ポルシェ初の量産EV「タイカン」。ターボ/ターボSの試乗記はすでにお届けしているが、新たに「4S」と呼ばれるエントリーグレードが追加投入された。その走りのパフォーマンスを北欧のフィンランドで確かめてきた。(Motor Magazine 2020年2月号より)
単なる電気自動車ではない
シュトゥットガルト郊外はツッフェンハウゼンの地。そこに点在する土地に新設した工場を、ベルトコンベアで結んでまで「本社生産」にこだわったのがポルシェ初の量産ピュアEVであるタイカンだ。
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新たなこのモデルを皮切りとした電動化計画が、「2022年までに60億ユーロ以上を投資する」という発表に沿ったものと知れば、それが社運を賭けたプロジェクトであることにも納得。タイカンの誕生は壮大な電動化ロードマップの、まさに第一章なのだ。
純粋なEVであるタイカンを、ポルシェでは「単にパワーユニットだけに特徴があるモデル」とは捉えていない。創業以来、このブランドが(911しか持たなかった時代ですら!)「後席にもきちんと座れるスポーツカー」を意識し、常にそれを画策し続けて来たことは、試作されながらも世に生を受けなかった数々のプロトタイプの存在などからも明らかな史実。
そんなポルシェにとって、タイカンはパナメーラの下に位置する第二のセダンカテゴリーという、自身にとっての新たなセグメントを開拓するという目的が与えられた、重要な存在でもあったのだ。
ポルシェ初のEVが、2ドアのスポーツカーでもなくSUVでもなく、あえてセダンとなった理由は、ここにあると考えられる。
雪上・氷上で4WDの良さをいかんなく発揮
かくして、4ドアセダンの形態で登場となったタイカンは、見るからにこのブランドならではのデザイン/パッケージングで仕上げられている。「ポルシェでなければ成し得なかったセダン」が、そこに見事に具現化されているのだ。
まず実感させられるのは、圧倒的な低さだ。他の多くのピュアEVと同様「バッテリーはフロア部分に敷き詰める」という手法を取るものの、後席足元部分に限ってはそれを省略し、「フットガレージ」と呼ぶ空間を得ることで後席ヒップポイントを下げることに成功。ルーフが後方に滑らかに下降する911由来の「フライライン」と、大人が後席にも座れる実用的な5人乗りモデルとしての居住性の両立という点で、「エンジン車」では真似のできないユニークなテクニックを見られる。
ドライバーに向かって湾曲した1枚ガラスのバイザーレスディスプレイといった、最新モデルらしい手法も採用されているものの、水平基調のダッシュボードや5連表示をモチーフとしたメーターグラフィックに、「やっぱりポルシェ」とイメージさせられる。
そんなタイカンに早くも加えられた新バリエーションが「4S」というグレード。当初発表された「ターボ/ターボS」に比べ、軽量・コンパクト化されたリアモーターを採用するのがメカニズム上の最大の相違点。93.4kWhというターボ/ターボS用と同容量のバッテリーに加え、79.2kWh容量のバッテリー搭載仕様をチョイスすることができるのも、4Sならではのトピックだ。そんな4Sを、北欧フィンランドの北極圏でテストドライブした。
0→100km/h加速タイムがターボSの2.8秒、ターボの3.2秒に対し、4Sは4.0秒となるなど、スペック上の動力性能は見劣りするかもしれないが(それでも十二分以上に速い!)、実際のテストドライブではそんな劣勢を微塵も意識させられることはなかった。
一方、雪上/氷上の世界で改めて実感させられたEVならではの強みは、アクセルペダル操作に対する圧倒的なレスポンスの速さでもあった。それゆえ、ドリフト時のコントロール性などは抜群。こうした点でも、タイカンは「ポルシェの作品らしい」1台なのだ。
航続距離や充電インフラなどが、いまだ「問題ナシ」ではないのは確かなポイント。しかし、少なくともドライビング中はすこぶる色濃いポルシェのテイストを味わわせてくれた。
果たして、この先にどのような一手を示してくれのか? 壮大さゆえそんなことも気に掛かる、ポルシェの電動化戦略なのである。(文:河村康彦)
■ポルシェ タイカン4S主要諸元
●全長×全幅×全高=4963×1966×1379mm
●ホイールベース=2900mm
●車両重量=2215g
●モーター最高出力=435ps<490ps> [530ps<571ps>]*
●モーター最大トルク=[640Nm<650Nm>]*(ローンチコントロール時)
●駆動方式=4WD
*<パフォーマンスバッテリーPlus>、[ローンチコントロール時]
[ アルバム : ポルシェ タイカン4S はオリジナルサイトでご覧ください ]
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