くと「あくまでもイメージだ。ピックアップトラックの販売量が多い、ここアメリカ向けの発想だが、実際にメルセデスというブランドとして、ピックアップトラックで収益を上げることは難しいと思う」と本音を漏らした。

その10数年後に登場したXクラスには、北米販売計画がなかった。

ピックアップトラックには大きく2つの市場

Xクラスが、ピックアップトラックの本場であるアメリカで発売計画がなかった理由は、そもそもダイムラーがアメリカ向けの商品としてXクラスを企画しなかったからだ。

その背景にあるのが、世界全体でのピックアップトラック市場の二極分化だ。

市場その1は、アメリカ。デトロイト3(GM、フォード、FCA)の真骨頂である、フルサイズピックアップトラックだ。

GMはシボレーシルバラード、フォードはFシリーズ、FCAはラム。大出力/大トルクのV8ユニットやV6ターボを搭載し、乗用から商用まで幅広い年齢層に支持されている。

日系もトヨタがタンドラ、日産がタイタンでデトロイト3に挑む。

一方で、北米市場でミドルサイズピックアップトラックは、フルサイズピックアップトラックの影に隠れるような存在。

ある程度の市場規模があるが「せっかく買うならフルサイズ」という顧客が多い。

市場での流通数が多いため、フルサイズピックアップトラックの実売価格も3万ドル前後(300万円程度)と手頃だ。

市場その2が、新興国市場向けだ。フォード・レンジャー、三菱トライトン、いすゞD-マックスなどが売れ筋。サイズ感としては、北米ミドルサイズピックアップトラックに近いが、商品性は若干違う。

この市場にXクラスがチャレンジしたのだ。

廃止の理由 ダイムラー持ち株会社化?

それしても、イヤーモデル2年で廃止とは、思い切った決断だ。

欧州での報道によると、2019年のXクラス世界販売総数は「たったの1万5300台」という表現だ。

ビックマイナーチェンジによる立て直しで、ブランドイメージを守るのがメルセデスの定石に思えるが……。

非を認め、新設クラスをズバッと切り捨てることが、ブランド力を維持することにつながると、2019年11月に新体制となったダイムラー持ち株会社の経営陣たちが判断したといえる。

C新体制では、これまでの乗用車部門とバン部門を統合してダイムラーAG、トラック部門とバス部門を統合してダイムラートラックAG、そしてモビリティサービス部門とファイナンス部門が統合してダイムラーモビリティAGとなった。

ダイムラーとして史上最大級となる、こうした組織再編の中で、ブランド戦略として、またはアライアンス事業として、なんとなく宙ぶらりんの状態となっていたXクラスの廃止が決まったと考えるのが妥当だ。

逆に言えば、Xクラス失敗を受けて、当分の間、メルセデスのピックアップトラックは登場しないはず。

ならば、値頃なうちにXクラスを買っておくと、数十年後にはネオクラシックカーとして値打ちが上がるかもしれない。

日本では新車として未上陸のまま、Xクラスが姿を消す。

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