ホイールベースが近いMR-Sを土台に、GT40実寸のボディを架装したレプリカだから
本物は天文学的な価格で取引されるフォード「GT40」が、1680万円から手が届く。ノスタルジック2デイズ2026に並んでいたのは、日本で製作されたレプリカのART GT MK Iだ。ボディは実寸で再現しながら、土台になったのはトヨタ「MR-S」である。エアコンを備え、普段の足としても使える1台を取材した。
ライバルだったフェラーリに到底及ばず!? わずか31台の公道仕様フォード「GT40」の希少価値度とは!?
ノスタルジック2デイズ2026で見つけたGT40は日本製レプリカ「ART GT MK I」
会場でひときわ低い車高の1台が、来場者の足を止めていた。濃いブルーのボディに真っ白なレーシングストライプが走り、ドアには巨大なゼッケンが入る。2019年に公開された映画「フォードvsフェラーリ」で広く知られるようになったGT40の姿である。
オリジナルは世界に100台あまりしか作られていない。取引価格も億単位に達するため、目の前の車両はレプリカと考えるのが自然だ。どこまで再現されているのか、展示していたアートレーシングのスタッフに話を聞いた。
「このクルマは日本で製作したART GT MK Iというモデルで、その名のとおりGT40のMk-Iをモチーフにしています。通常のGT40レプリカはパイプフレームのシャシーにV8エンジンをミッドシップ搭載しますけれど、こちらのベース車両はMR-Sなので横置きミッドシップになります」
ベース車両はトヨタMR-S、ホイールベースの近さが選ばれた理由
レプリカの出来を左右するのは、寸法の辻褄だ。MR-Sは市販車としては数少ないミッドシップの2シーターで、ホイールベースは2450mm。オリジナルのGT40とほとんど差がないため、ボディとホイールアーチの位置関係に無理が出にくい。
ベース車が小さすぎると、タイヤ位置を合わせるためにフェンダーまわりを大きく作り直す必要が生じる。MR-Sならモノコックを崩さずに済み、その上へGT40実寸のカウルを載せられる。エンジンやトランスミッション、フロアといったメカニズムもMR-Sのものをそのまま活かす設計になっている。
フロントウインドウには英国から取り寄せたGT40と同型のガラスを使い、ルーフの一部まで一体で開くドアや、高く幅広いサイドシルも再現する。室内にMR-Sの面影はなく、横一列に並ぶメーター群がダッシュボードに収まる。会場では本物と信じて見入る来場者もいた。
フォードGT40はなぜ生まれたのか、1966年から4年連続でル・マン優勝
GT40の出発点は、フォードとフェラーリの決裂にある。ル・マン24時間レースでヨーロッパ勢を打ち破りたいフォードは、当初フェラーリの買収を計画していた。交渉がまとまらず、自社でレースカーを作る道を選ぶ。その結果として送り出されたのがGT40である。
1966年のル・マンでフォードは1-2-3フィニッシュを飾り、1969年まで4年連続で総合優勝を重ねた。1966年と1967年の勝利を担ったのが、キャロル・シェルビー率いるシェルビー・アメリカンだ。このあたりの経緯は映画「フォードvsフェラーリ」に詳しい。ART GT MK Iは、そんなGT40の初期型であるMk-Iの姿を追いかけたモデルにあたる。
価格は1680万円から、ホンダK24Aへのエンジンスワップにも対応
展示車両は、標準のパワーユニットから積み替えられていた。MR-Sが搭載する1.8リッターの1ZZ-FEに代わり、2.4リッターのホンダK24Aが収まる。排気量の拡大でパフォーマンスは大きく引き上げられ、こうした追加のカスタムもオプションとして注文できる。
パイプフレームにV8を積む本格派レプリカとは、成り立ちも維持の手間も異なる。国産のエンジンと基本構造を流用しているぶん、部品の供給や整備で困りにくい。エアコンやパワーステアリングを備え、デイリードライバーとして使える点も大きい。価格は最もベーシックな仕様で1680万円からとのことだった。
本物のGT40は、手に入れられたとしても気軽に走らせられるクルマではない。夢の1台に日常で乗るための答えとして、アートレーシングはMR-Sという現実的な土台を選んだ。眺めるためだけの模型ではなく、走らせて楽しむための道具としてレプリカを組み立てる姿勢が、ART GT MK Iの細部からは伝わってくる。
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